ピーター・ティールは「ものごとへの新しい取り組み方、より良い手法はすべてテクノロジーだ」と言います。
(ピーター・ティールって誰?という人は、Paypalマフィアのボスですね。Paypalとパランティアの共同創業者であり、ザッカーバーグのフェイスブックやイーロン・マスクのスベースXを含む数百社のスタートアップの投資家です)
(「サードドア」の中にも、ザッカーバーグが大学2年生の終わりにティールに会うシーンが出てきます)
それはさておき寺子屋「はじめての解剖学」は相当に面白かったかと思います!(自画自賛系で恐縮です)
そこで見えてきたのは、広大なテクノロジーが広がっているのに、我々はそれを毛嫌いして手をつけていないということです。
セミナールームには、解体新書の復刻版があります。箱入りで和綴じの非常に味わい深いものです(今から40年ほど前に3000冊ほどしか発行されませんでした)。
ターヘル・アナトミアの全訳として知られていますが、おそるべきことに杉田玄白や前野良沢等は辞書がほとんど無いところから訳しています。
なぜそのようなことをしたのかと言えば、知的好奇心がゆえです。
腑分けという解剖実習の際に、オランダの医学書(ターヘル・アナトミア)の正確さに驚かされたことがその情熱の根源です。
解剖の知識というのは、非常に面白く、多くの社会でタブー扱いされています。
日本でも同様で、それを破壊したのが解体新書の出版であり、西洋社会ではヴェサリウスの登場でしょう。
余談ながら、ヴェサリウスのファブリカを見慣れた目からすると、解体新書の一部のイラストが明らかなヴェサリウスのパクリであることが分かります。
ちなみにこの素晴らしいデッサンを描いてる小田野直武は、あの天才平賀源内が絵を教えた秋田藩の藩士です。
*平賀源内(「平賀鳩渓肖像」 木村黙老著『戯作者考補遺』(写本)より)
*とは言え、平賀源内の死から65年後に描かれています。上野の西郷さんと似てて、実物とはずいぶん違うのかもしれません。
五臓六腑と言われた時代からすれば、解体新書の出版後の世界は隔世の感があるでしょうし、コンピューターグラフィックの進化により、いわゆる解剖書というのは飛躍的に安くなりました。
いや、今や解剖書をたくさん手元に置いていなくても、インターネットで検索できる時代です。
身体に関する貴重な情報(その多くが機密であったもの)がこれだけふんだんにアクセスできるのは素晴らしいことです。
とは言え、その恩恵を我々は無下にしているように思います。
ピーター・ティールをもじっていえば、
解剖学は奇跡を生む。それは人間の根源的な能力を押し上げ、より少ない資源でより多くの成果を可能にしてくれる。
のですw
いや、解剖学という知の体系こそが、新しいテクノロジーの1つなのでしょう。
なぜなら、解剖学を上手に運用することは「ものごとへの新しい取り組み方、より良い手法」と言えるからです。
これをシンプルに言えば、
知は力なり
(scientia est potentia)
(knowledge is power)
となります。
(フランシス・ベーコンの言葉ですね。厳密にはこの言葉どおりというよりは、少し違うのですが。
人間の知識と力は一致する、というのも、原因を知らなければ、結果を生み出すこともできないからだ (Scientia et potentia humana in idem coincidunt, quia ignoratio causae destituit effectum.)
ちなみに引用箇所は「ノヴム・オルガヌム」。
これはアリストテレスのオルガノンに対しての、新オルガノンという意味です。
オルガノンと言えば、論理学。論理学と言えば、寺子屋第1回が論理学です!)
我々の目の前に広がる光景は逆です。
解剖学をよく知る人が身体が使えるわけではなく、身体を良く使える人が解剖学を知っているわけではありません。
しかし、統計的に解剖学の「知が力」になっているケースが少ないからと言って、実際にそうであるとは限りません。
我々としては、解剖学を学ぶことで、ますます身体がレベルアップするという道はあると確信していますし、その狭き道を進みたいのです。
我々はそれを「生きた解剖学」と言っています。
「生きた解剖学」を学ぶことで、エレガントな身体を目指したいのです。
とは言っても、特殊な知識を得て、特殊な能力を習得するというわけではありません(そのような疑似科学満載の自己啓発やスピリチュアルが多いのは知っていますが)。
もっとシンプルです。
誰でも知っているようなことを正確に知ることで、圧倒的な結果に結びつけるのです。
たとえば、胸骨に触れてみましょう。
身体に触れるときのポイントは、周辺から攻めることです。
肘や膝のようにはっきりと場所がわかるところは別として、怪しいところは周辺から攻めます。
たとえば胸骨という胸の骨であれば、喉の柔らかい部分を押して、そこから指を押し下げていきます。
すると硬い胸骨に出会います。
意外と高いところにあるのに驚く人が多いです。
今度は下端です。
これは腰のくびれに手を当てて、そのままくびれを押したまま手を上にあげます。すると肋骨下部に触れます(肋骨下部もまたずいぶんと下で驚くのではないでしょうか?)。
そしたら、肋骨をたどっていきましょう。
すると、胸の中心部分まで来ると、そこが胸骨の剣状突起です。
思いの外、下にあって驚くのではないでしょうか?
