キプチョゲの悲劇というか、悲運とは、ルー・タイスに出会いコーチングを受け、自らWant toに従って行動することを決めたのに、、、
トラックの色も知らないお偉方が、我々からオリンピック出場の機会を奪ってしまった。怖ろしいことだ。 2021年08月02日
お偉方によって、無残な選択がなされました。
金メダルを取りたいと望んだモントリオールオリンピックにアフリカ諸国がボイコットしたのです。彼のケニアもそこに含まれます。
原因はアパルトヘイトでした。
ニュージーランドのラグビーチームが人種差別政策(アパルトヘイト)を続けていた南アフリカ共和国へ遠征したことを巡り、IOCがニュージーランドの参加を禁止しなかったことを受けて、、、ボイコットしたそうです。
いやいや、抗議とボイコットの間に何か策は無かったのでしょうか?
その間は真空だったのでしょうか?
0と1の間には無限の実数がありますが、解像度が悪いと見えてきません。0か1かになってしまいます。
そう言えば最近も、世界でスポーツが再開され、有観客でマスク無しでガンガン試合もされているのに、インフォデミックでは大騒ぎしながらも、大したパンデミックを起こさなかった国が国際的な運動会(競技会)を無観客にしたらしいです(もっとも非協力的だったのは病院自体だったのに、当のサボタージュ集団が率先して崩壊と言っているそうで、税金が注ぎ込まれているにも関わらず、やりたい放題です)。
パンが無ければケーキを食べればいいのかもしれませんが、自分たちがパーティーをするなら、変な縛りを解いてからにして欲しいと心から思います。
(未来の読者のために言えば、この時期に、政治パーティーだけではなく、密会だけではなく、オリンピックのためのパーティーも開催されています。参加者は5名以下、、、、ではなく40名ほど。パーティーの開催は大賛成なので、時短営業やらアルコール禁止やらを中止して欲しいです)
東京オリンピックの開幕が5日後に迫る中、大会組織委員会の主催したIOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長などを招いた歓迎会が18日夜、東京の迎賓館で開かれました。
彼の国では、なにかロックダウン的なこともしているそうですが、、、。
c.f.だから、読者はすこしも判断を乱されずに、私の説明の根拠となった事実の適否を吟味することができる。 2020年04月30日
まあこの戒厳令下で、コンピューターによる新しい言論統制が敷かれている中ですから、「物言えば唇寒し秋の風」です。沈黙が金なのでしょう。
いつでもお偉方のすることは意味不明です。まあ本人たちも何も分かっていないのだと思います。選挙も近いですしね。
しかし、キプチョゲにとっても、同じケニアの陸上競技マイク・ボイトにとっても、政治的なボイコットは悲劇でした。アパルトヘイトの問題は問題として、競技は競技として区別できなかったのかな、と思います。悲惨なことです。
そのことについて、ルー・タイスはしっかりと書いていたのですが、僕らは見逃してきました。
キプチョゲがなぜルー・タイスのコーチングを受け、大きな壁を乗り越えたにも関わらず、モントリオールオリンピックで活躍できなかったのか。
それは繰り返しますが、ケニア政府がボイコットを決めたからです。
優秀で努力を積み重ねてきたアスリートたちは、オリンピックのスタート地点にすら立てなかったのです。その機会を永遠に奪われたのです。
Remember that his country pulled out of the Montreal Olympic games.
(彼の国がモントリオールオリンピックを辞退したことを思い出してください。)DeepL訳
ルー・タイスの言葉です。
ルー・タイスの著書『Smart Talk』の一文です。
しかし、、、、その邦訳である「アファメーション」にはそれが訳出されていません。
どこに書いてあるかを(訳すべきだったかを)見てみましょう。
ルー・タイスが痛みから逃れたいのであれば、走るのを止めたらどうかとアドバイスした後です。
キプチョゲは怒って答えます。
「僕が何のために走っていると思っているんですか?」
He said, "What do you think I run for?”
「まったくわからないな。 いいかい? 私が走らないことは知っているだろう? 私だって、あの痛みは我慢できないさ」
I said, "I haven't got the slightest idea. Look at me. Do you think I run? I can't stand the pain myself.”
「僕が走るのは、モントリオール・オリンピックで勝てたら、牛がもらえるからです。僕の国では、それでずいぶん金持ちになれるんです。家族は、僕をアメリカの大学に送るために自分たちの生活を犠牲にしてきました。だから僕は、家族のためにも国のためにも、金メダルをとりたいんです」
He said, “I run because if I win the Olympics in Montreal, I’ll win a cow. They’ll give me a cow. And in my country that will make me rich.” He told me, “My family sacrificed to send me to the university in the United States. Now, I want to win the gold medal for my family and my country.” Remember that his country pulled out of the Montreal Olympic games.
このラストに、スッと挿入されているのが、深刻な死刑宣告のような冷たさをもった一文でした(この重要すぎる一節の存在を恥ずかしながら、目の悪い僕は読み飛ばしており、受講生からの指摘で目からウロコが落ちました)。
この文章もまた非常に美しい構造の中にあります。
Now, I want to win the gold medal for my family and my country.” Remember that his country pulled out of the Montreal Olympic games.
「僕は家族と国家のために金メダルを取りたいんだ!!」
と魂の叫びの直後に
「思い出してください。彼の国家がモントリオールを辞退したいことを」と続くこの何というか、残酷なまでに現実的な描写、もしくは縁起のネットワーク。
ルー・タイスの心象風景が見えます。
ただその小さなつぶやきは、次のルー・タイス自身により怒鳴り声によりかき消されます。その話はまたの機会に。
世界は不条理です。
権力者はその力を持つのにふさわしくない人が選ばれる罰ゲームのようです。
僕らはギリシャの神々に翻弄される人間のような気分で、運命に抗(あらが)い、そして受け入れましょう!!