いま、僕らの立ち位置としては、「まといのば」が仮に筋骨格系と呼んでいるモデルにいます。これが旧モデルです。この旧モデルに僕らは立っています。その自覚からスタートしましょう。
そのモデルとは、すなわち骨があり、そこに筋肉が付着し、筋肉が骨を動かして身体操作をしているというモデルです。建築モデルとも言いました。
このモデルがあまりに当たり前すぎており、そしてシンプルなシステムのため僕らは疑うことすらしません。疑ってみようとすることすら頭に浮かびません。
そして、一生懸命に起始停止と呼ばれる骨と筋肉の付着部を覚え、神経支配を覚えます。そして筋肉を単純な(そして不細工な)テコの原理で理解します。
(もちろんこのプロセスは将来においても重要でしょう。なぜなら現実として付着しているからです。しかし、もっと付着しているのはべったりと筋肉を覆っている筋膜です。
ですから、将来も同じように覚えたとしても、後ろに走る考え方が全く変わるのです)
かつては古い考え方に基づいて、解剖においても一目散に筋肉を露出させることに必死でした(これはかつての解剖です。今はそんなことはしていません)。
それまでは、皮膚、浅筋膜、深筋膜などをいかにきれいに取り去り、筋外膜に覆われた筋を露出させるかに力が注がれてきました。また、どの筋が骨を介してどのような作用をするかに関しての研究が主流でした。(『人体の張力ネットワーク 膜・筋膜』)
3−40年前までは、筋外膜に覆われた筋肉をいかに露出させるかに力が注がれていたのです。そして付着部を見て、どの筋が骨を介してどのような作用をするかに関して考えてきたのです。実際に筋肉を引っ張って、骨に張力を与えたりして、動かしたりしました。
しかし、現代の解剖学はこう宣言します。
“どの筋群”がある動きに関与しているかという筋骨格系の教科書で述べられているような単純な質問は、もはや時代遅れである。この誤解がどれほど一般的であろうとも、筋群は機能的単位ではない。(p.xviii 序論『人体の張力ネットワーク 膜・筋膜』)
「筋群は機能的単位ではない」のです。
このご宣託を我々は真剣に取り上げる必要があります。
アナトミー・トレインのトーマス・マイヤーはこの新しい解剖学を認めた上で、「これまでの常識が覆されることになるが、私は今の世代であることをうれしく思う。」と潔く敗北宣言をします。
Guimberteauのイメージと研究を通じ、身体全体で連続した生体力学的反応が、これまでの考えよりはるかに流動的で、カオス的で、自己組織的なのがわかる。将来の世代は、これを「当たり前」と言い、我々の力学的な旧モデルを風変わりなものとして退け、Guimberteauの先駆的洞察を土台としていくだろう。これまでの常識が覆されることになるが、私は今の世代であることをうれしく思う。Guimberteau医師が彼自身で確かめる旅から持ち帰った印象的で重要なイメージにより、ショックを受けて、恐縮し、喜び、そして変わることができるのだから。(トーマス・マイヤー:『人の生きた筋膜の構造』より)
将来の世代がこの新しい考え方を「当たり前」というのは、パラダイムシフトゆえです。
そして古い教科書を読解することすら、彼らは困難でしょう。
では、新しい解剖学とは何なのでしょう。
「まといのば」はそこにAnatomy2.0と名付けていますし、その主題がFascia(ファシャ:筋膜)であるとも言い続けていますが、その本質はFasciaの動的・自律的・分散的・協調的な働きにあります(多分)。
しかし、生体においては、筋群の最大限の力が骨格への腱を経て直接的に伝達することは少なく、筋群の作用は、むしろ筋膜シート上へと、収縮力あるいは張力の大部分を伝えることがわかってきました。また、これらのシートは、共同筋ならびに拮抗筋にこれらの力を伝達し、それぞれの関節だけでなく、離れたいくつかの関節にも影響をおよぼすことも明らかになってきたのです。さらに、筋膜の剛性と弾性が、人体の多くの動的運動において重要な役割を果たすことも示されてきました。(『人体の張力ネットワーク 膜・筋膜』)
これまでただのラッピングだと思われていた存在が突如として脚光を浴び、逆に筋肉は筋膜に付き従うのです。
「筋群の作用は、むしろ筋膜シート上へと、収縮力あるいは張力の大部分を伝える」のです。
この感触がきわめて大事です。
ウェイトを使うときもそれは筋肉というより筋膜に効かせるイメージなのです。
身体操作するときもまず筋膜です(腹横筋がほぼシートであることを思い出し、腰の重要な部分が胸腰筋膜と呼ばれる筋膜のミルフィーユで構成されていることなども思い出します)。
そしてその筋膜の働きも単調ではなく、むしろ「離れたいくつかの関節にも影響をおよぼす」のです。不思議な遠隔作用ですね(いやいや張力でつながっていますが)。
その上で運動に対する理解も変わります。
筋膜の剛性と弾性が、人体の多くの動的運動において重要な役割を果たすことも示されてきました。
これは重要な考え方です。
運動において、筋膜の剛性と弾性が重要な役割を果たすのです。
ちなみにかつてRayZapというRay式筋肉トレーニングのことを筋トレではなく、筋膜トレーニングだと言っていたのはここに由来します。
拙速なのでしょうが、僕らは科学者ではなく、実践家ですので、急ぎましょう。
この筋膜の理解に付け加えて、ホルモン、CBD、神経系、常在菌叢、そして何よりもGoalの存在が大きいと思っています。Goalがなければ何も無いのです。
それを統合した形でアナトミートレーニングをどんどん実装していきたいと思います!
