最近は宇多田ヒカルさんの最新アルバムFantômeをひたすら聞いています。
発売以来、4週連続1位だそうで、すさまじいものです。
宇多田ヒカルさんと言えば、ファースト・シングルの『Automatic』は衝撃的でした。15歳のときの作品です。
天井が低い?と言われたPVは何度見たか分かりません。
まだ当時はYoutubeなるものも無く、ビデオテープをデッキに差し込んで繰り返し再生していました。
最近のセミナーのネタで言えば、この男女の機微を歌った衝撃的な歌詞が、テクノロジーの進歩によって、若い人にとって意味が分からなくなっているということです。
これは面白いです。
テクノロジーの進化が激しくて、コンテキストが根こそぎ変わる時代に我々は生きています。
黒電話もポケベルも電報ももう今は昔です。
そこから考えると、絶対に古びない比喩を使っているソクラテスとプラトンは見事です(プラトンの国家はソクラテスが語っているという形をとっています)。
地下にある洞窟状の住いのなかにいる人間たちを思い描いてもらおう。光明のあるほうへ向かって、長い奥行きをもった入口が、洞窟の幅いっぱいに開いている。人間たちはこの住いのなかで、子供のときからずっと手足も首も縛られたままでいるので、そこから動くこともできないし、また前のほうばかり見ていることになって、縛めのために、頭をうしろへめぐらすことはできないのだ。彼らの上方はるかのところに、火が燃えていて、その光が彼らのうしろから照らしている。(プラトン「国家」)
この比喩を語るときに、間違えて「映画」とか「トーキー」とか「幻灯機」とかを使ってしまったら、すぐに古びて使えなくなってしまうのです。
98年当時にこれが2016年に理解できない子どもたちが出て来るとはまさか思いませんでした。2016年の最新のものは、2026年にはあまりに古くて理解できないものになっているのでしょう。
まあ、それはともかくFantômeは素晴らしいです。
ファントームと言うと我々はオペラ座の怪人(Le Fantôme de l'Opéra)を思い出してしまいます。
たしかにFantômeは怪物や幽霊という意味もあるようですが、ここでは幻とか幻影とか気配という感じで使っているようです。お母様のFantômeという意味合いかと思います(少なくとも本人によれば、このアルバムはお母様に捧げる作品であり、気配という意味を探したそうえす)。
ともかくその楽曲の良さは聞いてもらうのが一番です。
たとえば、椎名林檎さんとの共演は嬉しいです。
そして、「花束を君に」のPVのメイキングが面白いことになっています。
最近フェイスブックでも見るようになりましたが、この360度自由に見れるという映像体験は楽しいです。その意味でこの360度メイキングは面白いです。
*「花束を君に」のPVの本編はちょっと見つからないのですが、ここでは見れます。
今後は映画は360度になってくると思います。
視聴者参加型というか、どんどん自由度が上がっていくでしょう。IMAXとか4Dとかがきっと子供だましに思えるでしょう(今も十分にそうかも)。
たとえば映画のODYSSEYのVR版はすごいそうです。
視聴者が実際の作業をしたりします。手に汗握ります。
ブレードランナーも来年の映画公開に合わせて、VR版が公開されるそうです。
視野を限定され、全員で共有するという現在の映画はそろそろ終わるのではないかと思います(飴玉を買って、見ていた紙芝居からすれば、長足の進歩ですw)。
もちろん360度没入するタイプはゲームではすでにできています。VRは長足の進歩です。
*山田孝之さんがCMされていますね!北米では売り切れ続出とか。
僕が面白いと思ったのはこちらの360度ムービーです。
うまいなーって思います。
視点を動かさないとストーリーについていけない巧みな作りです。
*右上のカーソルのようなものを押すと360度視点を動かせます。
そして、宇多田ヒカルさんのアルバムのラストは「桜流し」。エヴァファンにはたまらないのでは。
ちなみに、僕が面白かったと思ったのは、「1998年の宇多田ヒカル」の著者である宇野維正氏のインタビューで『宇多田ヒカル「Fantôme」がCD販売モデルに止めを刺した? 』という記事です。
宇野氏は今後、鍵になるのは、「つながり」であると語り、レコード会社よりも力の強くなったアーティスト同士が互いにリスペクトして、互いにコラボしている様を「夢のある時代」と語ります。レコード会社にとっては悪夢であり、力の無い尊敬されないアーティストにとっては絶望です。それってとても夢のあることです(某広告会社が不正請求を暴かれ、そして長時間労働による自殺者を出したことは、暗示的に思えます)。
今回は宇多田ヒカルさんのアルバムを枕にして、今回はあの話題に触れるつもりでした。
美肌プロ養成スクールでも何度も言及した、脳に影響を与えるあの臓器について、あの臓器というよりは、あの臓器を寝床にしている生物たちについて書くつもりでしたが、、、、、ちょっと余白が足りません。
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というわけで、今回は書籍の紹介だけします!!
あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた/河出書房新社
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¥価格不明
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科学者でもあり、ジャーナリストでもあり、自分自身の体験からはじめて、この迷宮に切り込んだ英雄によるオデュッセイアなのですが、、、かなり面白いです。
ただ、これの読後感は「冬の日の太陽と老人の繰り言は似ている」という昔の戯れ歌(?)を思い出すものでした。
「冬の日の太陽と老人の繰り言は似ている。照らしはするが、暖めはしない」
知的好奇心はかなり満たされますし、様々な知見が整理されて良いのですが、ではどうすれば?という点になると途端に尻すぼみになります。まあ、今後に期待ということでしょうし、代替療法のように「自然に還れ」とか「古代人の真似をしろ」とか、単純すぎるソリューションを提示しないだけ良心的なのかもしれません。
ただ、かなり面白いですし、これまで我々が学んできたことを丁寧に整理してくれます。
大枠はこれまで美肌クリーム(美容気功)の理論で語ってきたことと何らかわりはないのですが、かなり詳細に最新の研究も紹介されています。「脳にすら命令を繰り出すあの臓器の秘密が暴露」されていますので、是非ご一読ください!
そしてもう一つ余談ながら、来月の寺子屋「数理経済学」で教科書にしたいのはこちらです。
面白いです。
経済数学の直観的方法 マクロ経済学編 (ブルーバックス)/講談社
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¥1,296
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余裕があれば、同じ著者による物理学のほうも是非読んでおいてください。
物理数学の直観的方法―理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬〈普及版〉 (ブルーバックス)/講談社
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¥1,166
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寺子屋「数理経済学」の参考図書としては、こちらの「ヤバイ経済学」も是非読んでおいてください。映画も面白いです。
ヤバい経済学 [増補改訂版]/東洋経済新報社
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¥2,160
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*映画版は是非!!
ヤバい経済学 [DVD]/角川書店
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¥4,104
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せっかくの機会なので、行動経済学についてもしっかりと復習しておきましょう!!
何はなくともまずはカーネマンですね。
ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)/早川書房
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¥907
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ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)/早川書房
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ダニエル・カーネマン心理と経済を語る/楽工社
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¥2,052
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予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (ハヤカワ・ノンフィクショ.../早川書房
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¥972
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たしかに、経済学と行動経済学は同じ経済学でもほとんど無関係ですし、行動経済学は経済学というより、むしろ心理学です。でも、経済は心理で動いています。
たとえば、ケインズ先生はこう書いています。
このべらんめえ口調な雰囲気すらただようケインズ先生の論理展開は最高です。
投機による不安定性以外に、人間の天性が持つ特徴からくる不安定性もあります。人々の積極的な活動の相当部分は、道徳的だろうと快楽的だろうと経済的だろうと、数学的な期待よりは、自然に湧いてくる楽観論によるものなのです。たぶん、かなりたってからでないと結果の全貌がわからないようなことを積極的にやろうという人々の決断は、ほとんどがアニマルスピリットの結果でしかないのでしょう――これは手をこまねくより何かをしようという、自然に湧いてくる衝動です。定量的な便益に定量的な発生確率をかけた、加重平均の結果としてそんな決断が下されるのではありません。目論見書に書かれた内容がいかに率直で誠意あるものだろうと、事業はそれに従って動いているふりをしているだけです。将来便益の厳密な計算などに基づいていない点では、南極探検より多少ましでしかありません。ですから、アニマルスピリットが衰えて自然発生的な楽観論が崩れ、数学的な期待以外あてにできなくなると、事業は衰退して死にます――その際の損失の恐れは、以前の利潤期待に比べて根拠の点では大差ないのですが。
将来に続く希望に依存した事業が、社会全体にとって有益なのはまちがいないことです。でも個人の努力が適切になるのは、適切な計算がアニマルスピリットに補填支持される場合だけなのです。パイオニアたちはしばしば、最終的に損をするんじゃないかという考えに襲われます(これは経験的に私たちも彼らもまちがいなく知っていることです)が、アニマルスピリットの働きがあればこそ、健康な人が死の予想を無視するように、そうした考えも振り払えるのです。(ジョン・メイナード・ケインズ 「雇用、利子および貨幣の一般理論」)
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最高です!
