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Channel: 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ
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膨れ上がった物は中が空である〜在るのは無いものだけ(マクベス)〜名とは咒

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存在しないものを対象として考えることが、抽象世界の飛躍的発展をもたらしました。


By LZNQBD - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link


存在しないものを対象として考えるとは、矛盾しているようですが、陰陽道の文脈で言えば「名指し」によって可能になります。

夢枕獏さんは陰陽師安倍晴明に「咒とは、名ではないか」と言わせていますが、まさに「名指し」や「命名」は魔術的な力を持ちます。



旧約聖書においても、創造は神の業(わざ)ですが、命名は人の業(わざ)です。

人がすべて生き物に与える名は、その名となるのであった(創世記 2:19)

名指すこと(文字通りネーミングすること)で、我々は世界を分節化します。

すなわち名指しとは部分関数なのです。もしくは概念とは部分関数と言ったほうが良いかもしれません。

部分関数とは、世界を2つ(かそれ以上)に分ける関数のことです。

たとえば、自然数という世界にeven(n)という偶数を指し示す関数を導入すると、自然数世界は偶数とそれ以外(奇数)に分けられます。
偶数を選ぶ関数は、逆側で奇数を選びます。

犬という概念は、犬という部分関数です。
世界を犬と犬以外に分ける関数ということです(まあ、その関数の端境に犬でありかつ犬でないようなゲーデル犬が潜んでいたりしますが)。

関数はその存在を縛ります。

これを陰陽道では咒と言います。
咒とはコントロール可能ということです。


これをクリプキは『名指しと必然性』と言いました。




親がつけた名前というのは、あらゆる可能世界において同じものを刺します指します。

たとえファインマンを一意的に同定できないとしても、彼はファインマンを指示している(クリプキ)


クリプキは「ある言葉があらゆる可能世界において同じ対象を指示するならば、それを固定指示子(rigid designator)と呼ぼう」と言い、「この講義で私が主張しようとする直観的なテーゼの一つは、名前は固定指示子であるというものである。(略)すなわち、直観的に言って、固有名は固定指示子である」と宣言しています(詳細は寺子屋「クリプキ」にて。もしくは「名指しと必然性」を熟読してください(*^^*))

このあらゆる可能世界において同じ対象を指示するような固有名はどのように指示するのか。クリプキによればそれは定義ではなく、ネットワークです。



親が子供に桃太郎と名前をつけたとします。

その桃太郎という名前を親戚に話し、その親戚は友人に話し、友人は街の人々に話します。
そうやって「桃太郎」という言葉は人から人へと共有されて巨大なネットワークを構成します。

ある人が(たとえば自分が)「桃太郎」という名前を聞いたとしたら、それはそのネットワークの最後に連なったということです。ネットワークに絡め取られたと言ってもいいでしょう。
そしてその網の目を逆にたどれば、必ず桃太郎本人にたどりつけるのです。

これが親がつけた名前が固定支持子である理由です。まさに桃太郎と名をつけることで、そのネットワークによって縛られるのです。これが陰陽道で言う「咒」ということになります。

そしてこの能力を創世記において、神は人に与えたのです。

そして主なる神は野のすべての獣と、空のすべての鳥とを土で造り、人のところへ連れてきて、彼がそれにどんな名をつけるかを見られた。人がすべて生き物に与える名は、その名となるのであった。(Genesis2:19)


夢枕獏さんの筆致で堪能するとしたら、こんな感じです。

「咒とはな、ようするに、ものを縛ることよ」

「ーーーーー」

「ものの根本的な在様(ありよう)を縛るというのは、名だぞ」

「ーーーーー」

「この世に名付けられぬものがあるとすれば、それは何ものでもないということだ。存在しないと言ってもよかろうな」

「難しいことを言う」

「たとえば、博雅というおぬしの名だ。おぬしもおれも同じ人だが、おぬしは博雅という呪を、おれは晴明という呪をかけられている人ということになるーー」
(夢枕獏『陰陽師:1』)


