先日、渋谷のジュンク堂書店をふらふらと歩いていたら見慣れた古典の書名が装いもあらたに並んでいました。
古典中の古典と言っても良いフォン・ノイマンの「量子力学の数学的基礎」です。
これは長らく古本屋でしか買えなかったように記憶しています。僕自身も古い版で手にしています。
余談ながら、アマゾンという巨大なショッピングモールができたことで、古本を手に入れるのは本当に容易になりました。インフラ整備が彼らのプリンシプルだからこそ、利益が出づらい古本屋ビジネスに介入したのでしょうが、絶版本や品切れ本を手に入れることが本当に楽になりました。本屋に並ぶのは、よほど大きな本屋でない限りは、雑誌と同じようなサイクルで消費されます。
この本が欲しいとピンポイントで思っている場合は、アマゾンが助かります。
ただ何か新しい出会いが欲しいときは巨大本屋さんが助かります。もちろん古本屋さんも。
ということで、新宿三越のジュンク堂書店が消えてしまった今となっては(跡地のビックロもよく行きますがw)、渋谷のジュンク堂書店が聖地のようなものです(品揃えが良いと僕が感じるのは新宿・紀伊國屋本店です。狭いのに充実しています。一方近くの高島屋タイムズ・スクエアにある紀伊國屋書店は僕とは相性が悪いです)。
渋谷のジュンク堂書店には書店の中に隠れ家的に喫茶店があるのが面白いです。大学の文化祭の喫茶店のような感じです。
*写真は本文とはほとんど関係がありません。
で、そんなジュンク堂書店にフォン・ノイマンの「量子力学の数学的基礎」が並んでいました。
綺麗な表紙で。
帯によると「基本図書限定復刊」だそうです。
この翻訳の序文を湯川秀樹博士が書いていますが、これが名文です。
ニュートン力学から相対論、そして量子論の流れを俯瞰させてくれます。
最近で言えば、寺子屋「リーマン幾何学」の際にヒルベルト空間を紹介するためにこの湯川博士の序文を引きました。
頭が整理されると思います。
(引用開始)
1925、6年頃にde Broglie及びSchrodingerの波動力学とHeisenberg等の量子力学とが殆ど同時にでき上がり、それらの見かけ上の大きな違いにも拘わらず形式的に同等であることが明らかになった。
そしてBohrに始まる量子力学の統計的解釈が、1927、8年頃にはHeisenbergの不確定性原理やBohrの相補性の考えが根幹となって一応物理学者にとって満足すべき理論体系ができ上がった。しかし、それはまだ数学者を満足させる程まで理論的な厳密さをもって築き上げられた体系ではなかった。特にDiracのデルタ函数を使う方法は、物理的な直観によって本質的に正しいことが分かってみても、数学的にはそのまま受け入れにくかった。
このような不満足な状態を是正するために、Neumannはそれまで物理学者には縁の遠かったHilbert空間の理論を基礎におくことによって、理論的に一貫し、数学者にも受け入れられる形に量子力学を再構成することに成功した。今日では、量子力学系に対する直感的な像を描くためにも、Hilbert空間はなくてはならぬ背景にさえなってしまった。それはNewton力学の背景である三次元Euclid空間や、Einsteinの相対論の背景である四次元空間にも比すべきものである。しかし、Hilbert空間が通常の三次元ないし四次元空間と本質的に違うのは、それが量子力学系に対する観測と直接結びついている点である。実際Neumannは本書において、量子力学の数学的な基礎をあきらかにしたばかりではなく、観測の問題の精密な分析をも行い、更に進んで量子統計力学の再構成までも試みた。
(フォン・ノイマン「量子力学の数学的基礎/みすず書房 解説:湯川秀樹)(引用終了)
短い文章の中に歴史が圧縮されていて、かつ新しいゲシュタルトが組み上がる美しい文章だと思います。
現代物理学という神話の英雄たちの名前が次々と並び、壮大なスケールのストーリーが描かれ、我々を冒険に誘いますw
ニュートン力学が3次元ユークリッド空間に対応し、アインシュタインの相対論がミンコフスキー空間という時間と空間を同じ座標に記した4次元空間に対応し、そして量子論が無限次元のヒルベルト空間に対応することは少なくとも見て取れます。
井戸型ポテンシャルとか水素原子はもう良いので、もっと本質に切り込みたいなどと思う方も多いのではと勝手に思います。
教える側は自分の役割はコンテンツを伝えることだと考えがちです。可視化できるコンテンツの提供であり、脳から脳へのコピーです。コンテンツは可視化できるので、定量化が可能です。コンテンツを充実させ、それを大量に正確にコピーするためには、暗記が最適解となります。それが教育の本質だとしたら、我々はもう人工知能に負けています。
そこまで極端ではないにせよ、教える側が便利に使う例題というのは、しばしばコンテンツ主導で考えられます。これとこれとこれとこれが盛り込める!としてです。
しかし世界の見方や考え方の深い部分に大きな革新が起これば、勝手に教わる側は学ぶものです。それを「出藍の誉れ」メソッドと言います(嘘です、いまつくりました)。
教わる側が求めるのはStoryの共有です。そのマイルストーンになるのが概念であり、コンテンツです。コンテンツは重要ですが、もっと重要なことがあるということです。
まあ、教育というのは保守的なものですし(無駄に革新的でも困ります。まだ保守的なほうが害が少ないのでしょうが)、なかなか大きな変更は難しいと思いますが、だからこそファインマンさんのようなクラスが求められるのでしょう(とは言え、ファインマンさんも疲れたのか2年で切り上げています。そもそも1回限りの授業ということで学部の1年、2年を教えることを引き受けていますし。楽しければその後も続けたでしょうし。ちなみにイエスも3年で布教を切り上げていますねw)。
というわけで、限定復刊されたフォン・ノイマンの「量子力学の数学的基礎」です!
量子力学の数学的基礎/みすず書房
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ついでにファインマン物理学も貼り付けます!
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いまだけ復刊!フォン・ノイマン「量子力学の数学的基礎」
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