映画「グレイテストショーマン」の中で印象的なシーンがありました。
主人公にヒロインが迫るシーンですね。
オペラ歌手のジェニー・リンドがヒュー・ジャックマン扮するPTバーナムに迫るシーンがあります。
ジェニー・リンドは実在の人物で(この物語自体が実話ベースです)、猛烈な喝采を浴びるプリマドンナです。
その彼女が、「私たちは同じ種類の人間だわ」と迫ります。
そして、
「どんな喝采でもこの心の穴を埋めるには足りないわ。あなたも同じでしょ?」
と言います。
というか、というようなシーンだったかと思います。
記憶があやふやです。
というのも、時差ボケをしないためと魅力的な映画が多すぎて12時間のフライトを全部映画に費やしてしまったからです。ほぼ寝ながら観ていました(ダメじゃん)。
個人的な話しで恐縮ですが、見逃した映画を観れたのは僥倖でした。
*アイルランド人の友人が熱烈に薦めてくれました。もともと見ようと思っていたのですが、最近は映画を観る余裕が失われていて、、、良い映画でした。リアルな手触りの。
*なんで映画館で見なかったのだろうという作品。でもほとんど寝ていた気が。3回くらい繰り返してしまいました。
前述しましたが、グレイテストショーマンはいわゆるミュージカルらしいミュージカルですが(音楽はララランドのコンビ)、実話ベースです。
ですので、PTバーナムはもちろんジェニー・リンドも実在の人物です。
アメリカツアーももちろん史実です!
*ジェニー・リンド
*ショパンやメンデルスゾーンに愛された歌姫です。
20代にして圧倒的な地位を確立し、ヨーロッパツアーを成功させ、女王陛下の前でも歌い(そしてそこでPTバーナムに出会い、アメリカツアーに誘われ)、どこでも圧倒的な喝采を受けても、彼女は満たされないと言います。
PTバーナムはテイラー(仕立て屋)の息子ですが、ジェニー・リンドは婚外子です。
バーナムのサーカスの登場人物たちと同じく蔑まれる境遇です(バーナムは娘達のために、自分の経歴のロンダリングのためにリンドを使うのがまた皮肉ですが。成り上がりものの娘として、娘達は学校でいじめられています)。
婚外子としての原風景がどれだけ喝采をあびても、どれだけ評価されても心の穴を埋められないというのは、ジェニー・リンドの理解です。
僕らはその心の穴(欠落:want)こそが才能の源泉だと思います。才能の源泉とはブラックホールなのです。そこにエネルギーも情熱も時間も献身も注ぐ必要があります。
そして小さな成功では満たされないものです(大きな成功であっても)。
では、いつ満たされる瞬間があるのでしょう。
永遠に満たされないのであれば、さすがに心がすり減り、枯渇します。
非常に暴力的に言えば、永遠に満たされないから、永遠に努力するのだ、などと言えますが、それは実体に即していませんし、それほど人間も強くありません。
実は些細なしかし明確な喜びがあるのです(些細というのは他人から見たらであって、本人にとっては大きな喜びです)。
それが喝采以上に心を満たすのです。
その瞬間が降ってくるからこそ、彼らはやめられないのです。
世の中には二種類の人間がいて、そのような渇望、乾きをいつも持っている人と、持っていない人です。という言い方は僕は嫌いです。端的に全員が全員、内なる乾きは持っているのだと思います。
それにフタをするか、気づかないふりをするか、本当に忘れてしまうかのいずれかです。
そしてある少数者がそれに直面させられるのです。
ですからこの問いかけはバーナムに向けたものであり、万人に向けられたものだと思います。
*喝采というとちあきなおみさんしか浮かびません。
*親が死んでも舞台には立てと言われますよね〜(Show must go onですね)。まあ死に目には舞台をキャンセルしても良いと思いますけど。恋人が死んだら、恋の歌を封印しても。詩篇のように。