肩甲骨周りについては、「まといのば」では「上肢帯」と呼んでいる技術があります。
これは高岡先生の肩包帯のワークを気功技術にアレンジしたものです。
これはかなり強烈なもので、平たく言えば、体幹と上肢をくっきり分けるものです。
これを先日のバレエ講座で行ったら、アームスの使い方、そして背中ががらっと変わりました。
アンオーにしただけで、違いが歴然としており(肩甲骨を上手に使えています)、白鳥のはばたきなども一瞬で上手になります。
ちなみに一見すると上手な子で苦しんでいる子というのは、形を真似するのが得意だけれど、その本質が取れないことが多いです。
ローテーターカフを使いたい所で、僧帽筋と三角筋で頑張ると、見た目は似ているものに、苦しいことになります。
Y字やI字のキープも実は(直接関係のなさそうな)ある筋肉をほんのわずかに使うだけで、アライメントによって静止できます。しかし、これを筋肉でやってしまうと筋肉バレエになってしまいます。
わずかな違いですが、苦しい道と快適な道があるのです。
というわけで、この「上肢帯」のワークもその快適な道へ行くための素晴らしい技術です。
ただし、これまではあまりの難しさに、僕が施術することはあっても、施術の仕方を教えることはありませんでした。
ですが、ソルジャー候補生たちがBootCampを通過するあたりでは、おそらく彼らもできるようになっているのではないかと期待しています。とは言え、かなり高難度の技術です。
ちなみに技術名ではなく解剖学用語としての上肢帯というのは、そもそも肩甲骨と鎖骨のことです。
(下肢帯は腸骨のこと)
ここで骨の確認をしましょう。
「あなたの骨を数えましょう」ですね。
c.f.【募集開始!!】♪あなたのキス(骨)を数えましょう♪「今さら聞けない解剖学〜骨格編」開催!! 2017年03月16日
面白いもので、上肢というのは肩から先は30個の骨でできています。覚えやすいきりの良い数です。ちなみに下肢も股関節から下は30個です。体幹は胸骨を除けば50個です。
ですので、四肢は30個ずつ、体幹は50個で、あわせておよそ170個(実際は上肢帯と下肢帯と胸骨をあわせて、177個)です。ちなみにこの端数も綺麗に消えます。
なぜなら頭蓋骨が23個です(この覚え方は、1,2,3で23個とおぼえます。頭は一番上なのでトップの1です。1,2,3と続くので、23個です)。
ですので、23個と端数の7個を足すと30です。
よって、170+30=200となります。
これが『♫あなたの骨を数えましょう♫』でしたね(過去記事も是非参照してください)。
厄介なのは手や足くらいなものです。あとはシンプルなものです。一度数えて一気に覚えてしまいましょう。
で、上肢帯は肩甲骨と鎖骨です。ですので、端数の2を強調するために、肩関節から先は30ときりの良い数に神様はしたのではないかと思います(ジョークです)。
肩甲骨と鎖骨は身体の中央部分(あえて体幹とは言わず)にありますので、分かりにくいのですが、それは上肢といういわば腕の一部です。
肩甲骨に軽く触れて、腕を軽く動かしてもらいましょう。
そうすると、肩甲骨が大きく動くのが分かります。肩甲骨は腕なのです。
同様に、鎖骨と胸骨を一緒に触り(たとえば、親指で胸骨を、中指で鎖骨を)、腕を軽く降ると、鎖骨は動きますが、胸骨は動きません。
ですので、胸骨と鎖骨の境目である胸鎖関節というのは、実は腕の付け根なのです(上肢の付け根ですね。ここを肩関節の一つと数える人もいます)。胸鎖関節には触れられるようにしておきましょう。
先程の親指と中指をそっと近づけていき、それが一致したところが胸鎖関節です。もちろん視診でもわかりやすい場所です。
*肩峰そして、肩鎖関節が見えやすく、胸鎖関節もかなり推定できます。
上肢帯関連技術は肩甲骨周りでも3つあります。
最も有名なのは、肩甲骨剥がしというものです。
非常に有効ですし、重要です。
肩甲骨が癒着しているかのように、貼り付いている人はたくさんいます。
そしてそこを剥がすだけでいろいろなことが変わります。
ただ、充分に剥がれていても、大きな不調に見舞われている人は多くいます。
肩甲骨剥がしだけでは不十分なのです。
ちなみに、この写真のように肩に手をかけるのがポイントです。
指を入れるのではなく、肩甲骨の方を指に押し当てていくイメージです。同じようですが、全く違います。痛みが少なく、肩甲骨の中に指を入れられます。
僕らも指摘されて認識したのですが、肩甲骨と肋骨の間に指を入れて、肩甲骨の裏面を圧迫しても、そこは肩甲下筋ではなく、前鋸筋です。
くりかえします。
肩甲骨の裏面に指を入れられても、そこは肩甲下筋ではなく、その前に前鋸筋があります。
これ意外と盲点です。
前鋸筋を介して、肩甲下筋を押すことになります。
