2期Yogaスクールがスタートしました。
1期ではハタという概念を中心にアライメントを重視しました。
アライメントとはYogaでは正姿勢という意味であり、正しく関節を積み上げていきます。
たとえばこのポーズはアライメントを整えて創りあげます。
もちろん直立のポーズも同様です。
直立するときには、重心を内踝(ないか)の直下に落とします。イメージとしては踵重心です。実際に踵に重心を置くわけではないのですが、足裏にうち床に触れる場所を考えると踵よりであるということです。本当に踵に重心を置いたら、おかしなことになります。構造的に踵は外側にふくらんでいますし。通したい重心線は内側です。
ですから、厳密には内踝の直下です。
内踝の直下というと、背伸びしたとき(ドゥミで立ったとき)はどうすればいいですか?という質問が来ます。
もちろん踵重心でも同様です。ドゥミ・ポアントで立ったときには踵に重心を持って来れません、と。
これは重心を足裏でしか考えられない弊害が出ています。
実際は内踝ではなく、脛骨を考えます。内踝は脛骨の骨頭でしかありません。脛骨(けいこつ)の端ということです。ですから、外に飛び出して見えているうちくるぶしを見るのではなく、弁慶の泣き所としてある大きく長い骨の脛骨を1つの棒として考えます。
ア・テール(ベタ足、足裏を床につける)のであれ、ドゥミ・ポアントで背伸びをするのであれ、ポアントで立つのであれ、同じ原理を用います。すなわち、脛骨を垂直に立てましょうということです。床がフラットであれば、床に対して垂直です。
より厳密に言えば、地球は球体ですし、わずかに曲率は存在します(まあ、我々人間は無視できるレベルですが)。星の王子さまが自分の星でバレエを踊るのであれば、星の曲率は無視できません。
まあ、余談はさておき、たとえば斜舞台であれば、床に対して垂直なのではなく、純粋に重力方向に対して平行に脛骨を立てるだけです。端的に言えば脛骨をまっすぐにするということです。
厳密さを求めるならば、地球の中心の方向へ脛骨を向けるということです(これが概念以上の意味があるとは思えませんが)。
脛骨をまっすぐにすれば、たとえば内踝と膝をまっすぐにそろえましょうという指示は不要になります。内踝と膝を脛骨の下端と上端です。
また脛骨をまっすぐにすれば、その下にあるのは距骨であり、少し離れて踵骨が来ます。決して拇指球重心にはなりようがありません。もし拇指球に重心を持ってきたければ、少し脛骨を前傾にするしかありません。
同様に大腿骨もまっすぐにして、脛骨と直立させます。骨盤も前傾もせず、後傾もせずにフラットにします。すると仙骨から順に腰椎が5つ重なり、胸椎が12個重なり、頚椎が7つ重なって脊椎を構成します。この脊椎もなるべくストレートになる方向で引き伸ばされることで、アライメントが構成されます。平たく言えば「背筋を伸ばす」ということです。
我々はある種のカタレプシーによって、身体を固定し維持しています。カタレプシーというのは硬直とも言うべきものです。意思によって筋肉をコントロールしているというよりは、カタレプシーによって自動化しています。
このカタレプシーの問題は、筋肉がきちんと鍛えられないということです。
それが明るみに出るのが、三点倒立です。
実際に身体を支えることができません。
三点倒立には3つのメリットがあります。
第一に、アライメントということを体感できるということです。身体が歪んだ状態ではなく、アライメントがきちんと整い、積み木がきちんと積み上がっていると、身体が一気に楽になります。それまで筋肉でがんばっていたのが、骨に重心線が重なると、骨自体の硬さが抗力となります。骨を使えない時は、筋肉によって抗力を無理矢理つくりだしています。ですから筋肉の負担が大きいのです。そのことが三点倒立では明確になります。アライメントの重要性が分かります。
第二に、ただ身体を逆向きとは言え支えているだけなのに、グラグラしてしまい耐えられません。すなわち圧倒的に筋肉量が不足していることを痛感します。平たく言えば腹筋が足りず、背筋も足りず、全身の筋肉量が圧倒的に足りないことを痛感します。逆に言えば、タンパク質(アミノ酸)をきちんと摂取した上で、ハタによる筋トレを積み重ねると、身体を支持するのが容易になります。
