死ぬほど身体を動かした日には、死ぬほど寝れます。
めっちゃ身体を動かして、限界の限界を超えて、死ぬほどに身体を酷使した日には(これもまたいろいろと議論があるのですが)、死ぬほどよく眠れます。
(「いろいろと」というのは、死ぬほど疲れたと思っても、それはある一部のごくわずかな筋肉が疲労しているだけにすぎないことが多いのです。もっとよくあるのは、ある一部のごくわずかな筋肉が飽きているだけというケースです。すなわち脳です。脳が飽きたのです。これを検証する方法はシンプルです。
死ぬほど追い込めたと思って、全身が疲労したと思ったら、少しインターバルを置き、呼吸を整えておもむろに別な種目をやってみることです。全く身体が疲れていないことに気付かされます。
これは満腹のときの「別腹」と似ています。別腹は消化器は同じですが、上のケースは筋肉が別なのです)
力を猛烈に入れることと、脱力の関係もこれに似ています。
猛烈に力を入れることができる筋肉は、猛烈にゆるめることができます。
だから、脱力したいと思ったら、最大限に力を入れることを覚えたらどうか、というのが先日の記事の提案です。
筋肉の機能は振り幅で決まります。
(IQの機能も抽象度の振り幅と速度で決まります。ただ、どちらかと言えば振り幅が重要です。狭い人は早いものです。そりゃ狭いから早いだけです。広い範囲を網羅しながら、素早く動けるのがIQの高さです)
「脱力しなければ!」と思っている人は、脱力も力むこともできずにいて、単に拘縮してしまった筋肉を触りながら、もっと力を抜かなければとトンチンカンな方向に努力をしてしまうのです。
やるべきはもっと力を入れることであり、もっと体幹に猛烈に力を入れることです。
という記事を書いたら、「オールアウトまで身体を追い込みたい」というようなリプをいくつかいただきました。
ただ残念なお知らせがあり、普段身体を酷使していない人には「オールアウトまで身体を追い込む」こと自体ができません。それに必要な筋肉も、神経も育っていないからです。
ですから、まずやるべきことは本当に簡単な体操から丁寧に正確にやることです。
とは言え、身体を動かすことに関しては、自己流でやると悪いクセが増幅して、怪我のリスクが高くなっていくだけです。きちんとした指導者のもとで、きちんとトレーニングをしましょう、という平凡なアドバイスしかできません。
自分で正確さを意識しながら、追い込める人は数少ないですが、実際にいます。しかしそれは稀ですし、その稀な確率に自分がいると考えるのは傲慢であるというくらいの計算はできた方が良いかもしれません。
そもそももしその稀な確率に自分が入っているのであれば、その才能があなたにトレーニングを強いたでしょう。
筋肉は力を入れようと思って、入るものではなく、力を抜こうと思って抜けるものでもありません。
いや、少しは変化しますが、大きくは変わりません。
筋トレのカラクリというのは、たしかに筋破壊と超回復なのでしょうが、認知科学的に考えるならば、環境に対する適応です。なぜ環境に適応するかと言えば、環境に対して適応することが、ホメオスタシスの機能だからです(ここはトートロジーであることは承知で議論を展開しています)。
暑いから汗をかくように、重いから筋肉が肥大するのです。
それ以上でもそれ以下でもありません。
ですからデザインすべきは環境ということになります。この環境もイメージではなく(空想レベルのイメージに臨場感は無いので)、きちんと環境を変えることです(深くしゃがんだり、フォームにこだわったり、重りを使ったり)。
環境が物理的に変われば、肉体も物理的に変わります。
それが恒常性維持機能と呼ばれるホメオスタシスの機能だからです。
その上でもっと強烈に「環境」を変えるのは、ゴールです。
こんなゴールを達成するにふさわしい自分だと確信できれば、それは強烈な環境の変化となります。
灼熱の太陽に、汗が止まらなくなるように、灼熱のゴール設定に、筋肉の肥大は止まらなくなります(脂肪の燃焼も)。
ゴールだけを頭の記号操作で変えてもダメです。そこには物理的な痛みを伴わせることです。痛みでも歓びでも、快楽でも、哀しみでも、嗚咽でも何でも良いのですが。物理的なものを伴わせることです。
自分が理想とする人の集団に飛び込むというのはその意味で非常に手っ取り早く自分を変化させられます。
ダンサーであれば、プロのダンス集団に入る。俳優であれば、劇団に入る。武術家なら、道場に入る。
そこでは自分が理想だと思っていた世界が普通の日常として起こっています。
そうすると、ホメオスタシスが書き換わるのです。なぜなら環境が強烈に書き換わっているからです。
「まといのば」でも普通の女子や普通のまだ若い男子が、非常に分かりやすい形で圧倒的な結果を目の前で出してくれます。その集団の中に飛び込めば、自分が変わるか、環境を変えるしかありません。環境は変わりませんので(笑)、自分が変わるしかないのです。
