Quantcast
Channel: 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3544

FLT「必要なのは新しいアイデアだけ」この余白は狭すぎる〜モジュラーではない楕円曲線は存在する?

$
0
0

フェルマーの最終定理には寺子屋の中では実は何度となく挑戦してきました。挑戦というのが大げさであれば、紹介です!


*フェルマーの最終定理の証明をはじめて発表したときのワイルズ!

ちょっと思い出すだけでも、フェルマーの最終定理は、寺子屋「熱力学」で導入し、そして寺子屋「ガウス平面・デカルト平面」でも扱いました。

なぜ熱力学で熱かった扱ったかと言えば、その理由はシンプルです。

フェルマーの最終定理はまずフェルマーによって提唱され、350年の時を経て解決されました。
フェルマーの表記法と現代の数学の表記法を見比べて見ましょう。

【資料A】
Cubum autem in duos cubos, aut quadratoquadratum in duos quadratoquadratos, et generaliter nullam in infinitum ultra quadratum potestatem in duos eiusdem nominis fas est dividere cuius rei demonstrationem mirabilem sane detexi. Hanc marginis exiguitas non caperet.

立方数を2つの立方数の和に分けることはできない。
4乗数を2つの4乗数の和に分けることはできない。一般に、冪(べき)が2より大きいとき、その冪乗数を2つの冪乗数の和に分けることはできない。この定理に関して、私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる。

【資料B】
3 以上の自然数n について、

となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組が存在しない

レジュメから引用すると、二つの資料A,Bを見比べて、明らかに現代的な表記のほうが圧縮され、完結でかつ扱いやすいということです。Aはラテン語で書かれています(下は邦訳)。Bは現代の数学の言葉で書かれています。

表記法なり記号、言語というのは洗練されればされるほど少ない情報量で明確になる良い例と言えます。

熱力学に関しても同様で、歴史的な定義から入らずに、抽象度の高いところから落下傘で下りながら、下からも(歴史的にも)上がっていくと、理解が深まります。推理小説を読むときに、犯人とその犯罪手法を事前に知りながら、かつ最初から読むようなイメージです。上からと下からです。


寺子屋でもう一度暑かった扱ったのはガウス平面・デカルト平面でした。
そのときは楕円曲線論からフェルマー予想を考えるという流れを示し、フェルマーカーブ上の有理点問題として、フェルマー予想を考えました。

フェルマーカーブとはx^n+y^n=1の曲線です。
これがなぜフェルマーの最終定理と同値かと言えば、xをx/z、yをy/zとおけば分かります。計算すれば、いわゆるフェルマーの最終定理の形になります。



n=1のときは
x+y=1
となり、明らかに有理点は無限にあります。これは曲線ですらなく、y=-x+1の直線の方程式です。

n=2で、ピタゴラスの定理です。
x^2+y^2=1
です。これは単位円です。これも有利点が無限にあります。
単位円というのは半径が1の円です。
円を方程式で書くと、中心が原点O、半径rとすれば、
x^2+y^2=r^2
です。


半径はもちろん自由に変えられますし、中心の座標がどこであっても、そこに中心を平行移動させればいいので、xy平面上の円はこれですべて表記できます。
もちろん一般形は中心(a,b)、半径rで
(x-a)^2+(x-b)^2=r^2
です。

単位円はS1と書きます。これはn 次元の球面 (sphere) という概念の n = 1 ということですが、この表記はもちろんポアンカレを想起させます。単位円は1次元球面ということです。


S1 = {x ∈ R2 | dist(O, x) = 1} = {(x, y) ∈ R2 | x^2 + y^2 = 1}.


ポアンカレ予想はこうでした。
単連結な3次元閉多様体は3次元球面 S^3 に同相である。

これは来週の寺子屋での話です(^^)

n=3からx+y=1をぐにゃりと曲げたようなフェルマーカーブが出てきます。
ポイントはこのフェルマーカーブに有理点が無いということに、フェルマー予想が帰結するということです。

なぜここから始めるかと言えば、フェルマーの最終定理の証明自体が、代数論的整数論ではなく数論的曲線論で解けたからです。そしてヴェイユ等が言うようにそもそもディオフォントスもフェルマーも整数論ではなく曲線論の先駆けとして考えると良いのではないかと言うことです。

少し扇情的に言えば、クンマーを嚆矢としまた頂点とする代数的整数論では、フェルマーの最終定理は解けず(もちろん代数的整数論も使ったとは言え)全く別なアプローチであった楕円曲線とモジュラ形式によって解けたからです。


というわけで、さくっとフェルマーの最終定理の証明の絵を眺めましょう。

いわゆる背理法です。

背理法というのは、いわゆる証明すべきものを否定しておいて、それを展開していったら矛盾にぶち当たるので、最初の前提が間違っていたよね、という証明の形式です。押してダメなら引いてみろという証明で、たとえば√2が有理数ではない(無理数)であるという、ピタゴラス教団を震撼させた証明などが有名な例です。

