チャイティンが以前、面白いことを書いていました。
チャイティンというのは数学者ですね。ゲーデルの不完全性定理を数学全般に渡って証明した天才です。
チャイティンいわく、ゲーデルは若い頃はプレイボーイだったし、ダンスクラブで奥さんを捕まえるくらいだったんだよ、と。
アインシュタインもマッド・サイエンティストみたいに思われているけど、めっちゃイケメンのプレイボーイだったんだよ、と。
*イケメンすぎるアインシュタイン
*あまりに有名な(本人も好きだったという)舌を出している写真より、若い頃の写真が好きです。
でも彼らは研究に人生を捧げて、そしてゆったりと狂気に陥っていきます。
たしかにアインシュタインは、言葉を覚えるのが遅く、高校でも、数学ができず大学を卒業しても、教授に嫌われて就職できず、特許局にようやく引っかかった人でした。
ニュートンがペストの流行で、せっかくケンブリッジに就職したものの、2年も田舎に隠遁したのと似ています。
僕らで言えば、ネットから切り離されて、離島に隔離されるようなものです。
最先端の論文から切り離されたことで、彼は深く考える以外のことができませんでした。
*ニュートンは「プラトンは私の友、アリストテレスは私の友、しかし最大の友は真理である」、とノートに書き付けて、スコラ哲学から決別します。
(これはもちろんアリストテレスの言葉に対するオマージュです。アリストテレスは師匠のプラトンに対して、プラトンは私の友、しかし最大の友は真理である、と言いました)
しかし、これを逆に読めば、彼には友達がいなかったのです。
実際に孤高の中で生涯を終えました。彼がケンブリッジを去るとき、誰も哀しまなかったと言います。送別会もなしです。なぜなら、いてもいなくても同じであるくらいに、誰とも交流しなかったから、と。
*これをもじって言えば、狂気は真の友なのです。
アインシュタインの特許局もニュートンの隠遁生活と同じです。
あまりに暇すぎるし、バカではないユダヤ系ドイツは人の青年はサクッと仕事が終わったら、閉館間近の図書館へ行って、ダッシュで論文を読もうとしていました。特許局の仕事は彼には易しすぎて、午前中に仕事が終われば、あとは考える時間となります。
アインシュタインの特許局、そしてニュートンの隠遁生活は似ています。
そして、彼らの業績のほとんどはそこに集中しています。
我々が評価する業績のほとんどは数年間に集中しているのです。
べき乗則という視点、もしくは偏るという視点は必要です。
我々の馴染み深い言い方で言えば、ブラック・スワン(ナシーム・ニコラス・タレブ)ということです。
たとえば、肥満も同様なようです。
我々は年に0.6kgずつ増えるそうですが、それはうっすらと平均して増えるわけではなく、実は年末年始に偏っています。そこで増えて、年末年始というハレの時間(トランスの時期)を過ぎても、それを調整せずに通常の生活に入るから、太るのです。ハレの時間のあとに、ケの時間ではないですが、ラマダンを入れれば、10年で6kg太ることはないのです。20年で12kgです。
ホットスポットがあって、そこに集中するのです。しかし我々は平均的に変化すると考え、そしてそれを漠然とした理由に求めようとします。
お金を稼ぐこともそうですし、何かを学ぶこともそうです。
それをやんわりと言ったのが、パレートの法則です。パレートの法則はやんわりと感じますが、あれは実際はフラクタル構造です。
たとえば会社の構成員の2割が、その会社の売上の8割を稼ぐとします。
トップ20%が会社の売上のほとんどを稼ぎ、残りの80%が寄り集まっても、彼らの4分の1しか稼げていません。
ただこれが無限に続くイメージです。
トップ20%のうち、その5人に1人がその稼ぎの8割を稼ぎます!
最小単位は一名ですので、そこに至るまでこれが繰り返されます。
たとえば、100名の村ならぬ会社だとしたら、トップ20名が800万稼ぐとすると、そのうちトップ4名が640万稼ぐということです。もしかしたら1名が500万近くを稼いでいるのかもしれません。とすると、会社の稼ぎの半分を1人が稼いでいるのかもしれません。
富の偏在もこれで説明できます(もちろんパレートの法則というざっくりした法則が正しいという前提での議論ですが)。
そう考えると、日本の会社というのはきわめて社会主義的で、富の分配ができています(逆にアメリカのような方が実情に即しているのかもしれません)。
チャンスと言われているものもブラック・スワンで、そのチャンスに全財産を注げなければ、成長の機会は存在しないのです(そして猛烈に偏るのです)。
ここぞというところに全てを注ぐのです(お金だけではなく、努力も献身も時間もエネルギーも全てです)。そしてそのチャンスのゴールデンタイムが過ぎたら、またダラダラとしていて良いのです。
ちなみに、この話を「まといのば」のメンバーにしたら、「なぜそんなことで成功するのですか?」と聞かれました。おそらく「ダラダラ」のイメージが違うのです。ダラダラしているときというのは、傍から見ると、ストイックにトレーニングしているときなのです。身体を鍛え、頭を鍛え、アウトプットもきっちりしているのです。ただ彼らはそれがルーティンなので、頑張っていると思っていないだけです。だから主観的に「ダラダラ」しているということなのです。
ルーティンになっていれば、苦痛に耐性がつきます。慣れてしまうのです。
そうやって気力体力を温存していて、ここぞというときに猛烈に集中して、思いっきり成功の果実を頬張るのです。べったりと収穫するのではなく、収穫のタイミングは決まっているのです。
ただし、本当に何事かを成し遂げたいと思ったら、成功の果実を収穫したいと思ったら、そして成功したいと思ったら、その最小単位(チャイティンは一量子単位と言いました)は一生です。
