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Channel: 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ
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見よ、わたしはまことに卑しい者です、なんとあなたに答えましょうか。ただ手を口に当てるのみです。

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*24時間以内にアメンバー記事に格上げします(格上げなのか、格下げなのかよく分かりませんが、アメンバー記事にしますm(__)m)。秘すれば花です。
アメンバー解除しましたm(__)m(1月18日追記)



ヨブ記を丁寧に読むことで、神について、サタンについて、そしてヨブを含めた人間と神、人間とサタンの関係が浮き彫りになると思います。


義人であるヨブ、正しい行いを徹底的にしてやってきた正義の人ヨブ、いわゆる神の前においても超優等生であったヨブくんはひどい成績を担任の神様につけられます。テストは全科目100点満点なのに、なぜか評価がオール5ではないという感じです。無遅刻無欠席、提出物も完璧、授業態度も完璧なのに、友人から成績をバカにされ、付き合っていた彼女からも「本当は勉強してないんじゃないの?」などひどいことを言われ、親友からは「教師が成績の付け方を間違うはずもないから、お前が悪い」と言われますw


それもサタン先生というイアーゴのような火のない所に煙は立たせるような同僚教師の奸計によります。

これが前回までの内容でした。

神の暗黒面~ピッコロ大魔王は神が神となるために切り離した邪念の固まりであり、神の半身~

ある日、神の子たちが来て、主の前に立った。サタンも来てその中にいた(ヨブ記1章)


ユング先生による秀逸なまとめを再掲しましょう。


たちまちヨブは家畜を奪われる。彼の僕たちや、なんと息子や娘までも打ち殺され、彼自身も病に冒されて死の淵をさ迷うことになる。また彼から安らぎを奪うために、妻や良き友人たちが間違ったことを言うように仕向けられる。彼の正しい訴えに対して、義のゆえに称えられる裁き手は耳をかさない。正義は彼に閉ざされるが、それもサタンの賭を妨げないためにである。


家畜を奪われ、部下たちを奪われ、息子や娘の命も奪われます。それも、サタンとの賭けのためというのですから、神様も相当にギャンブルに狂っています。

ユングは繰り返し書きますが、もし神がその「全知」を駆使していれば、サタンの言葉を「試す」必要はなかったのではないでしょうか。


ちなみにイエスは有名な荒野(あらの)の誘惑において、サタンをきちんと退けています。40日間という長期の断食のあとにこれだけ高い精神性を維持できるのはすさまじいことです(高い精神性というのは抽象論ではなく、IQです。IQにはコストが必要であることを考えるとすさまじいということです)。

マタイ4章から引用してみましょう。同じく有名な「人はパンによって生きるにあらず」に続くシーンです(ちなみにこの有名な「イエスの」言葉は旧約の引用です。というか、イエスも「と書いてある」ときちんと述べていますが、いまはイエスの言葉として人口に膾炙しています。JobsのStay hungry, stay foolishと同じです。引用を明示しながら、本人の言葉に生まれ変わります。イエスの名言はほとんどが旧約の引用です。たとえばエリ・エリ・レマ・サバクタニなども詩篇からの引用です)。

それから悪魔は、イエスを聖なる都に連れて行き、宮の頂上に立たせて
言った、「もしあなたが神の子であるなら、下へ飛びおりてごらんなさい。
『神はあなたのために御使たちにお命じになると、
あなたの足が石に打ちつけられないように、
彼らはあなたを手でささえるであろう』
と書いてありますから」。
イエスは彼に言われた、「『主なるあなたの神を試みてはならない』とまた書いてある」。
マタイ4:5-7

ヨブ記の神様の所業に対して、このイエスの格調の高さは素晴らしいと思います。

神様もサタンから挑まれたときに、短絡的に賭けに乗るのではなく『主なるあなたの神を試みてはならない』と返せばよかったのです。そしたら気の毒なヨブだけではなく、その子どもたちや僕(しもべ)たちが惨殺されることも無かったのにと思います。


繰り返しますが、ユングはこう書きます。

彼の正しい訴えに対して、義のゆえに称えられる裁き手は耳をかさない。正義は彼に閉ざされる


これはヨブも気付いています。すなわち神の不正義についてヨブはうすうす感じています。ヨブは自身が義であることを知っているので(これを傲慢とみなす人もいますが、単なるStoryの設定なので、傲慢には当たらないと思います。それに全知である神ご自身がヨブが義人であり正しい人であることを冒頭で認めていますし。サタンはそれを踏まえた上で神を試みたのです)。


ヨブは言った、『わたしは正しい、神はわたしの公義を奪われた。わたしは正しいにもかかわらず、偽る者とされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢傷はいえない』と。34:5-6)


