寺子屋の解剖学は追加開催がありますし、生化学も追加開催が決定しています。
同様にスクール修了生向けの「はじめての手帳」講座もこれから追加開催が開催されます。
これらに共通するポイントは、攻める時と守る時の見分け方かと思います。
攻めるというよりは、責めるというか、自分を追い込んでいき、プレッシャーをかけていく時期と、一方で強いプレッシャーや急(せ)く気持ちや焦りに対して、じっと耐えて待つ時期の見分け方です。
たとえば、開業にせよ、起業にせよ、独立にせよ、急いでやる必要がある人や、ある時期と、まだ今は待ったほうが良いという時があります。人生の大きな決断だけではなく、日々の小さな決断も同様です。
十五世名人であった大山康晴さんは(一度、千駄ヶ谷の駅でお会いしたことがあります)、一度目のチャンスをあえて見逃すと言われていました。二枚腰の粘りと言われ、終盤が二度あるなど名言があります。
と思って、Wikipediaを調べたら、その語録は感動的です。
*大山永世名人は金遣いの名手でしたが、好きな駒はと金であったように記憶しています。成金の中でも最も華やかに出世するのがと金です。
以下、大山永世名人の語録byWikipediaです。
(引用開始)
・よい道具を持て。
・助からないと思っても助かっている。(終盤で「もう駄目だ」というような局面でも、落ち着いて局面を見渡せば助かる手筋が見つかることが多いので、最後まであきらめずに指す事が大事である。元々は不調時に後援者から贈られた陶器に書かれていた言葉で、本人が気に入ってその後よく使ったもの。)
・平凡は妙手に勝る。
・一回目のチャンスは見逃せ。
・終盤は二度ある。
・最善形にしたらあとは悪くなるだけ。
・名人戦のような大きな勝負で変則作戦を用いるのは気合の充実を欠いているから。
・一時期強いというのは一時力(いっときぢから)といって誰にでもある。頂点を維持してこそ強者である。
・長所は即欠点につながる(前記バトルロイヤル風間との対談)。
・現役を引退すれば十五世名人の称号を許されることになったが、死ぬ前に墓を建て戒名をもらったようなもの。老いた父から「その十五世というのを5つ取れよ」と激励された。(永世名人資格獲得の就任式でのスピーチ内容[12]より抜粋)
・50の新人(いつまでも「過去の自分を懐かしんではいけない」という自分への戒めでもある)。
(引用終了)
一回目のチャンスは見逃せや、終盤は二度あるというのはご本人の語録でもあったことをいまさらながら知りました。平凡は妙手に勝るなども味わい深い言葉です。
この歳になると、鬼殺しや石田流のような派手な作戦よりも、二枚腰な大山将棋のほうが「強い」ように感じてきます。
夏目漱石が華やかな新人としてデビューした芥川龍之介に「牛になりなさい」と言ったのを思い出します。
(引用開始)
勉強をしますか。何か書きますか。君方は新時代の作家になる積でせう。僕も其積であなた方の將來を見てゐます。どうぞ偉くなつて下さい。然し無暗にあせつては不可ません。たゞ牛のやうに圖々しく進んで行くのが大事です
(引用終了)夏目漱石の手紙(久米正雄・芥川龍之介あて)
話を戻しますと、攻める時と守る時があり、その見極めが非常に重要だという話です。
端的に言えば、ぼんやりとして危機感がないときには、自分にわざとプレッシャーを増幅してかける必要があります。しかし、自我という巨大な関数の歯車が回りはじめてきちんと動き出したら、チョコチョコとして小賢しいプレッシャーはむしろ不要です。というか、害悪になります。
火事の中を冷静に避難するような冷静沈着さと、じっと耐えて時を待つ感覚が必要です。
象と象使いという言い方もありますが(象が無意識であり、感情やパッションであって、象使いが意識というメタファーです)、僕は巨大タンカーと船長のイメージです。巨大タンカーというのは方向転換するのに大きなエネルギーと長い時間が必要です。小回りが利く小さなモータボートとは異なります。
しかし、一度きちんと目的地を決めれば、オートパイロットで運航してくれます。船長は何もすることがありません。まさに「大器ハ晩成ス(老子)」ですね(ちなみにこれは老子っぽくないので、「大器は晩成せず」ではないかという説もあるそうで。そのほうが老子っぽいですね。永遠の未完という感じで)。
いま自分はどのフェイズにいるのか、そして何が必要なのかを見極めて、焦りの火をくべるべきなのか、冷静の冷水をかけるべきなのかを冷静に判断していきましょう。
いずれにせよ長い長い航海になります、時化(しけ)るときは時化(しけ)、凪(なぎ)の時は凪です。座礁したり、エンジントラブルを起こしたり、唐突に旅が終わることもあるでしょうが、後悔のない人生を送りましょう!
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焦って自分にプレッシャーをかけるべき時と、待つべき時とその勇気 〜と金と巨大タンカー〜
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