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Channel: 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ
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固定された諸原理とパラメータが相互作用して個々の言語を生み出していく〜蝶になったり、象になったり

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寺子屋「チョムスキー」の復習として、問題点を整理していきましょう。

まずは、原理・パラメータ理論です!

原理・パラメータ理論は寺子屋でも中心的な課題でしたが(実際その奥にあるミニマリズムにより焦点を当てましたが)チョムスキーいわく「何千年もわたる長い言語学の歴史において唯一の真に革命的な発展」がこのアプローチです!

と、その前に!!!ホーキング博士の映画です!!


*余談ながら、「博士と彼女のセオリー」を観てきました。期待していた映画が予想をはるかに超えて素晴らしいのは嬉しい事です。何度も観たい映画です。主演のエディ・レッドメイン(本作でアカデミー賞受賞)とフェリシティー・ジョーンズが本当に素晴らしい。
現代物理学の寺子屋・集中講座を受けた方は、随所にある物理学の話が明瞭に分かって、相当に面白いのではないかと思います。インターステラーを監修した物理学者キップ・ソーンとの賭けも出てきます。
ダンサーは踊りによって、その人間を評価されるように、物理学者もまたその理論によって評価されます。物理学が分からないまでも、分かろうとすることが敬意を払うことかと思います。
もちろん物理学の知識がなくても楽しめます。偉大な人間たちの物語です。
ちなみに(とこれも以前書きましたが)現在公開中の「イミテーション・ゲーム」でチューリングを演じたベネディクト・カンバーバッチもホーキングを演じたことがあります。


*同時代を生きているということが誇らしくなる天才です!


話を戻して、チョムスキーです(彼とも同時代を生きているのが光栄です)。

原理・パラメータ理論です。
チョムスキー自身の秀逸なまとめによって、我々は言語学の問題の所在もその解決も観ることができます。

少し長いですが、引用していきます。


*偉大なるチョムスキー!!

(引用開始)
言語理論に関して言うと、「生成文法の企て」に収めらていたインタヴューが行われた時代というのは、原理・パラメータ理論がちょうど形を整えようとしたいた時期で、(それが一般的に受け入れられたということではありませんが)私の考えでは、この理論こそが、その後の研究の爆発的増大を引き起こしたものなのだと思います。この理論的枠組みの登場によって、それ以前の理論で仮定されていた多くの制約や要請から離れて、様々な問題を完全に新しい形で定式化することが可能になったのです。つまり、(あの当時、このことがどれほど明らかだったかのは思い出せませんが、振り返ってみれば極めて明白なことです)原理・パラメータ理論の大きな成果というのは、それまで本当のパラドックスであると考えられてきた問題に対して、少なくとも真の解決策になり得るようなものを提供したということなのです。そのパラドックスというのは、記述的妥当性と説明的妥当性の両方を達成しようとすることから生じてくる衝突のことです。記述的妥当性を達成しようとすることによって、個別言語内の様々な構文についての定式化や色々な言語に見られる様々な構文の定式化は、どんどん複雑で入り組んだものへとなっていきました。つまり、一方にはこういった多様性と複雑さに向けての圧力があり、もう一方には説明的妥当性の問題がありました。そして、説明的妥当性の要請は、真理は多様性と複雑さとは逆のところにあるということを示していたのです。すなわち、様々な言語は、基本的には全て同一の鋳型に基づいて作られており、言語間には、あるとしてもわずかな違いしか存在しない。そうでなければ言語獲得の問題を解決することは不可能である、ということです。従って、そこには緊張関係が生じていたのですが、原理・パラメータ理論は(この理論は一夜にして出来上がったわけではなく、それ以前二十年ほどの間に行われた膨大な研究を通して発展してきたものなのですが)、個々の構文からその背後にある根源的な諸原理を抽出することによって、残りの部分がより単純になるようにしたのです。そして、抽出されたそれらの諸原理は普遍文法、すなわち(言語機能の)初期状態へと還元することができます。もしパラメータの値が簡単なデータに基づいて決定でき、一方で諸原理があらかじめ固定されているのであれば、今言った緊張関係を解消することができるわけです。実際の作業は膨大なものですが、少なくとも、パラドックスの解消への可能性が、原理・パラメータ理論によって明らかになってきたのです。(引用中断)pp.288-290(下線は引用者による、以下同じ)

ここでのポイントはシンプルです。
原理・パラメータ理論がそれまでのパラドックスを解消したということです。
パラドックスとは多様性と複雑さと普遍性とシンプルさの衝突、緊張のことです。
すなわち、諸原理があらかじめ固定され、そしてパラメータの値が簡単な一次言語データに基づいて決定できるのであればパラドックスは存在しないということです。