名指しや命名の咒というのは、西洋でも東洋でも一般的です。

マフィアの代名詞のように思われるGod Fatherとは本来は名付け親のことです。




信頼した魔法使い同士はお互いの本名を教え合いますが、それはお互いに命を預けるのと同じです(なぜなら呪い殺すことができるからです)(ちなみに同様のシーンが今昔物語でもあります)。ネットで匿名が流行ったのも、名前が本人の特定に結びつくからです。

闘いに際して「名を名乗れ」というのも同様です。


しかしこれは固有名詞から始まり、一般名詞にも波及します(誤解されがちですが、クリプキにおいても同様です。親からつけてもらった名前だけではないのです。論理的に考えれば、一般名詞のGoldもまた固有指示詞なのです)。


「眼に見えぬものがある。その眼に見えぬものさえ、名という呪で縛ることができる」(夢枕獏『陰陽師』)


眼に見えないから存在しないわけではありません。眼に見えないとは物理的な写像を持たないというだけです。

たとえば、陰陽師にとって鬼や物の怪や物恠(もっけ)や邪鬼は存在しますが、物理な存在として眼に観ることはできません。ですが名付けることで縛ることができるのです。


怒りや哀しみやストレスも同様です。可視化は難しいのですが、名付けることで縛り、縛ることでコントロールできます。


ただ観えなければ名付けられません。観るためには、抽象度と知識の両方が必要となります。

知らなければ、目の前にあっても見えないのです。ましてや情報空間にのみある存在は気配を感じることすらできません。


ある可能世界からある可能世界へ移動する到達可能性関数は知識です。
知識は言葉であり、言葉は名です。

クリプキはファインマンを同定するのは定義ではなく、ネットワークだと言いました。
逆にその名前を知らなければ、そのネットワークにアクセスできず、移動もできないのです。


だからこそ、ヨハネ福音書の冒頭では


初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった


と語られます。


そして式神とはその神であった言葉を使役することです。

式神の式とは用いる、使役するという意味です。神を使役するのが式神という儀式の本来の意味です。


まったく存在しないものに古代インドの人々は名前をつけて、対象として考えることに成功しました。

これは驚くべき発見であり、表記法の発見です。

その「存在しないもの」を古代インドの数学で「うつろな」の意味のサンスクリット語で शून्य( śūnya シューニャ)と名付けます。

śūnyaは膨れ上がったという意味もあり、膨れ上がったものというのはその中は空(から)です。

風船の内側は空っぽです(いや、空気に満ちていますけど、まあ、それはそれとして)。


その膨れ上がった象徴が0です。

丸い風船のようなカタチをしています。


By LZNQBD - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link



マクベスが魔女たちの予言によって、王となることを意識しはじめたときのことです。
野望の達成のためには現在のダンカン王を自分が殺すことが必要であることを悟り、悩み苦しみます。

そのときに彼がつぶやくのが、

nothing is but what is not.

とつぶやきます。

直訳すると、「存在しないものだけが存在する」。

(岩波ですと、まだ起こりもせんことだけがいまのおれを一杯にしている(岩波書店 木下順二訳))


まさに、存在しないものがあるとしたのが、ゼロの発見であり、これが飛躍的に抽象世界を押し広げます。


ゼロという名で縛ることで、ゼロという呪いをかけることで、広大な情報空間を移動することが可能になりました。



膨れ上がったものというのはその中は空(から)ということで言えば、丹田も同様であろうと思います。

丹田とは腹腔の構造のことであり、臓器のような存在ではなく、腹腔という膨れ上がった構造こそがポイントです。

構造、もしくは機能です!




というわけで、明日は究極の体幹トレーニングと題して、腹腔の秘密、丹田の秘密に迫ります!!

ワーク、ワーク、ワークで、気功の基本から、気功師としての身体造りまで一気に楽しくマスターしましょう!!

【はじめての気功 「バルーンMax、腸腰筋、センター  〜究極の体幹トレーニング〜」】
【日時】 4月11日(火) 19:00~21:00(21:30まで質疑応答!)
【場所】 東京・四ツ谷の「まといのば」のセミナールーム
【受講料】  3万円
【受講資格】 ブログ読者
【持ち物】 筆記用具と動きやすい服装
【お申し込み】お申し込みはこちらから。





【書籍紹介】
陰陽師(おんみょうじ): 1/文藝春秋

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