上端と下端を指で触って、全身を姿見で見てみましょう?
「え? 胸骨ってこんなに大きい?」って思わされます。
思ったより長いことに驚かされるのです。
思い込みって怖いなと思うかもしれません。
でも、自分の脳内の身体マップと解剖学は大きくズレていることが多いです。
そしてこのズレはかなりいろいろな問題を引き起こします。
腰痛の原因になったり、体調不良の原因になったりします。
ただ、それがずっと続くので、仕方ないかなと思い込んでしまうのです。
スタイルの良い人を見て、自分とは違うと思うのです。
でも、「情報から物理」という流れがあるので、我々の思い込みが実際の身体より優先されます。
ですので、間違った身体の地図をもとにして、筋肉に命令が出されるので、チグハグになるのです。
ですので、我々は脳にハッキングして(ホメオスタシスにハッキングして)、地図を更新します。
脳内の身体マップを更新します。
すると、身体は快適になるのです。
我々の魂は肉体という牢獄に囚われているとプラトンは言いますが、牢獄であっても、パラダイスにすることができるのです。
c.f.No,no,no,no 行こう牢獄へ!(リア王;シェイクスピア)鳥カゴの中へ、牢獄の中へ! 2014年08月08日
c.f.【募集開始!】プリズン・ブレイク!「さあ牢屋へ行こう。2人だけで籠の鳥のように歌おう(リア王 2017年05月24日
ちなみにリニューアル寺子屋に集まったのは身体の専門家ばかりです。
(いやらしい言い方ですが、それでかなり稼いでいる人々です)
そうであっても、彼らですら、より正確に自分の胸骨を意識すると、大きな変化が次々と訪れます。
知識としてはもちろん解剖学はよく知っているのですが、それを自分の身体に落とし込むというのは意外と難しいのです。
c.f.遅かれ早かれ知るであろうが、道を知ることと、実際に歩むことは全く違うものだ(マトリックス) 2019年09月18日
道を知ることと、歩むことは別なのです。
彼らに起きた変化(奇跡)は、
たとえば、、、
胸板が厚くなり、バストアップしました
呼吸が深くなり、中丹田が活性化しました。
落ち着きが生まれ、リラックスしました。
腕の可動域が広がり、楽に操作できるようになりました。
とことんやれば、もっと成果が出てきます。
胸骨という骨はおそらくは誰でも知っています。
肋骨のことも知っているでしょう。
でも、正確に知ると身体のパフォーマンスは変わります。
自分の胸骨がこんなに長いとは思わず、自分の肋骨がこんなに大きいとは思わないものです。
そして、そうやって身を持って知ることで、大きな力となるのです。
知識の増加量としてはゆるやかかもしれませんが、メリットは無限大なのです。
学べば学ぶほど、その1つ1つが力になります(自分のためだけではなく、他者へのヒーリングにも使えます)。そして学べば学ぶほど楽しくなってくいくのです。
解剖学は少し前までは命懸けで手に入れなくてはいけない秘密の教えであり、ギリシャ語で書かれた魔導書の中に隠されていた難解な呪文のようなものでした。
我々は豊かな時代にいるからこそ、その恩恵をしっかりと享受しましょう!!
明日はその延長線上にある武術の身体です。
自分の身体をどんどん変えながら、楽しく学んでいってください!!
達人のカラクリを見つつ、なぜ達人は逆にそれを説明できないのカラクリにも迫ります!
お楽しみに!!!
【まといのば講座『武術の身体〜達人のカラクリ〜』】
【日時】 9月25日(木) 19:00~21:00(21:30まで質疑応答!)(延長予定有り!)
【場所】 東京・四ツ谷の「まといのば」のセミナールーム
【受講料】 3万円
【受講資格】 「まといのば」のスクール修了生もしくはオンラインメンター受講生(修了生)
【持ち物】 筆記用具と動きやすい服装
【お申し込み】お申し込みはこちらから。