正しいにもかかわらず、偽る者とされた」のです。誰によってか?神によってです。すなわち神にクレームをしているのです。

友人によってではありません。友人は判断をしているだけです。決断しているのは神です。
これは友人の口を通じてのヨブの言葉の要約ですが、ヨブ自身もこう語ります。


「神は生きておられる。彼はわたしの義を奪い去られた。全能者はわたしの魂を悩まされた。(27-2)


ちなみにヨブはその知性を用いて非常に綿密な観察により、非常に恐ろしいことを発見しています。

なぜ悪が栄え、善が滅びるのか(まあ後者はさておき)と問いかけています。


(引用開始)
なにゆえ悪しき人が生きながらえ、老齢に達し、かつ力強くなるのか。

その子らは彼らの前に堅く立ち、その子孫もその目の前に堅く立つ。

その家は安らかで、恐れがなく、神のつえは彼らの上に臨むことがない。

その雄牛は種を与えて、誤ることなく、その雌牛は子を産んで、そこなうことがない。

彼らはその小さい者どもを群れのように連れ出し、その子らは舞い踊る。

彼らは手鼓と琴に合わせて歌い、笛の音によって楽しみ、

その日をさいわいに過ごし、安らかに陰府にくだる。

彼らは神に言う、『われわれを離れよ、われわれはあなたの道を知ることを好まない。

全能者は何者なので、われわれはこれに仕えねばならないのか。われわれはこれに祈っても、なんの益があるか』と。

見よ、彼らの繁栄は彼らの手にあるではないか。
(21:7-16)
(引用終了)

これはさり気なく書かれていますが、重要だと思います。

なぜ神は善なる存在なのに悪が栄えて罰せられないのか、という質問です。
(ちなみにこれについて神は明確な言葉による説明をしません。そしてそのことでヨブは神から明確な回答をもらいます)


ちなみにこのささやかな物語には数名の登場人物がいます。
主人公のヨブ、その妻、かわいそうな従僕や子どもたち、親友たち、そして神とサタンです。
それぞれが聡明にもディベートを交わすにも関わらず、もっとも滑稽でもっとも愚かな道化は神です。

神は一度ならずも、二度もサタンに試みられ、そしてひっかかります。そして最後に大恥をかきます。

一度目はサタンに向かって、ヨブほど義人ですごいやつはいないだろ、そしてあいつはオレを崇拝しているんだぜ、と自慢するのに対して、サタンが狡猾にも、義人だから崇拝しているのではなく、幸せだから神を崇拝しているのであり、不幸にならばあなた(神)を呪いますから、と神に吹き込みます。
神はその全知なる能力をきちんと駆使すれば、サタンの言っていることが間違っていることを知ったはずなのですが、カッとなりやすい神様はその賭けに乗ってしまいます。

繰り返しになりますが、1章冒頭です。


主はサタンに言われた、「あなたはわたしのしもべヨブのように全く、かつ正しく、神を恐れ、悪に遠ざかる者の世にないことを気づいたか」。
サタンは主に答えて言った、「ヨブはいたずらに神を恐れましょうか。
あなたは彼とその家およびすべての所有物のまわりにくまなく、まがきを設けられたではありませんか。あなたは彼の勤労を祝福されたので、その家畜は地にふえたのです。
しかし今あなたの手を伸べて、彼のすべての所有物を撃ってごらんなさい。彼は必ずあなたの顔に向かって、あなたをのろうでしょう」。
主はサタンに言われた、「見よ、彼のすべての所有物をあなたの手にまかせる。ただ彼の身に手をつけてはならない」。サタンは主の前から出て行った。



一度で学べばいいのに、ふたたびまたサタンの奸計にのってしまいます。

一度目の賭けに勝った神は得意満面で、サタンに「ほら見たことか、オレが正しいじゃん!」と言います。しかしサタンは負けを認めず、「いや持ち物だけじゃなく、肉体を毀損されたら、あなたを呪いますから」と言います。


2章冒頭です。

主はサタンに言われた、「あなたは、わたしのしもべヨブのように全く、かつ正しく、神を恐れ、悪に遠ざかる者の世にないことを気づいたか。あなたは、わたしを勧めて、ゆえなく彼を滅ぼそうとしたが、彼はなお堅く保って、おのれを全うした」。
サタンは主に答えて言った、「皮には皮をもってします。人は自分の命のために、その持っているすべての物をも与えます。
しかしいま、あなたの手を伸べて、彼の骨と肉とを撃ってごらんなさい。彼は必ずあなたの顔に向かって、あなたをのろうでしょう」。
主はサタンに言われた、「見よ、彼はあなたの手にある。ただ彼の命を助けよ」。
サタンは主の前から出て行って、ヨブを撃ち、その足の裏から頭の頂まで、いやな腫物をもって彼を悩ました。


神はこうサタンに言います。

あなたは、わたしを勧めて、ゆえなく彼を滅ぼそうとしたが、彼はなお堅く保って、おのれを全うした

これは重大な罪状認否だと思います。「ゆえなく」滅ぼそうとしたのであり、そして神は「勧め」にのったのです。すなわちより罪が重いのは手を下したサタンなのでしょうか、許可して示唆した神なのでしょうか?罪の高低もそうですが、神の手は悪に染まっていないでしょうか?

