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Channel: 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ
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ハンナ・アーレントが正体を見抜いたイェルサレムのアイヒマンとリプニツカヤ

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どうしても観たい映画を見逃してばかりいたところに、一週間だけの再上映ということで午前中から整理券を取りに行ってまで観てきました(笑)

ハンナ・アーレントです。良い映画でした。


ハンナ・アーレントはさておき、昨日は久々にテレビを見ました。テレビというと量販店で並んでいる姿しか最近は見ることがないので、少し新鮮でした。

テレビと言っても昭和レトロに街頭テレビです。

ニコ生は街頭テレビなり、お茶の間のテレビの一体感を復活させたものと言われますが(同意しますが)、2014年にもなってもライブというのは良いものです。手のひらの中にあるテレビ(ワンセグ)も悪くは無いのですが、巨大な街頭テレビも悪くないです。



数分でしたが、1つの時代が終わりを告げたような気がしました。



それはさておき、ハンナ・アーレントです。

いわゆるナチス・ドイツのアイヒマンの裁判を巡ってのドキュメンタリータッチな映画でした。

タバコ、タバコ、タバコで禁煙学会は風立ちぬではなく、まずこの映画を批判すべきかもしれません(いやしているのかもしれません)。



全体としてはドキュメンタリー風で凡庸な映画でしたが、一点だけ感動的であったのはアイヒマンその人の裁判での姿です。アイヒマンの映像は記録映像をそのまま使っていますが、それ以外の様々なディテールのこだわりかたはすさまじいように感じました。そしてその凡庸さがまさにリアルでした。

鑑賞した下高井戸シネマはおよそ映画館という雰囲気ではない外見なのに、中はしっかりと映画館でした。今後上映される映画も、かなり面白いラインナップだったので、つい通い詰めてしまいそうです。


ハンナ・アーレントは本編を見るまでもなく予告編に必要なことは、すべてがつまっています。

ただそれでもなお映画を観たいという方は見に行く価値は十分にあると思います。


ちなみに、アイヒマンの裁判の400時間以上にも及ぶと言われる映像記録は現存する限りが、2011年4月にYoutubeが公開されています(良い時代になったと思います)。

その1本目がこちら。


*11分40秒あたりでアイヒマンが入廷します。

ちなみにこのアーレントの「イェルサレムのアイヒマン」に触発されて、本当に悪は凡庸なのかを検証したのがおなじみのスタンフォード大実験です。同様のミルグラム実験も紹介されています。






こちらも実験の感じはフィクションのほうが伝わりやすい気がします。スタンフォード大実験を映画化したドイツの「es」という映画のトレーラーがあれば良いのですが、見つからないので、esのリメイク版であるexperimentです。




と書いてきて、このブログ記事も相当な凡庸さを醸し出しています。

凡庸さは悪なのでしょうか?

いや、アーレントは凡庸さが悪であると言ったのではなく、思考停止について語っています。思考停止することで人間は人間性を失うと。結論ありきで「思考したふり」をするのではなく、どのような解が出力されたとしても、引き受ける覚悟で演算(思考)すべきなのでしょう。人間として生きるには。そして本当に深みがあるのは、悪ではなく善のみであり、悪には深みが無いと。だからこそ悪は凡庸であると(凡庸さが悪なのではなく)。

ふと、ここで我々は「小人閑居(しょうじんかんきょ)して不善を為す」やゲーテのこんな言葉を思い出します。

(引用開始)
ねえ、きみ。それにしても、こんどの小さな事件でもわかったんだが、世の中のいざこざは、悪意や策謀から起こるというよりは、むしろ誤解や怠慢から起こるのではないだろうか。少なくとも、悪意や策謀なんて場合は、めったにないのだ。
(ゲーテ「若きウェルテルの悩み」井上正蔵訳)
(引用終了)

屋上屋を架していますが、もう1つだけ。

殺す側が凡庸で小心者の小役人であり、唯々諾々と上からの命令に従うだけで驚くべき残酷さを示したのに対して、助ける側はどうだったのでしょう。

ユダヤ人を助けたシンドラーの妻が夫を評してこう言います。

戦前のオスカーは何らおどろくべきことをしなかったし、それ以後にしても、とくに人よ り優れたところのある人間ではなかった。それゆえ、世界が荒れ狂った一九三九年から四五年までの短い期間に、隠れた能力をいやおうなく引っ張り出してくれる人々に出会った のは、彼にとって幸運なことだった。明敏な彼女はそう述べている。
(シンドラーのリスト トマス・キニーリー 幾野宏訳 pp.602-603)

映画にもなりましたが、原作はオスカー・シンドラーの飄々とした様が描かれています。まさに小役人と対照的で、ファインマンのようです。深刻で厳しい時代の中にあって、あくまでもにこやかに軽やかにすり抜けていきます。

飄々としたプレイボーイのシンドラーが、我々の知るシンドラーになった瞬間がユダヤ人に対する虐殺を見たときのことでした。

そのときに虐殺の中を生き延びた赤い服の少女を、あのリプちゃんが演じています。もちろんシンドラーのリストのテーマに合わせて。

それだけの歴史と物語を背負って踊る15歳というのは凡庸ではあり得ません。




我々に足りないのは才能でも、努力でもなく、ささやかな勇気なのではないかと考えさせられました。

【書籍紹介】
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*もうすでにDVDになっています!

*あ、それで、今回の映画のパンフレットはかなり邦訳のシナリオが掲載されています。素敵なパンフレットだったので2部余計に買ってきました。欲しい方はメール下さい(先着2名です(^^))


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