「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足。これは何か」というなぞなぞを出したのは、ギリシャ神話のスフィンクスですが(正しい回答を出して、退治したのがオイディプス王です)、ダンサーも腰で床にぺったりと座る状態からはじまり、4つ足を経て、3本足のバーレッスンを経て、2本足のセンターレッスン、1本足のピルエットを通過して、支える足は0本となり、すなわち空中に羽ばたいています。
なぜバーレッスンからバレエのクラスはスタートするのでしょう?
それが今回の主題です。
具体的に考えてみましょう。
バレエレッスンでは、ダンサーは早めにスタジオに到着し、ヨガマットなどを敷いてそこでウォームアップをスタートします。
ちなみにウォームアップやストレッチはパフォーマンスを下げるという研究はありますが、そこで行われているストレッチは筋肉を休ませる意味でのストレッチではなく、破壊行為でしかないためにパフォーマンスを下げるのだと「まといのば」では考えています。
スポーツマンたちがやるストレッチもどきは見るに耐えないものが多いです。身体のことを知らなすぎるのでしょう。プレイのことばかりで、身体の声を聞くことも、関節の可動について真面目に考えることもないのでしょう。必要もないのでしょうし。
そのような破壊行為としてのウォームアップであれば、やらないほうが身のためです。破壊行為は破壊行為なので、明確にパフォーマンスを落とします。しかし正しいストレッチは有効です(当然ながら)。ただそのいわゆる正しいストレッチができるのは、身体の柔軟性が非常に高い人だけです(多分)。
閑話休題
ダンサーはクラスレッスンの開始時間の30分前ほどにスタジオに到着して、静かにストレッチを始めます。大概はゴロゴロと床に転がりながら、開脚をしたり、仰向けで足を伸ばしていきます。ザハロワの動画がそのイメージを克明に伝えています。
バレエダンサーの場合は前屈や開脚などをチェックしていきます。
ちなみに新体操などはまた少し異なり、より強度の柔軟性を求められるために、より激しい柔軟体操をしていきます。背骨をペアでバキバキ鳴らしたり、関節などもかなり乱暴に慣らしている印象です(僕の知る限りでは)。暴力的で素早いストレッチです。
(と書いてきて、ふと思ったのですが、某世界的なプリマで器械体操出身であった方は、バレリーナとしては素早く攻撃的なストレッチでしたが、その背景には体操のストレッチがあるのかなと勝手に推測します)
床にぺったりとストレッチでウォームアップしたあとに、少し起き上がり開脚をしたりします。
セゴンなども確認して、
おもむろにクラスレッスンがスタートします。
シューズを履いて、
バーにつきます。
バーレッスンのバーはもちろん男性舞踊手の手を象徴しています。
象徴というか、そのものです。
ですので、バーである男性の手は握ってはいけなくて、必ず下に押さなくてはいけません。
ローズアダージオなどでバランスを取る時に、握られては男性も支えられません。手を真下に押されることで、男性は支えられます。下向きの力には強いのですが、左右に振られるのは弱いのです。ですから、バーは押すだけです。指は添えるだけで強く握ってはいけません。
バレエダンサーは両足で立ちますが、両足だけでは最初はバランスが取れないので、いわば3本目の足として、バーがあります。
バーレッスンを両手バーからスタートするのであれば、いわば四足です。
バレエの舞台には基本的にはバーはありません。
(もちろん演出として置いてある場合はあります。ハラルド・ランダーの代表作である「エチュード」などはバーレッスンの風景が幻想的に描かれています)
では、なぜバーを用いてレッスンをするのでしょう。
これは第三の足(もしくは第四の足)を得ることで、軸を助けつつ、バレエの動きの1つ1つを確認するためです。もしくは身体の細部を確認するためです。身体の細かな筋肉をきちんと調整し、きちんと使うべく確認していく作業がバーレッスンです。
*これはリンバリングですが、バーのイメージはつきやすいと思います。
バーレッスンは身体の確認作業というのは、言わば、もちろん当たり前の話なのですが、先の寺子屋「はじめての解剖学」と重ねて理解すると別な風景が見えてくるのではないかと思います。
寺子屋では解剖学を骨格を中心に身体を捉え直しました(来週、追加開催します(^^))
というわけで、稿を改めて、その知見とバーレッスンを組み合わせていきましょう!
ちなみにポイントとしては、スフィンクスの謎と同じく、バレリーナたちは足の数が変わっていくところです。
*骨格を正確に捉えるのが、身体運動のまさに「コツ」です。
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バーレッスンは何のためにあるの? 〜スフィンクスの謎とバレエのカラクリ〜
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