フェルマーの最終定理の背理法とは簡単です。以下の方程式において整数解が存在すると言えば良いだけです。



整数解が存在するならば、フライ曲線なる奇妙な楕円曲線が存在することになります。



フライ曲線はフランケンシュタインのようなもので、奇妙な性質を持つ怪物くんです。

すなわち半安定な楕円曲線だが、モジュラーではないのです。これは「ルーが無いカレーライス!」というくらい奇妙なことです。

そもそも楕円曲線はモジュラーであるというのが共通認識としてありました。ただこれはまだ当時は予想の状態でした。いわゆる谷山=志村=ヴェイユ予想です(現代では証明済み。フェルマーの最終定理のあとに示されました)。

モジュラーというのは保型形式の一つで、保型形式というのは変換しても同じ型を保つということです。強いて言えば(言っていいのか?)単位元みたいなものです。
単位元というのは足し算のときの0みたいなもので、x+0=xで分かるように、どんな数がxに来ても、その演算によってxは変化しません(ちなみに掛け算では単位元は1ですね)。

すべての楕円曲線はモジュラーであるはずなのに、フライ曲線なる奇妙な楕円曲線はたしかに楕円曲線だけど、モジュラーではないと主張します。モジュラーではない楕円曲線はないので、すなわち、フライ曲線なる奇妙な楕円曲線は数学宇宙に存在しないのです。フランケンシュタインはフランケンシュタインでした。

ここから逆回転していきます。

すなわち、フライ曲線は存在しないということは、フェルマーの最終定理の整数解は存在せず、フェルマーの最終定理は示されたということになります。

実際には、ワイルズは半安定な楕円曲線についてのみ、モジュラであることを示しました。すべての楕円曲線に関して示す(谷山=志村=ヴェイユ予想)は荷が重いので、まずはフェルマーの最終定理だけを解決することにしました。なぜならフライ曲線は半安定な楕円曲線だったからです。

実際は数年後に「谷山=志村=ヴェイユ予想」が解けてしまったので、ワイルズの業績は残っても証明自体は風化するのではないかと思います(これは勝手な予想です)。半安定にこだわる必要が無くなったからです。

谷山=志村=ヴェイユ予想というか定理より、フェルマーの最終定理は示せる、でおしまいです。

細い細い橋であっても、一度かかってしまうと、そのアリアドネの糸をたどって、たくさんの人が通行し、一気に立派な橋が敷設され、先達者は忘れ去られます。それは良いことです。名誉と名前だけがうまくすれば残るのです(とは言え、ピタゴラスの定理はピタゴラスに帰されるものではなく、ペアノの公理もクリプキによれば、ペアノに帰されるものではないそうで)。


最後にチャイティンの言葉を引いて終わります。

(引用開始)
 数学の分野は静的で恒久的な完璧さを体現したものであり、数学的なアイデアは非人間的で不変である、と言う人々には、ここで、私がまったく反対の意見であることを述べておくべきだろう。そうではなく、本書で述べている事例、知の歴史は、数学が常に進化し、変化しているという事実をよく示しているのだ。またそこからは、基本的で奥の深い数学的疑問に対してすら、我々の視野が、驚くほど思いがけない形で変化してきていることがわかる。必要なのは、新しいアイデアだけなのだ。あなたはただ着想を得て、新しい観点を発展させるために気狂いのように研究すればよい。はじめのうちは叩かれるだろう。だが、その観点が正しかったら、誰もが結局は、それが問題を考えるためのよりよい方法であることは明らかだったと、あなたの貢献は大してなかったと言い出すのだ。ある意味で、それこそ偉大な報酬だ。ガリレオに起こったのは、まさにこういうことだった。彼こそは、アイデアの歴史におけるこのような現象のいい例なのである。ガリレオがあんなにも激しくも戦って勝ち得たパラダイムシフトは、今や絶対的に、完全に、まったく当然の事柄と思われていて、彼が実際にどれだけ多くの貢献をなしたかすら、今では理解できなくなっている。我々は、この問題に対して、他の方法で考えることなどできはしないのだ。(引用終了)(グレゴリー・チャイティン「メタマス!」pp.15-16)


【書籍紹介!】
フェルマーの最終定理 (新潮文庫)/新潮社

¥853
Amazon.co.jp

フェルマーの最終定理/PHP研究所

¥1,188
Amazon.co.jp

フェルマーの大定理が解けた!―オイラーからワイルズの証明まで (ブルーバックス)/講談社

¥886
Amazon.co.jp

メタマス!―オメガをめぐる数学の冒険/白揚社

¥3,024
Amazon.co.jp


Viewing all articles
Browse latest Browse all 3544

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>