神は無邪気なのです。

そして、また神はサタンの口車に乗せられます(「彼は必ずあなたの顔に向かって、あなたをのろうでしょう」)。神は全知なんだから、未来もきちんと予見しておけよと思うのですが、後に考察するように、知っているだけではダメなのです。神は凡庸であり、陳腐なのです。そこに気付けなかったヨブは、その愚かな自分を呪ったのです。


さんざん友人たちに罵倒されたあとに神様は満を持して登場します(この友人たちのヨブに対する罵倒もまた非常に格調高く、そして最もな議論です。この議論を論破するのはかなり厄介です。論破するのではなく、ヨブがしてみせたようにパラダイム・シフトするしかないのです)。

特に最後の若輩者のエリフの激昂はかなり良いです。評価しているというより、描けているという面白さです。論理は通っているし、正しいのです。しかしその「正しさ」は机上の空論なのです。もう少なくとも2300年前から有害な空論であることが示されているのです。

本当に若いだけの頭しかない人間は有害だと思います。

「1984」においても、両親の罪を思想警察に密告するのは「正義」にかぶれた実の子供です。


ヨブ記から少し引用します。

ヨブと親友3人の大激論が終わったときに、年若いエリフが怒りながら口をはさみます。

このようにヨブが自分の正しいことを主張したので、これら三人の者はヨブに答えるのをやめた。
その時ラム族のブズびとバラケルの子エリフは怒りを起した。すなわちヨブが神よりも自分の正しいことを主張するので、彼はヨブに向かって怒りを起した。
またヨブの三人の友がヨブを罪ありとしながら、答える言葉がなかったので、エリフは彼らにむかっても怒りを起した。
エリフは彼らが皆、自分よりも年長者であったので、ヨブに物言うことをひかえて待っていたが、
ここにエリフは三人の口に答える言葉のないのを見て怒りを起した。
32:1-5)


「黙っていれば調子にのりやがって、この老人どもっ!!」というエリフの怒りが伝わってきます(^^)(若気の至りは大事です)

怒るのも最もです。だって、「ヨブが神よりも自分の正しいことを主張する」のですから。これは神の全知全能性に対する反逆罪に感じるのは当然です。でもヨブが正しいのです。

神の思し召しははかりしれないなどというおためごかしでだまされてはいけません。

若輩者のエリフは、ヨブに対してだけではなく、3人の仲間に向かっても怒っていますw
(そして面白いことに、このガキに対しては神はお咎め無しです。これまた面白い。お咎め無しなのは、エリフとサタンの両名です。言及すらされません)(余談ですが、ガキもそうですが、アバターも仏教用語ですね、という話も昨日の集中講座で出ました)(余談ついでに、『文藝春秋』2012年10月号からの引用も。大谷大学門脇 健教授(哲学)の寄稿です

 この「アバター」(avatar)はサンスクリット語のavatāraを語源とする。仏教漢語の「権化」「化身」に対応する語である。つまり、真の世界の存在が仮の人間界に現れる姿をアヴァターラと呼び、ヒンドゥー教では、この世に現れたゴータマ・ブッダもヴィシュヌ神の十のアヴァターラのうちの一つとしている。生身のブッダはこの仮の世に送りこまれたアバターだったというのである。
http://www.otani.ac.jp/yomu_page/b_yougo/nab3mq000001waea.html
(そう言えば、イエスも神のアバターでしたw違うか)


若きエリフの内容もまっとうです。ただ一つの「隠された真実」を分かっていないということをのぞけば完璧です(「隠された真実」とはピーター・ティールが必ず採用面接で質問するという「賛成する人がほとんどいない。大切な真実はなんだろう」における「真実」のことです。昨日の集中講座のテーマでしたね。そしてアルケミアのテーマの1つです)。


このエリフの長い長い演説が終わったあとに(ちなみにエリフの発言はヨブも含め誰からも既読スルーされます)、神が登場します。

デウス・マキナです。
(Wikipediaを引用すれば、デウス・エクス・マキナとは「劇の内容が錯綜してもつれた糸のように解決困難な局面に陥った時、絶対的な力を持つ存在(神)が現れ、混乱した状況に一石を投じて解決に導き、物語を収束させるという手法」です。)

神様が唐突に登場し物語を強制終了します。うっすらとビターなハッピーエンディングです。

というわけで、この記事もとりあえず、長くなったので強制終了します。




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