そうやって肩甲下筋をゆるめても良いのですが、肩甲下筋にとっても、前鋸筋にとってもちょとと刺激が弱くなります。布団と布団が重なっているようなものなので。
それに対して真に驚くべき方法を発見したのですが、、、、、(スクールで公開しますw、冗談です)。
Anatomography - en:Anatomography (setting page of this image), CC BY-SA 2.1 jp, リンクによる
手法としては、いま仮に「前鋸筋」と呼んでいますが、前鋸筋にも肩甲下筋にも有効な方法です。
肩甲骨剥がしを行ったら、「前鋸筋」へ。そして上肢帯へとホップ・ステップ・ジャンプするのが、上肢帯関連の技術です。
(ただ、上肢帯関連をやるときは必ずC0と呼んでいる、頚椎頭蓋骨関連を一緒に。頭が重ければ、アライメントは簡単に崩れます。頭がきちんと骨の賽の河原積み状態なら、頭の重みは無視できます。そしてそうすると驚くべきことに僧帽筋上部は脱力します)
上肢帯に関しては、豊胸手術と絡めていろいろと面白い話があります(BootCampでも言いましたね)。
皮膚だけを切開して、スペースを作る作業はほとんど手で筋膜を文字通りリリースしていくと、予後が良い外科医の方から聞きました。
下手くそな外科医はメスを使いたがると。メスを使いまくると余計なところも切りすぎてしまい、傷にもなるし、出血も多いし、感染症のリスクも上がります。
「肩こり解消」のメソッドもそうですが、C0も上肢帯関連も非常に大きな結果をもたらしてくれます。
(注:肩こり解消のメソッドとは、以下の通りです。
まず、大胸筋を肩近くを圧迫で、リリースして、巻き肩を物理的に解消しつつ、烏口突起を探して、烏口突起を起始とする筋肉群をリリースし、烏口突起と上腕骨骨頭の間に隙間をつくりながら、菱形筋を復活させ、僧帽筋をゆるめる)
そしてやればやるほど深くゆるみます。
一回の施術で、驚くほどの場所へ移動できますが、繰り返せば繰り返すほどにこまやかにこまやかに身体を改善できます。それも加速度的に改善できます。
そうすると不思議なもので、不健康な習慣をすべて排除したくなります(でも、徐々に外しましょう)。
なぜなら、健康というのは本来は圧倒的に気持ちよく、圧倒的にハマるものだからです。
我々はもっとイキイキと生きて良いのです。
ちなみに、一般には充分にゆるんでいるという人(一流アスリートやダンサー、ヨガ教師)こそ、シーツの下にあるえんどう豆を強く感じて、眠れなくなるものです。
靴の中に入った不愉快な小石も、敷布団の下にあるえんどう豆も全部丁寧に取り除いていく気功整体 2019年11月10日
相当に苦しんでいます。
キャリアを棒に振るほどに苦しんでいます。
しかし当然ながら、誰にも理解されず人知れず苦しむしかないのです。
(たとえば、医師は標準以上の身体には「異常なし」としか言いようがないからです)
c.f.筋肉は縮めても、伸ばしても、動かさなくても使える?!〜短縮性収縮、伸張性収縮、等尺性収縮〜 2019年11月05日
(この例はダルビッシュさんですが、たとえばグルテンフリーを始める前のジョコビッチなどを考えても良いでしょう)
個人的に経験したことで言えば、世界で一流として活躍している人は、怪我をしていても、常人では到達できないほどにゆるんでいることがあります。まさに筋肉は薄くて、水でできているようです。脂肪はほんのシートのようで、ほとんど感じられません。すぐに骨に当たります。
目で見て筋骨隆々であっても、触ると脂肪よりも柔らかいもので、固そうに見える肋骨ですら、ゆるゆるです。
そのような常人が理想とするような身体であっても、複雑な拘縮と痛みと戦っています。
想像を絶するほど苦しんでいるのです(それを人に言っても、解決にはならないので、笑顔の下に隠しています。意味がないことをするような贅沢な時間は彼らにはないからです)。
ですので、単なる「肩甲骨剥がし」レベルで満足するのではなく、上肢帯で細かな筋肉をすべて筋繊維の一本一本まで余さずゆるめるという気概を持って、BootCampを過ごして欲しいと思っています。
小胸筋も丁寧にゆるめてあげると、またひとつ不快な「えんどう豆」を取り除けるのです(これは深層外旋六筋についても言えます。ただその前に大臀筋と中臀筋をしっかりゆるめましょう)
というわけで、是非、解剖直観を愚直に身に着けていきましょう!
解剖直観を身につける最大の方法は自分の身体を徹底的に触って、筋肉を動かしそれを感じることです。
「生きた解剖学」「感じる解剖学」と呼んでいます。
そしてもし余裕があるならば、10月のハワイ大学医学部解剖実習へ行きましょう(応募は先着順で、入金確認後に確定となります。5日12時に募集開始します)。