猫背や巻き肩というのはあまりにありふれていますが、多くの人がそれによる肩こりや頭痛、四十肩などに苦しんでいます。ひどい場合は石灰化などの器質的疾患につながります。
僧帽筋上部線維のみが注目されることが多いですが、実際のラスボスは大胸筋です。
大胸筋が邪魔をしています。
ですので、大胸筋をゆるめましょう。
それも、大胸筋を圧倒的にゆるめる秘密のツボからアクセスするのが有効です。
ツボというのは煽りで、実際は停止のことです。
ただ起始に比べて、停止は狭いです(起始が広く、停止が狭いタイプの筋肉の一つですね)
大きな筋肉なのに、手のひらにおさまるサイズになります。
というわけで、大胸筋を停止からゆるめるのはかなり有効です。
これは「筋肉を付着部からゴルジ腱器官を刺激して深くゆるめよう」シリーズの一貫ですので、理論的にはさほどの驚きはないかもしれませんが、しかし施術で使う分には強烈な効果があります。
*大胸筋は深くゆるめましょう!
ただしいくつかの要件があります。
第一にゴールです(^o^)
というのも、大胸筋をどうしてもゆるめたいという動機がないと、あまりうまくワークしません。というのも、実際にゆるんだところで、クライアントさんの意識にも、セラピストの意識にも上がらないからです。
いや、これは他の部位も同じです。
大腰筋や大臀筋や中間広筋などはゆるむと最高に快適なのですが、最高に快適にどうしてもならなくてはいけないという直近のゴールがないと、意味がありません。
上品なイエス様はこう言いました。
聖なるものを犬にやるな。また真珠を豚に投げてやるな。恐らく彼らはそれらを足で踏みつけ、向きなおってあなたがたにかみついてくるであろう。(マタイ7:5)
もっと上品な僕らのご先祖様は「猫に小判」と言いました(^o^)
猫に小判のほうが可愛いですね。
これは結構重要です。
ですので、実際の施術の腕はもちろんのこと、いかにプライミングを起こすかに腐心すべきです。
職人でもないのに、職人気質を気取って「良い施術をすればいいんだ」と勘違いしている人がいますが、、、、
駆逐されてしまえと思いますね〜(^o^)
重要なのは演出であり、期待感の醸成であり、期待以上の驚きと喜びです( ー`дー´)キリッ
身体を機械か何かと勘違いしているデカルトのような人は多いですが、身体は機械であり、魂も宿っているのです(デカルトもそう考えていましたけどw)。
ですので、期待感を高めたり、プライミングを引き起こすことで、そもそものホルモンを変えることは大事です。
もちろんプライミングだけが全てを解決するはずもなく、きっちりした技術を持つ必要があります。
ただ、単に技術さえあれば、腕一本で何とかなるというのも誤解です。
(一匹狼で素っ気無く見えるブラックジャックであっても、きっちりプライミングをコントロールします)
大事です!
ということで、ゴールが大事です。
そして、ゴールが弱いなーと思ったら、セラピスト側がガヤガヤとゴールの臨場感を高めて、プライミングをドクドクと起こしてあげてください。
もし起きないようだったら、「次回予告」のようにして、次に回しましょう。
たとえば首が猛烈に痛いというケースがあったとして、その原因が大胸筋にあるとします。
風が吹けば桶屋が儲かる並に因果関係が遠いのですが、、、
シンプルに言えば、僧帽筋上部線維が張りすぎていて、胸鎖乳突筋が拘縮しており、猫背・巻き肩になっていて、上腕骨と肩甲骨のアライメントを修正しようとすると、頑強に抵抗するのが、、、、そう、大胸筋でした。
ですので、大胸筋をゆるめれば、肩甲骨は下がり、上腕骨はきちんと外旋し、外転し、それに伴って筋肉がゆるみます。
ここで大胸筋をゆるめる重要性がクローズアップされるのです。
余談ながら、最近で言えば、ストリートダンサーの方が首と頭が一週間ほど痛くて、ロキソニンを飲んでいるとおっしゃっていました。痛みから解放されるのはその方にとって切実なゴールです。施術の中で結果を出しながら、大胸筋をゆるませる必要性について語れば、もちろん喰い付いてきます。それがプライミングです)
(ちなみにダンサーはとてつもなく痛みに強いことが多いです。なぜなら、年中痛みと戦っていますし、良いパフォーマンスのためであれば、痛みを我慢することなど平気だからです。痛みに強いのは良いのですが、そのために悪化しても放置してしまう癖があります。
とは言え、放置してしまうのはダンサーの責任ばかりではありません。
医師に相談しても無意味なので、結果的に放置してしまうのです。
ダンサーの先輩に聞けば、バカの一つ覚えのようにアイシングを薦められます。
(これもまた余談ながら、「まといのば」ではアイシングは痛み止め以外には無意味という立場でした。
アメリカのアスレチックトレーニングの世界でも同様の意見に変わってきたようです。
血流を阻害して、体温を下げて、身体に侵襲することが回復につながるはずもありません。
じゃあ、なぜ大リーガーたちは投球したあとにアイシングしているかと言えば、おまじないというか、縁起担ぎのようなものだそうです)
ダンサーの悩みは医療の枠の外なので、医者に相談してもほとんど明後日の方向の回答しか来ません。骨をおったり、腱を断裂して、はじめて医療は役に立ちます。
これは医療が無能なのではなく、八百屋さんに魚を求めてはいけないというだけのことです。専門が違うのです。
話を戻します。
ゴールは重要です。
たとえば頭痛と首の痛みの原因が大胸筋の拘縮であることが分かったり、ひどい猫背や巻き肩の原因が大胸筋にあることに気付き、それを改善したいと強く思えばOKということです。
そしてあと2つほど要件があります。
上腕の筋肉がゆるんでいることです。
上腕二頭筋と上腕三頭筋がしっかりゆるんでいないと、大胸筋の停止である大結節稜にたどりつけません。
硬ければ通せんぼされます。
大結節稜に行くためには、事前にそこまでの道のりを透明にしておく必要があります。
実は大胸筋はそんなにがんばらなくても起始でしっかりとゆるめられます。一番ベタなのは胸肋関節のあたりですね。
大胸筋の中部をきっちりゆるめれば大胸筋はずいぶんと変わります。
また大胸筋自体はそれほど分厚い筋肉ではありません。どちらかと言えばペラペラです。
実際に大胸筋に触ってみましょう。
すぐに下に肋骨を感じないでしょうか?