ケインズ先生は「人々の積極的な活動の相当部分は、道徳的だろうと快楽的だろうと経済的だろうと、数学的な期待よりは、自然に湧いてくる楽観論によるもの」と断定します。
「目論見書に書かれた内容がいかに率直で誠意あるものだろうと、事業はそれに従って動いているふりをしているだけです。将来便益の厳密な計算などに基づいていない点では、南極探検より多少ましでしかありません。」と思えば、どんどん試そうという気になります。
美肌プロ養成スクールの中で、IQとは気分であるという話をしました。厳密にはトランスのチューニングであり、意識状態の意識的な選択ですが、平たく言えば『気分」です。「良い気分」ということです。頭が良く動く「気分」というのはあるものです。
IQを上げたいと思ったら、その「気分」をつかまえて、それを維持するようにすべてをデザインすることです。その気分の別の名は「アニマルスピリット」なのかもしれません。
まあ、そんなわけで、今回は終わりです!!
【参考書籍】
1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)/新潮社
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¥799
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宇多田ヒカルさんと言えば、ファースト・シングルの『Automatic』は衝撃的でした。15歳のときの作品です。
天井が低い?と言われたPVは何度見たか分かりません。
まだ当時はYoutubeなるものも無く、ビデオテープをデッキに差し込んで繰り返し再生していました。
最近のセミナーのネタで言えば、この男女の機微を歌った衝撃的な歌詞が、テクノロジーの進歩によって、若い人にとって意味が分からなくなっているということです。
「7回目のベル※1で受話器※2を取った君 名前を言わなくても声ですぐ分かってくれる※3」
— くろみや (@kuromiya9638) 2016年6月10日
※1 昔の着信音や呼び出し音のこと。この場合は呼び出し音。
※2 昔の電話についていた、通話時に本体から取り外し耳に当てる部分。
※3 昔の電話は着信時に相手は表示されなかった。
これは面白いです。
テクノロジーの進化が激しくて、コンテキストが根こそぎ変わる時代に我々は生きています。
黒電話もポケベルも電報ももう今は昔です。
そこから考えると、絶対に古びない比喩を使っているソクラテスとプラトンは見事です(プラトンの国家はソクラテスが語っているという形をとっています)。
地下にある洞窟状の住いのなかにいる人間たちを思い描いてもらおう。光明のあるほうへ向かって、長い奥行きをもった入口が、洞窟の幅いっぱいに開いている。人間たちはこの住いのなかで、子供のときからずっと手足も首も縛られたままでいるので、そこから動くこともできないし、また前のほうばかり見ていることになって、縛めのために、頭をうしろへめぐらすことはできないのだ。彼らの上方はるかのところに、火が燃えていて、その光が彼らのうしろから照らしている。(プラトン「国家」)
この比喩を語るときに、間違えて「映画」とか「トーキー」とか「幻灯機」とかを使ってしまったら、すぐに古びて使えなくなってしまうのです。
98年当時にこれが2016年に理解できない子どもたちが出て来るとはまさか思いませんでした。2016年の最新のものは、2026年にはあまりに古くて理解できないものになっているのでしょう。
まあ、それはともかくFantômeは素晴らしいです。
ファントームと言うと我々はオペラ座の怪人(Le Fantôme de l'Opéra)を思い出してしまいます。
たしかにFantômeは怪物や幽霊という意味もあるようですが、ここでは幻とか幻影とか気配という感じで使っているようです。お母様のFantômeという意味合いかと思います(少なくとも本人によれば、このアルバムはお母様に捧げる作品であり、気配という意味を探したそうえす)。
ともかくその楽曲の良さは聞いてもらうのが一番です。
たとえば、椎名林檎さんとの共演は嬉しいです。
そして、「花束を君に」のPVのメイキングが面白いことになっています。