第三に、ヨーギの限界が見えます。二番目とも関連しますが、なぜヨーギやヨギーニたちが怪我が多く、身体が固く、そして失礼ながら美しいことが多くないかと言えば、その菜食主義によるものです。断食と菜食主義を繰り返し、身体を構成するアミノ酸をぎりぎりまで減らすことで、アライメント頼りの少量の筋肉でアーサナをやらざるを得なくなります。菜食は糖質過多で低タンパクです。今回、2期では赤裸々にヨーガの先生方の硬さを指摘していますが、その原因は生化学にあると考えます。身体は化学工場ですので、インプットされていないものをアウトプットすることはできません。
という、アライメント中心主義が1期のテーマでした。
2期は全く逆の立場へ移行します。
いわばコペルニクス的転回です。
そこでのキーワードは姿勢制御です。
1期がハタを中心概念に、アライメントを重視したように、2期はアーサナを中心概念に、姿勢制御を重視します。
姿勢制御とは宇宙空間で自分の姿勢を制御することです(ちなみに、僕らがいるところは重力の有無関係なく宇宙空間です)。
無重力状態でどう姿勢制御をするのかと言えば、いわゆる宇宙ゴマを使います。リアクション・ホイールですね。この宇宙空間での姿勢制御の原理と実際についての解説はこちらのJAXAの説明がわかりやすいです。子供向けです。ブログでの初出はこちらです。併せて読んでいただけると幸いです。
この原理を地上で実現したのが、こちらのかわいいCubeであるCubliです。
□の状態で放置されていると、ただの箱が床に置いてあるだけですが、◇に立ち上がるのは不思議です。角運動量保存則を理解していても、目を疑います。
□は様相論理では必然の論理演算子でしたが、◇は可能でした。
この可能の論理演算子の状態に対して、外力を加えても(指で押しても)反発して元に戻ります。まさにホメオスタシスです。
こちらの記事でも紹介しましたが、手のひらサイズではなく大きなサイズもあります。
これらは角運動量保存則を用います。
しかし、我々の身体はリアクション・ホイールではなく、アクチン繊維とミオシン繊維がすべることで全体として収縮するという筋繊維を用いています。ジャイロ効果もありませんので、すべては個々の筋肉の重力感知によって制御するしかありません。
ただ、その点を除くならば、姿勢制御という考え方は我々の身体を考える上で有効と言えます。
アライメントやセンターというのは、しばしば硬直的になりがちです。
積み上げていくスタイルですし、骨に重心線を逃すというのは、それ以外の動きを阻害します。
そしてきちんとアライメントが整わないとバランスが取れないという倒立したロジックを生み出します。
2期Yogaスクールではそのアライメント・センターという概念を捨てて、姿勢制御という概念に乗り換えます。
そうすると、我々は重力から開放されます。というか、もともと物理学に従えば、重力というのは4つの相互作用のうちで最も小さいものでした。それは身体においても同様です。確かに地球は十分に大きいのでその重力も大きくなります。近くにあるりんごから引っ張られたとしたらそれは重力のせいではなく、心理学、生理学的な力でしょう(りんごが食べたいという欲求として)。
ただ地球からとは言え、重力は小さいのです。何に比べてかと言えば、電磁気力に比べてです。
電磁気力とはまずは、物体の抗力です。床からの垂直抗力、壁からの反作用として抗力、そして筋力です。我々は重力だと思って、筋力によるものを重力にカウントしています。
そうすると、この動きのポイントが見えてきます。
姿勢制御という概念を身体と頭に入れましょう。別な世界が広がっていきます。
Yogaスクール2期もお楽しみに!
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アライメントやセンターはさておき、姿勢制御から観るヨガ
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