ヘレン・ケラーの”Water”の瞬間はまさにグランディング問題の解決の瞬間のようでもあります。
記号と物理的現実世界が本当は繋がっており、表裏一体であったと気付いた瞬間です。
情報空間と物理空間の境目を探していたら、その境目が無かったという話です。
＊（抽象度による）変化はあっても、境目は無いのです。
ヘレン・ケラー自身がのちに自伝の中でこの感覚を詳細にレポートしてくれています。
それまでのヘレン・ケラーは、手に綴られている文字を正確に覚えることはできましたが、それが何を指しているかには興味がなく、ゲーム感覚でどんどん文字を覚えていただけでした。
それがある瞬間に、すべてのものには名前があることに気付いたのです。
そして主なる神は野のすべての獣と、空のすべての鳥とを土で造り、人のところへ連れてきて、彼がそれにどんな名をつけるかを見られた。人がすべて生き物に与える名は、その名となるのであった。（創世記2:19）
名とは咒のことであり（夢枕獏『陰陽師』）、固有名は固定指示子（クリプキ）なのです。
名前とは釣り糸を垂らすことなのです（マルクス・ガブリエル）。
c.f.固有名を用いるとき、わたしたちは、いわば現実のなかに釣り針を垂らすのです（マルクス・ガブリエル） 2019年02月14日
c.f.なぜ世界は存在しないのか。そしてなぜユニコーンは存在するのか？（マルクス ガブリエル） 2019年02月11日
ですので、このヘレン・ケラーの発見というのは、我々にとっては何ということでも無さそうに見えるのですが、実は「咒」の秘密、世界のからくり、ロゴスに気付いた瞬間だと「まといのば」では考えます。
三重苦に閉じ込められていたわがままな少女が、奇跡の人サリバン先生の導きによって、広い世界に飛び出すことができたのです。
（引用開始）
ふたりは井戸小屋をおおうているスイカズラの甘い香りにひかれて、庭の小径（こみち）を下って行きました。だれかが水を汲みあげていましたので、先生は樋口（ひぐち）の下へ私の手をおいて、冷たい水が私の片手の上を勢いよく流れている愛大に、別の手に初めはゆっくりと、次には迅速に（じんそく）に「水（ウォーター）」という語をつづられました。私は身動きもせず立ったままで、全身の注意を先生の指の運動にそそいでいました。ところが突然私は、何かしら忘れていたものを思い出すような、あるいはよみがえってこようとする思想のおののきといった一種の神秘な自覚を感じました。この時初めて私はw-a-t-e-rはいま自分の片手の上を流れているふしぎな冷たい物の名であることを知りました。この生きた一言が、私の魂をめざまし、それに光と希望と喜びとを与え、私の魂を解放することになったのです。もちろん、まだまだ数知れぬ障害物が残ってはいましたが、それはやがて取り除くことのできるものばかりでありました。
私は急に熱心になって、いそいそと井戸小屋を出ました。こうして物にはみな名のあることが分かったのです。しかも一つ一つの名はそれぞれ新しい思想を生んでくれるのでした。そうして庭から家に帰った時、私の手に触れるあらゆる物が、生命をもって躍動しているように感じはじめました。（引用終了）（ヘレン・ケラー『わたしの生涯』pp.30-31岩橋武夫訳 角川文庫）
c.f.家に帰った時、私の手に触れるあらゆる物が、生命をもって躍動しているように感じはじめました。 2017年06月06日
c.f.この生きた一言が、私の魂をめざまし、それに光と希望と喜びとを与え、魂を解放することになったのです 2021年03月24日
というわけで、メンバーのお一人から嬉しいフィードバックを頂きました。
この方における「Water」の瞬間をシェアしてくれました。
ささやかな一歩に見えるかもしれませんが、これは偉大な一歩です。
これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である。
(That's one small step for [a] man, one giant leap for mankind.)
月に最初に降り立ったアームストロング船長の有名な言葉ですね。
というわけで、密教的な咒の世界の扉を開いた我々の仲間のフィードバックを是非ご覧ください！！
（引用開始）
全く話は変わるのですが、今日のお昼頃、気の球を作っていると、手の中に息を吹き込み、吹き込んだ息を意識に上げることで気の球にする、という言葉をようやく実感できました！
今までは、息を吹き込んで感じるフェーズとできた気の球を感じるフェーズにギャップがあり、息を意識に上げて、こねているといつの間にか出来上がっているような感覚でした。
そのため、意識に上げた空気が気の玉と知ってはいても、腑に落ちてはいませんでした。
ところが、今日の休憩中、いつものように以前受講したはじめての気功の音声を聴きながら気の玉を作っていると、吹き込んだ息を触り、意識に上げる瞬間に、はっきりと意識が切り替わって気の玉が出来るのを感じました。
その時にふと、手の中に息を吹き込み、吹き込んだ息を意識に上げることで気の玉にするという言葉が浮かんできて、確かにその通りだな、と腑に落ちました。
（引用終了）
気の玉というのは、気功の基本にして奥義とも言える技術です。
バレエのプリエのようなものですね。
基本中の基本で、習った日にはその真似事はできますが、それを極めていくのはプロでも困難かもしれません。少なくともその基本動作をプロも日々鍛錬します。
気の玉を日々鍛錬することはあまりありませんが、重要という点では同じです。
手の中に息を吹き込んで、その温かい息を感じることで、その感覚を気の玉に切り替えるというのが「まといのば」式の気の玉の作成法です（息をあらわすギリシャ語からプシュケーと名付けています。プシュケーとは息を吐く擬音であると共に、後に転じて魂という意味でもあります。もちろんキューピットと恋に落ちて神様になったあのプシュケーでもあります）。
c.f.【完全保存版！】手を重ねて、息を吹き込み、手の中の温かな空気を意識に上げることで、気の玉とする 2018年09月17日
触っているのがただの物理的な空気でしかなくとも、意識に上った時点で情報なのです。ですので、意識に上った時点で、情報を共感覚で触っていることになるのです。
この転換が重要です。
これが密教的なIQと仮に呼んでいるMiQ（ミッキュー）の扉なのです。
ここは繰り返し繰り返しワークをやって、気功の結果を出す中、この方のようにWater!!!と気付くしかないのです。
理論的には知っていたけど、体感が伴っていないというか、腑に落ちていないことって多々あります。
この方が素晴らしいのは、どこにそのギャップが存在していたかを明瞭に知っていたことです。
そのギャップを認識していたからこそ、そのギャップが埋まった瞬間が認識できたのです。
そうしてはじめて理論が腑に落ち、アルゴリズムが自分のものになります。
ささやかなことのようですが、一事が万事です。
このささやかな気付きを反復していけば、どの世界へも羽ばたいていけるのです。
ですから丁寧に自分を観察し、丁寧に理論を学び、丁寧にワークを積み重ねていくことが重要です。
楽しんで気功を生活の中にうまく取り入れて、「普通」に圧倒的な成果を出していってください。
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