「黙って走れよ」とキプチョゲに怒鳴った後に、ルー・タイスは非常に面白いことを言っています。
ルー・タイスの世界を知る上で非常に重要なポイントがここにあります。
私は言いました。
「じゃあ、黙って走ったらどうなんだ? 君は走る必要はない。でも、走ることを選んだ。私になぜ走りたいかを話した。それは君自身の考えだ。本当は無理して走る必要などないんだよ。レースを終える必要なんてないんだ。いつだって止まることができるんだ」
I said, "Why don't you just shut your mouth and run then? You don't have to run. You choose to run. You told me why you want to run. It's your idea. Really, you don't have to run. You don't have to finish the race. You could stop at any time.”
①じゃあ黙って走れ
②君は走る必要はない(You don't have to run.)、
③君は走ることを選んだ(You choose to run)、
ここまでは分かります。
そのあとがポイントです。
You told me why you want to run.
It's your idea.
(私になぜ走りたいかを話した。
それは君自身の考えだ。)
ここで思い出すのは、、、イエスです。
(ここでふとまた不思議な訳を発見。「本当は無理して走る必要などないんだよ。」、、、無理して?
Reallyを訳したつもりなのでしょうか?
無理しているから止めた方が良いのではなく、have toはすべてやめろというのがルー・タイスの立場です
無理をしていてもいなくても、です)。
イエスがピラトに言った言葉です。
あなたはユダヤの王かと聞かれて、
You have said so,” Jesus replied.
あなたがそう言った、とイエスは答えています。
これはイエスの口癖とも言うべきもので、「それはあなたの言葉」とか「あなたがそう言った」をイエスは多用します。
そしてルー・タイスも使います。
You told me why you want to run.
「なぜ自分が走りたいかを私に話した」、、、のです。
「それはあなたの言葉だ」ということです。
すなわち、You have said soということです。
あなたはそう言った、と。
この感触が重要です。
あなたの言葉であり、あなたの口から放たれたものであり、あなたがそう言った、と。
口から放たれた言葉は実体性を持つのです。
そういう言葉が世界を構成していきます。
この感覚があると、ルー・タイスの臨場感、ルー・タイスの世界がクリアになってきます。
彼はスポーツをほぼ毛嫌いしているというか、そういう感じです。アスリートたちのことも好きではありません。。スポーツより大事なことはいっぱいにあるはずだと真顔で著書に書くほどです。
走ることも、むしろ「こいつら頭おかしいのかな」と思っている節があります。
でも、そんな感慨や情報は、コーチングには一切関係ないのです。
ルー・タイス自身が好むか否か、常識的かどうかとか、どうでも良いのです。
Want toと言ったということが重要なのです。
家族とか国家とかそういうもののために頑張ると言ったときはバッサリと切り捨てたルー・タイスです。
でも、シンプルに「自分は走って勝ちたい」と言ったのに対して、それに集中せよと言っています。
「僕は走って勝ちたいんです」
He said, "I want to run and win.”
「じゃあ、それに気持ちを集中しろ。
『したい』『選ぶ』『好む』を忘れずに練習しなさい」
I said, "Then focus on that.
Put your training on a want to, choose to, love to basis.”
集中すべきは、I want to run and win.です。
もっとシンプルにすれば、
I want to〜
でしょう。
ルー・タイスの世界にはおそらくは人称の区別も無いと思います(自己と他の区別も解けていきます)。
存在するのは、Want toかHave toだけなのです。
ここまでシンプルにすれば、強烈に寂しい世界でしょうが、強烈に結果の出る世界となります。
ルー・タイスの言葉を声に出して読みながら、その世界にアクセスしましょう!!