同じ四肢の筋肉でもたとえば大腿四頭筋から大腿骨を感じるのは難しいです(でも中間広筋からなら、大腿骨を感じさせられます)。
それくらい大胸筋は薄いので、「小さい筋肉は筋腹ごと押しつぶす」作戦が使えます。
ここで復習ですが、筋肉に対する徒手(マニピュレーション)でのアプローチは大きく分けて2つです。
一つは圧迫する、もう一つは引っ張るです。
前者は筋膜に対して、後者は筋繊維に対して向けられます。
すなわち、筋膜リリースとストレッチです(多くのストレッチがストレッチとして機能していないのは、筋肉の走行を無視するからです)。
筋膜リリースとはかなりハイカラな言い方ですが(←表現が古い)、実態は指圧です。指に限定しないので「圧」ですね(^o^)
指圧の心は母心、押せば生命の泉湧く
です(これも古い、昭和かっ)。
で、その圧をかける場所は筋腹か付着部ということになります。
ちなみに「まといのば」では付着部ばかりに注目しているように見えますが、実際は筋腹もオススメです。
ただし、大きな筋肉から順番にやるという原則から考えれば、ゴルジ腱器官を刺激するのが正解です。
小さな筋肉はいちいち付着部を探さなくても、筋腹を圧迫すればゆるみます。
ストレッチも有効ですが、気をつけて欲しいのは、ストレッチは物理的に引っ張ることではなく、身体とのコミュニケーションであるということです。筋繊維を引っ張ることで、そこに意識を上げるコミュニケーションです。
ですので、たとえば「ずらす」という技も立派なストレッチになるのです(←ここ重要)。
筋の走行を意識して、起始と停止を離すだけがストレッチではありません。
「まといのば」では、起始と停止をあえて近づけて、その上で脱力させることでたるませます(起始と停止を近づけると条件反射で収縮してしまうトレーニーはたくさんいます。これに対しては収縮を確認した上で、付着部を強く刺激して、数秒待つことで、リセットします。ゴルジ腱器官はリセットボタンなのです)。
たるませた上で、「ずらす」と深くゆるみます。これに関してはRay式マッサージスクールでもいくつか紹介していますが、深堀りするといろいろな筋肉に応用可能で面白いです。BootCamp講習会でどんどんやりましょう。
また小さな筋肉は筋腹ごと押しつぶすことが有効です。
たとえば小さくはないですが、薄い筋肉である大胸筋もこの指圧というか、筋膜リリースで十分にいけます。
ただし、肋骨が相当に柔らかいので、押し付けても吸収されてしまうことを頭において施術してください。
また小胸筋も相当に特殊な方法(上肢帯)などで施術する方法を紹介していますが、実際は大胸筋をゆるめて透明にすることができると、小胸筋の形はくっきりと浮かび上がってきます(大胸筋が十分にゆるんでいて、小胸筋が固まっているときに)。
「いやいや、それは無理でしょー」と思うかもしれませんが、アロマセラピストなどでない限り、私達は服の上から筋肉を触知しています。服の上、皮膚の上、皮下脂肪の上から筋肉を触知できています(程度の差はあればこそすれ)。
大胸筋は服程度の薄さです。ですので、きちんとゆるめば触診できます。これも一度体感すると、納得できると思います(あとは、一度、解剖実習されると大胸筋のイメージ以上の薄さに驚かされます)。
ですので、大胸筋には意外とゆるませる方法があります。
でも、、、実際に施術の現場では、一般には胸に触りにくいこと、そして起始部が広すぎること、肋骨が柔らかすぎて衝撃を吸収してしまうことなどがあって、うまくいかないことが多いというのが個人的な感触です。
そこで、大結節稜です。大胸筋の停止部です。
触り方はシンプルです。上腕二頭筋と上腕三頭筋の境目に手を入れて、上腕骨に指を達したら大結節稜にはすぐにたどり着けます。上腕骨の硬さを利用して、ゴルジ腱器官に思いっきり刺激を入れましょう。
たとえば大胸筋に力を入れてもらうとよく分かるかと思います。
そしたらすぐに大胸筋をストレッチします。
上腕骨の骨頭を持って、胸を開くワークですね。これが驚くほど柔らかくなります。
片方だけ試したり、いろいろ実験してみてください。
大胸筋のリリースに苦しんでいる人は多いので、かなり吉報です。
(大胸筋という胸にある筋肉なのに、上腕骨で施術できるというのも良いですね。胸はやはり禁忌です。実際、ものすごく効果がある場所って、一般に触れない場所ばかりなのです)
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【受講資格】 「まといのば」セミナー受講生(もしくはそれに準ずる方、他で「まといのば」の主宰のセミナーを受けている方もOKです)
【持ち物】 情熱とゴールと筆記用具と動きやすい服装
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