(引用再開)
 こういう研究が一九七〇年代後半頃になってパラメータ化された原理を用いるアプローチの形を取ってきたわけですが、このアプローチはおそらく、何千年もわたる長い言語学の歴史において唯一の真に革命的な発展なのだと私は思っています。生成文法の誕生に関わる初期の研究よりもずっと革命的なのです。この理論は、何千年もの間、あらゆる言語研究の核となってきた規則とか構文という概念を事実上破棄したのです。そして、規則や構文という概念は、ちょうど水棲哺乳類などという概念と同じく分類上の人工物(taxonomic artifacts)であって、そういったものを仮定するのは構わないけれども、実はそれらは別のものの表面的な反映にすぎないと主張しました。ならば真に存在しているものは一体何なのかと言うと、それは固定された諸原理とパラメータによる変異であり、これらの原理は諸言語間に共通のもので、構文とは何ら関係のないものなのです。
(引用中断)p.290

ここでの重要なポイントは、言語の背景に真に存在しているのは原理とパラメータによる変異という点です。規則や構文という何千年もの間、言語研究の核となっていた概念は反故にされたということです。これはまさに革命的です。
原理とパラメータによる変異がイデアであり、その不完全な影が規則や構文ということです。
原理は1つ、しかしパラメータによる変異は多様です。これがパラドックスの根幹であり、原理・パラメータ理論で考えれば、これはパラドックスではなく単なる不可避的な現象です。
以下に見るように「生体の発生における調節機構の働き方と酷似している」のです。

(引用再開)
 さて、もしこの考えが正しければ、これは言語への全く新しいアプローチであると言えますし、また、先に述べた緊張関係を解消する方法を提供することにもなるのです。このアプローチのもとでは、言語の多様性は、パラメータを固定していく問題として考えられるため、有限の範囲に抑えられることになります。そして、諸原理は最初から固定されているわけですから、それらの諸原理とパラメータが相互作用することによって個々の言語が生じてくることになります。私が当時(一九七〇年代後半)用いていたアナロジーに従えば、固定された諸原理とパラメータが相互作用して個々の言語を生み出していく様式というのは、ちょうど生体の発生における調節機構の働き方と酷似しているんですね。調節機構のこういった特性は、その何年か前に、フロンソワ・ジャコブとジャック・モノーによって発見されていたのですが、彼らが行った古典的研究によれば、他の点では固定された遺伝システムにおける調節機構の微細な変化が、表面的には大きな違いをもたらすことがあるのです。小さな調節機構をわずかに修正するだけで、その結果が蝶になったり象になったりというように、表面的にはとても大きな違いとして現れてくるのです。こういったモデルが、原理・パラメータ理論のような考えを暗示してくれたのです。つまり、固定された機構におけるわずかな変化が、例えば、ワルビリ語と英語であるとか、モホーク語と英語といったような表面的に大きな違いをもたらすのです。そして、こういう考えに基づいた研究は非常に大きな成果を生み出したのです。例えば、マーク・ベイカーの最近の著書は、モホーク語と英語は(この二つの言語は、およそ可能な限り最もかけ離れているように見えるのですが)、実はパラメータにほんのわずかな変化を加えさえすれば、基本的には同一であるという、非常に興味深い事実を明らかにしようとしています。
この種の研究が、我々が今議論している時期における最も有意義な研究の目標であると私には思えます。つまり、様々な言語が表面的には異なっているように見えながら本当のところではき基本的に同一であるなどということが、一体どのようにして可能であるを示そうとする研究ですね。

(引用終了)pp.290-292

非常に魅力的な議論が、非常に明快な論旨で書かれています。

固定された諸原理とパラメータが相互作用して個々の言語を生み出していく」ということです。
具体的には、「諸原理は最初から固定されているわけですから、それらの諸原理とパラメータが相互作用することによって個々の言語が生じてくる」。これが普遍文法と個別文法の関係です。言語機能が普遍的に同一のものであり、言語が多様であるわけがこれで説明が可能といことです。

そして、このアナロジーもしくは参照として、「生体の発生における調節機構の働き方」が紹介されます。
すなわち、「他の点では固定された遺伝システムにおける調節機構の微細な変化が、表面的には大きな違いをもたらすことがあるのです。小さな調節機構をわずかに修正するだけで、その結果が蝶になったり象になったりというように、表面的にはとても大きな違いとして現れてくる」ということです。この蝶や象が英語やモホーク語ということです。遺伝システムが言語機能であり、そのアルゴリズムが普遍文法です。

原理・パラメータ理論というものが輝いて見えますw

ただチョムスキーが「言語に関する真の理論」(p.292)と考えているのはこの先です。
先取りするならば、これは「究極的には極小主義プログラムに繋がっていくことになります」(p.293)。

この「言語に関する真の理論」が寺子屋「チョムスキー」の最初のポイントでした。



*寺子屋で常識の壁を突き破りましょう!!


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