いろいろと考えても、これ(アナトレ)はセミナーではあまりに短く、スクールでも期間が短すぎます(2日しかないので)。ですので、BootCampで行います。アナトレBootCampですね。
施術することも結果的にできるでしょうが、まずは自分の身体と向き合いましょう。自分に期待してください。ただ、BootCamp内ではお互いに施術します。というのも、他者のヒーリングによってしか行けない地平というのが存在するからです。ここでも自力はダメで、他力しか無いのです。それが相当に非力な他力だったとしてもです。
半年で見たこともないような景色を見せます!
*かなり強烈だった「浮身・側軸」セミナー(2022年11月開催)がようやく高画質版に切り替えです!(明日配信)
*ちなみに下にも引用を出しますが、腱や靭帯はFasciaであると正式に認められています。浅筋膜も筋内膜も同様です。
2007年10月にHarvard Medical Schoolで開催された第1回国際筋膜研究学術大会(The 1st International Fascia Research Congress)において、「Fascia」は、「固有の膜ともよばれている高密度平面組織シート(中隔、関節包、腱膜、臓器包、支帯)だけでなく、靭帯と腱の形でのこのネットワークの局所高密度化したものも含む。そのうえ、それは浅筋膜または筋内の最奥の筋内膜のようなより柔らかい膠原線維性結合組織を含む」と定義づけられました。
【本日開催】
本日19時開演です!!
コンテンポラリーダンスというジャンルの不可思議な身体操作をホメオスタシス同調することで、自分の新たなポテンシャルに気付きましょう!!
【書籍紹介】
(引用開始)
たとえば、生体においてはテキストに示されているように、筋から腱を通じて骨へ力が直接に伝わることはほとんどない。
“どの筋群”がある動きに関与しているかという筋骨格系の教科書で述べられているような単純な質問は、もはや時代遅れである。この誤解がどれほど一般的であろうとも、筋群は機能的単位ではない。(p.xviii 序論『人体の張力ネットワーク 膜・筋膜』)(引用終了)
(引用開始)
Fascia(膜・筋膜)は、身体全体にわたる張力ネットワークを形成し、すべての器官、あらゆる筋・神経・内蔵などを覆って連結しています。筋膜に関する研究はここ30~40年ほどで大きく発展しました。それまでは、皮膚、浅筋膜、深筋膜などをいかにきれいに取り去り、筋外膜に覆われた筋を露出させるかに力が注がれてきました。また、どの筋が骨を介してどのような作用をするかに関しての研究が主流でした。
しかし、生体においては、筋群の最大限の力が骨格への腱を経て直接的に伝達することは少なく、筋群の作用は、むしろ筋膜シート上へと、収縮力あるいは張力の大部分を伝えることがわかってきました。また、これらのシートは、共同筋ならびに拮抗筋にこれらの力を伝達し、それぞれの関節だけでなく、離れたいくつかの関節にも 影響をおよぼすことも明らかになってきたのです。さらに、筋膜の剛性と弾性が、人体の多くの動的運動において重要な役割を果たすことも示されてきました。これらの事実は、新しい画像診断や研究手法の開発によって飛躍的に明らかになってきました。
2007年10月にHarvard Medical Schoolで開催された第1回国際筋膜研究学術大会(The 1st International Fascia Research Congress)において、「Fascia」は、「固有の膜ともよばれている高密度平面組織シート(中隔、関節包、腱膜、臓器包、支帯)だけでなく、靭帯と腱の形でのこのネットワークの局所高密度化したものも含む。そのうえ、それは浅筋膜または筋内の最奥の筋内膜のようなより柔らかい膠原線維性結合組織を含む」と定義づけられました。(監訳者の序文『人体の張力ネットワーク 膜・筋膜』)(引用終了)
Guimberteauのイメージと研究を通じ、身体全体で連続した生体力学的反応が、これまでの考えよりはるかに流動的で、カオス的で、自己組織的なのがわかる。将来の世代は、これを「当たり前」と言い、我々の力学的な旧モデルを風変わりなものとして退け、Guimberteauの先駆的洞察を土台としていくだろう。これまでの常識が覆されることになるが、私は今の世代であることをうれしく思う。Guimberteau医師が彼自身で確かめる旅から持ち帰った印象的で重要なイメージにより、ショックを受けて、恐縮し、喜び、そして変わることができるのだから。(トーマス・マイヤー:『人の生きた筋膜の構造』より)