天海祐希さんとアダム・クーパーによる「レイディマクベス」を観たあとに入った本屋さんでウォルター・アイザックソンの「イーロン・マスク」を見つけました。
(ご承知のようにウォルター・アイザックソンと言えば、スティーブ・ジョブズの評伝を書いた人です。
いやー仕事をする人は次々と良い仕事をしますね。
TENETのあとにオッペンハイマーを撮るようなもので。密度が圧倒的に濃い)
アダム・クーパーと言えば、男性のSwan Lakeで有名になりました(いや、熊川さんと同時期のロイヤル・バレエのプリンシパルなので、十分に有名なのですが)。
僕にとっては非常に印象深い作品。舞台でアダム・クーパーの白鳥を観れたときはとても感動しました。もう20年近く前。
そのウォルター・アイザックソンの「イーロン・マスク」で面白い一節がありました。
スティーブ・ジョブズの評伝を書いたとき、彼のパートナー、スティーブ・ウォズニアックに言われたことがある。あんなにいじわるでなくてもいいんじゃないか、あんなに残酷でなくてもいいんじゃないか、あんなに騒動ばかりを求めなくてもいいんじゃないか、ジョブズはどうしてああなんだろう、と。本が書き上がるころにまた会い、これを本人に問い返したところ、自分ならもっと思いやりのある経営者になっただろうと言われた。社員を家族のように遇し、あっさりクビにしたりはしなかっただろう、と。彼はそこでちょっと口をつぐんでから付け加えた。
「でもぼくがアップルを経営していたら、マッキントッシュは作れなかっただろうね」
だから、イーロン・マスクについてはこう問うべきだろう。もっと柔和であっても、彼は、我々を火星に連れていこうとしたり、我々に電気自動車という未来をもたらしたりしただろうか?(ウォルター・アイザックソン『イーロン・マスク』上巻)
人の良さそうな、ウォズニアックが巨体をゆらしながら、
あんなにいじわるでなくてもいいんじゃないか、あんなに残酷でなくてもいいんじゃないか、あんなに騒動ばかりを求めなくてもいいんじゃないか、ジョブズはどうしてああなんだろう
と言うのは容易に想像がつきます。
(ちなみにその2人が仲良く並んで買いに来たのが若き日のDr.Tのソフトウェアでした)
でも、一方でウォズニアックはこうも言っています。
「でもぼくがアップルを経営していたら、マッキントッシュは作れなかっただろうね」
これを聞いて思い出すのは、アインシュタインです。
c.f.「夫はどうして成功しなかったのでしょうか?」「彼は良い人だからですよ」とアインシュタインは答えた 2018年02月09日
私達はどんな未来を思い描くのでしょうか?
水たまりで遊んで終わるのか、まだ見ぬ大海に挑むのか?
井戸の中から見ると大海は圧倒的に広く、圧倒的に楽しく、圧倒的に強烈です。
でも、井戸の中でもくるみの中でも世界だと信じる程度には大きく、それはそれで尊重します!
O God, I could be bounded in a nutshell and count myself a king of infinite space, were it not that I have bad dreams.(シェイクスピア『ハムレット』)
c.f.【募集開始】「過去には中毒性がある」(『レミニセンス』)〜情報と物理のはざま、リアルと夢の懸け橋 2021年09月22日
【書籍紹介】
ウォルター・アイザックソン!