これから気功整体のカリスマというか、ソルジャー(整体師)を育てていきたいと思っていますが、そこでも圧倒的な解剖学の理解であったり、見事なトーク(内部表現書き換え)であったり、見事な姿勢からの骨や筋肉の分析を目の前で見せられ続けることえ、それが灼熱の太陽として心身を焼き焦がして欲しいと思っています。
そのことで、汗が吹き出すように、才能が吹き出すのです。
失礼ながら、身体を扱うような人はもともとの地頭が良くない人が多いです(本当に失礼w)。
(そもそも身体を扱いたいと思っていて、頭が良いのであれば、普通に医者になるでしょうし)
ですので、頭が不自由なんだから、僕らはガンガン身体を使いましょう(ただし、解剖学くらいはお医者さんと同等になりましょう。医師たちは解剖だけをやれば良いわけではないので。僕らはせめて解剖くらいはきちんと学びましょう)。
身体をガンガン使って、どんどん学んで、どんどん実践して、どんどん結果を出して、たくさん謗(そし)られたとしても、バカにされても、ニコニコとがんばりましょう。環境が圧倒的に変わるので、汗をかくように、我々も成長し、変化できます。
(とは言え、「いまはまだすぐにスタートできない」「今後、そっちの道に行きたいから、先に独学をしたい」という人のための講座も一応考えています。
一方で、「もうすぐに飛び込みたい」という人は気功師養成スクールへどうぞ!)
12月に追加開催しますし、11月受講生のうちで移動したい方は歓迎です。もちろん今から11月開催に飛び込みたい方も歓迎です!
c.f.上手の中にまじりて、毀り笑はるるにも恥ぢず、つれなく過ぎて嗜む人、天性その骨なけれども 2018年07月14日
【書籍紹介】
時間の哲学が何か机上の空論に感じるのは、100年前にドイツ系ユダヤ人が示した物理学の基本的なパラダイムシフトを踏まえていないからです。
c.f.未来から過去へと時間が流れるとどうしても思えない君へ 2017年07月27日
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*とは言え、時間に関するA理論、B理論の古典ですので(C理論までありますw)、一読を!
「時間」を議論するのに物理学を踏まえないのは、ピルエットというバレエのパを議論するのにバレエを踏まえないようなものです。
「時間」というテクニカルタームは日常言語ではなく、本来は科学で定義されるべき言葉だからです。
理論物理学者(ループ量子重力理論)のカルロ・ロヴェッリはファインマン先生を思わせる説明の妙手であり、ファインマン先生以上に詩的で神話的です。
現代にふさわしい語り手です。
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彼の議論を踏まえて(とは言え、そのほとんどは寺子屋で踏まえられていますが)、世界は存在しないが、ユニコーンは存在するという議論を再び考えてみると、非常に整合的です。
哲学者が頭の中で勝手に「完全情報がない」と言うのと、物理学者が定義上我々の観測可能な宇宙は部分集合でしかないというのは異なります(彼が面白いのはビッグバンもまた我々の特殊な部分集合の特殊な帰結だと考えている点です)。
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そろそろ寺子屋のリニューアルシリーズが終わります。
(寺子屋講座の受講費は2020年から一律で1講座3万円とする予定です。すでに、現状はほとんどが3万円です)。
寺子屋の新講座としては「なぜユニコーンは存在するのに、世界は存在しないのか」あたりから切り込みましょう、哲学史と科学史から。
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ここらへんの議論はカーネマンと重ねて、第2弾としてやりたいですね。
行動経済学や認知科学の恐るべき発展は、コペルニクス的転回と言えます。
コペルニクス的転回が人間を宇宙の中心から追いやったように、現在のコペルニクス的転回は「脳」や「私」すらも情報宇宙の中心から放逐したのかもしれません。
当然ながら古典である「自由意志は存在しない」については、きちんと押さえておきたいものです。
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とすると、それらを総覧する意味で、久々にこちらを通読しておくと良いウォーミングアップになるかも。
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カルロ・ロヴェッリに興味を持ったら、こちらの2冊も。
簡単に読めますし、現代物理学史を綺麗にまとめてくれます!
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