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*「花束を君に」のPVの本編はちょっと見つからないのですが、ここでは見れます。
今後は映画は360度になってくると思います。
視聴者参加型というか、どんどん自由度が上がっていくでしょう。IMAXとか4Dとかがきっと子供だましに思えるでしょう(今も十分にそうかも)。
たとえば映画のODYSSEYのVR版はすごいそうです。
視聴者が実際の作業をしたりします。手に汗握ります。
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*山田孝之さんがCMされていますね!北米では売り切れ続出とか。
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*右上のカーソルのようなものを押すと360度視点を動かせます。
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ちなみに、僕が面白かったと思ったのは、「1998年の宇多田ヒカル」の著者である宇野維正氏のインタビューで『宇多田ヒカル「Fantôme」がCD販売モデルに止めを刺した? 』という記事です。
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たとえば、ケインズ先生はこう書いています。
このべらんめえ口調な雰囲気すらただようケインズ先生の論理展開は最高です。
投機による不安定性以外に、人間の天性が持つ特徴からくる不安定性もあります。人々の積極的な活動の相当部分は、道徳的だろうと快楽的だろうと経済的だろうと、数学的な期待よりは、自然に湧いてくる楽観論によるものなのです。たぶん、かなりたってからでないと結果の全貌がわからないようなことを積極的にやろうという人々の決断は、ほとんどがアニマルスピリットの結果でしかないのでしょう――これは手をこまねくより何かをしようという、自然に湧いてくる衝動です。定量的な便益に定量的な発生確率をかけた、加重平均の結果としてそんな決断が下されるのではありません。目論見書に書かれた内容がいかに率直で誠意あるものだろうと、事業はそれに従って動いているふりをしているだけです。将来便益の厳密な計算などに基づいていない点では、南極探検より多少ましでしかありません。ですから、アニマルスピリットが衰えて自然発生的な楽観論が崩れ、数学的な期待以外あてにできなくなると、事業は衰退して死にます――その際の損失の恐れは、以前の利潤期待に比べて根拠の点では大差ないのですが。
将来に続く希望に依存した事業が、社会全体にとって有益なのはまちがいないことです。でも個人の努力が適切になるのは、適切な計算がアニマルスピリットに補填支持される場合だけなのです。パイオニアたちはしばしば、最終的に損をするんじゃないかという考えに襲われます(これは経験的に私たちも彼らもまちがいなく知っていることです)が、アニマルスピリットの働きがあればこそ、健康な人が死の予想を無視するように、そうした考えも振り払えるのです。(ジョン・メイナード・ケインズ 「雇用、利子および貨幣の一般理論」)

最高です!
ケインズ先生は「人々の積極的な活動の相当部分は、道徳的だろうと快楽的だろうと経済的だろうと、数学的な期待よりは、自然に湧いてくる楽観論によるもの」と断定します。
「目論見書に書かれた内容がいかに率直で誠意あるものだろうと、事業はそれに従って動いているふりをしているだけです。将来便益の厳密な計算などに基づいていない点では、南極探検より多少ましでしかありません。」と思えば、どんどん試そうという気になります。
美肌プロ養成スクールの中で、IQとは気分であるという話をしました。厳密にはトランスのチューニングであり、意識状態の意識的な選択ですが、平たく言えば『気分」です。「良い気分」ということです。頭が良く動く「気分」というのはあるものです。
IQを上げたいと思ったら、その「気分」をつかまえて、それを維持するようにすべてをデザインすることです。その気分の別の名は「アニマルスピリット」なのかもしれません。
まあ、そんなわけで、今回は終わりです!!
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