そういう人はどんな生活をしているのでしょう、、、、
そうCrazyなのです。
狂気です。
イケメンのプレイボーイの2人は発狂寸前の廃人になりました。
ゲーデルは文字通り発狂しました。
ニジンスキーも短い時間、伝説的な踊りをしたあと、生涯を精神病院で過ごしました。
天才ロダンの愛人カミーユ・クローデルは30年以上を精神病院で過ごし、そこで死んでいます。
*現代バレエの代名詞とも言えるニジンスキー(『牧神の午後』)
跳躍すると、しばらく降りてこなかったとまで言われています。
*ロダンの愛人にして、天才彫刻家のカミーユ・クローデル
*『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』
*「桐島、湯切りやめるってよ」「美は作業の中に宿る」(ロダン)「AI、もう人間いらないってよ」 2017年12月08日
*学校は時間の無駄、、、アカデミズムの呪縛は、ミケランジェロの作品を見た時に消え失せた(ロダン) 2017年12月22日
バーナード・ショーはこう言ったそうです。
「真の芸術家は妻を飢えさせ、子どもを裸足でいさせ、七〇になる母親を働かせて生活を工面させ、自分の芸術以外のことは何もしない」と(以下、引用は「残酷すぎる成功法則」より)
周りを犠牲にするのです。
自分の人生だけではなく、周りを巻き込みます。
テッド・ウィリアムズという大リーガー(現時点で最後の規定4割打者)は完璧主義者として知られています。
どれくらい完璧主義者かと言えば、
*テッド・ウィリアムズ(大リーガー、4割打者)
(引用開始)
あるときウィリアムズは怒りをたぎらせ、自分に悪態をつきながらベンチに戻ってきた。試合直後のバッティングに納得がいかず、どうにも気がおさまらない。(引用終了)
こういうことは誰にでもあるはずです。
失敗は誰にもあり、それで怒り狂うことも。
しかし、、、、彼はその試合でホームランを打ち、そしてそのホームランで試合に買っているのです。チームメイトが喜ぶ中、彼は地団駄を踏んでいました。もっとうまく打てたはずだ、と。
チームメイトがどうしていつも怒っているのかと聞いたときに、彼はこう答えたそうです。
「どうしてかって? 僕は毎日上出来じゃないとダメだから。君はその必要ないだろうけど」と(笑)
気持ちは良くわかりますwww
そして、2つ目のセンテンスが余計ですね〜
言いたくなる気持ちはわかります。
「君もそうだろう」とか言っておけば、社会的知性があるのですが、そこにコストを割く気が彼らはしないのです(僕らは割きましょうw)。
テッドの三番目の奥様は彼のことをこう言っています。
「怒りは彼の親友だった。なぜなら怒りが、彼にとっての救いになることを達成する力を与えてくれたから」と。
怒りの矛先と犠牲になったであろう奥様の言葉は重いです。
同じく奥様のドロレスに言わせると「テッドの怒りの源は、完璧主義的な野心を満たされない自分の無能さだった。自分自身の期待に応えられないと、それがどんなに無害な活動であっても、彼はキレた」。
テッドのような存在にとって、自分ではどうしようもない存在が家族です。
家族に対しては、征服することも、コントロールもできないので、怒りだけになります。
しかし、テッドが可愛く見えるくらいに、アインシュタインは鬼畜ですw
アインシュタインは奥様に対してこんなひどいことを言っています。
これは怒りに任せて言っている言葉ではなく、通常運転の言葉です。
「私は妻を、解雇できない雇い人として扱っている」(アインシュタイン)
以下はさらっと読んでください。
アインシュタインの性格がよくわかります。
ただし、一言だけ言いたいのは、、、、
アインシュタインのことは嫌いになっても、相対性理論のことは嫌いにならないでください
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アインシュタインは、結婚生活が破綻しはじめたときに、奥様に契約書を提示します。もし婚姻関係を続けるならば、いかの条件に同意せよ、と。
(引用開始)
B 社会的理由から必要となる場合をのぞき、あなたは私との個人的関係をいっさい放棄する。
とくにあなたは以下の事項を放棄する
①家で一緒に過ごすこと
②一緒に外出、または旅行に行くこと
C 私との関係において、あなたは以下の事項に従う
①私にいっさいの親しい関係を期待してはならない。私にあらゆる非難をしてはならない
②私が要求した場合、話しかけてはならない
③私が要求した場合、抗議をせずに、寝室および書斎から即刻立ち去ること
D あなたは子どもたちの前で、言葉や行いを通じて私を軽く扱わないことを約束する
(引用終了)
ちなみにAは家事は完璧にせよという項目です。
実際にこの契約以上にアインシュタインは鬼畜のようです。
狂気というのは、具体的には悲惨なものです。
アインシュタインの次男は精神疾患で自殺を図り、精神病院で余生を過ごし、アインシュタインはその死まで会うことはありませんでした。
長男はこう言っています。
「おそらく、父が唯一断念した研究課題はこの私だろう」と。
Crazy oneになるということは、本当にCrazyになるということです。
(ジョブズも娘のLisaに対して冷淡でした)
天才になろうなどと思わなくても、何事かを成し遂げようとしたら、尋常ではない狂気が求められます。
【書籍紹介】
チャイティンのどの著書で紹介されていたのか忘れました。
ですので、一応適当に並べておきます。
というか、早くKindleに全てなってほしいです(いまのところダーウィン本だけ)。
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