たとえ椅子になっていたとしても、それと気付くのが、可能世界における固定指示詞(Naming)の意味です。
Dr.Tは名前が違っていても良いとさえ言います。
その意味では「名前が何だって言うの」(ジュリエット)なのです。
What's in a name?
ひと目見れば分かるのです。
*草太もまた名字を覚えられない人です。宗像(むなかた)と言います。
「あのーどこかで会いませんでした?」というのはナンパのオープナーではなく、事実の叙述だったのです。
一目で彼だと分かった。あの日に皆が言えなかった言葉を、私はこれから言うのだとふと思った。彼が立ち止まる。私も自転車を止めた。海の匂いを深く胸に溜めて、
「おかえり」
と、私は言った。
初出(しょしゅつ)
本書(ほんしょ)は『小説(しょうせつ) すずめの戸締(とじ)まり』(角川文庫(かどかわぶんこ)2022年(ねん)8月刊(がつかん))をもとに、漢字(かんじ)にふりがなをふり、読(よ)みやすくしたものです。
「すずめの戸締まり」の小説版は非常に味わい深く、理解が立体的になります。
映画館でのひっかかりが解明されます。
そしてこの小説版に、子ども向けがあるのが素晴らしい!(忙しい大人にかわって、子供は繰り返し読んで、深く深く耽溺し、ついには自身の後ろ戸を見つけるのでしょう)。
ルビはルビーのようにキラキラとついているところから名付けられたとも言われますが、ルビがふってあることで僕らは安心して独り素読ができるのです。
数学(すうがく)の方程式(ほうていしき)にもきちんとふりがながふってあれば良いのにと思います。
(CGではふりがなをふります!)
ゲーデルの母は、アインシュタインとの友情を聞いて思わず感きわまったという。彼女はさっそく、アインシュタインの業績を勉強しはじめたが、それに対してゲーデルは彼女に手紙で、抽象観念を恐れることはない、最初はすべてを理解しようとしないで、小説を読むように進みなさい、と勧めている。
(ゲーデルの世界 海鳴社 p.14)
翻って、小説も同じです。
全てを理解しようとしないで、音楽を繰り返し聴くように楽しんで下さい!(映画も!)
補助輪は最初は助かります。そしてすぐに卒業していきます!
だから安心して、ルビのついた角川つばさ文庫の方を読みましょう!!(僕は両方買いましたw)。
【ブログ紹介】
ゲーデルの小説の比喩がらみで2つのブログを紹介!!