楽しくリアルな生きた解剖学を学びたいと思ったら、迂遠(うえん)だと思っても、自分の身体を使いながら確認しながら学ぶことです。
実際は紙の上で機械的に覚える方が素早く覚えられます。ペーパーテストを通過するために最適化された勉強というのはあります。それはそれで大事な知識です。
ただし、自分の身体を通過させないと、整体の現場では役に立ちません。
ちなみに、Boot Campなどでは「紙の上で機械的に覚える」方法も教えます。プロになるならば、両方の学習法が必要だからです。
一気に覚えた上で、身体に落とし込んでいくのです。
(そのときに例の教科書を上手に使いこなします!)
さて、筋肉と言えば力こぶということで、いつもながらの上腕二頭筋です。
バイセップスですね。
この上腕二頭筋は肘を曲げるための筋肉です。
あ、曲げるということで言えば、筋肉の機能というのは大きく分けて3種類しかありません。
いわゆる曲げ伸ばしの屈曲と伸展が一つ。
身体から離していく外転、そしてその逆が内転です。
手を横に広げるのが外転、その逆は内転です。
脚をセゴンに出すのは外転。戻すのは内転です。
最後に外旋と内旋です。
バレエをやっている人であれば、アンディオールが外旋です。
整理すると、
屈曲・伸展
外転・内転
外旋・内旋
の3種類です。
6パターンありますが、逆方向なだけなので、3つ覚えればOKです。
(もちろん実際はもっとたくさんの名称がありますが、本質的にはこの3組です)
屈曲、伸展は曲げ伸ばしです。文字通り曲げて、伸ばすので、読んで字の如しです。
外転と外旋は似ていますが、転がって外に出ていくのが外転です。旋回する(アンディオール)するのが外旋です。
口で何度か唱えて覚えてしまいましょう!
*ダ・ヴィンチのウィトルウィウス的人体図のパロディーですが、外転ですね。
上腕二頭筋の屈曲と伸展をやってみましょう。
腕をだらんとおろして、上腕二頭筋に力を入れて、肘を屈曲させましょう。
そのとき上腕二頭筋が収縮して、上腕三頭筋が伸ばされていきます。
上腕二頭筋に力を入れたまま、肘を伸ばしていくと(伸展していくと)、上腕三頭筋が収縮して、上腕二頭筋が伸張性収縮(ネガティブ、エキセントリックコントラクション)します。
これを何度か味わいます。
そして、それをそのまま股関節に置き換えましょう。
上腕二頭筋が腸腰筋群(大腰筋と腸骨筋)で、上腕三頭筋が大臀筋(大殿筋)となります。
腸腰筋を収縮して、股関節を屈曲させ、大殿筋を収縮させて股関節を伸展させます。
向きはひっくり返りますが、膝も同様です。膝関節を見たら、足関節も同じです。
ただ足関節は屈曲伸展と言わずに、背屈、底屈と呼びます。
バレエをされている方は背屈がフレックス、底屈がポアントとおぼえましょう。
底屈の底(てい)は底(そこ)という意味。足裏ですね。そこを屈曲させるのですから、ポアントです。つま先を伸ばすことです。
上腕二頭筋、上腕三頭筋で肘の屈曲を見て、それを股関節、膝関節、足関節と応用したら、今度は体幹です。
背中を丸めるのが屈曲、そして背中を伸ばしていく(ブリッジまで)が伸展です。
首も同じですね。
二頭筋から一気に全身の筋肉の機能まで見えてきます(この調子で外転や外旋もやりましょう)。
解剖学って無駄に屈曲とか伸展とか言っている気がしますが、、、、
たとえば、「脚を開いて!」と言われると、普通の人は脚を外転させます。
それに対して、バレエダンサーたちは必ず脚を外旋させます(アンディオールですね)。
日常言語というのは曖昧さをどうしても伴います。ですので、解剖学用語のような科学的な用語というのは曖昧さをなるべく排したいと思って作られます。
実際に機能(屈曲や外転など)で運動を考えるようになると、すぐに筋肉が透けて見えるようになってきます。
ですので、最初は厄介ですが、素早く慣れてしまいましょう。
そして慣れてしまうと、いろいろと便利です。
たとえば上腕二頭筋と上腕三頭筋は上腕骨に対して表と裏の関係です。
そして収縮している方に曲がります。
上腕二頭筋が収縮すると、肘が曲がり、上腕三頭筋が収縮すると肘が伸びます。
筋肉がついている方向に機能があるということです。
当たり前のことですが、これを筋肉に対する直感として持っていると、筋肉の機能が直感的に分かるようになります。
たとえば股関節に関して言えば、大臀筋は背中側、大腰筋はお腹側です。
ですので、お尻の筋肉は股関節を伸ばし、お腹の筋肉は股関節を屈曲させます。
筋肉がある側に曲がるとおぼえておけば(いや、分かってしまえば当たり前のことなのですが)、筋肉と機能の関係が直感的に分かりやすくなります!