世界三大投資家の一人と言われるジム・ロジャーズに、作家の村上龍さんがこんな質問をしたそうです。
「壮大な旅と投資、あなたにとってはどちらがプライオリティがあるのですか?」
壮大な旅と投資、どちらもジム・ロジャーズにとって重要ものです。
ジム・ロジャーズは投資家であると共に、冒険家としても知られています。
そのどちらがプライオリティがあるのかという質問でした。
プライオリティとは優先順位などと訳されたりもします。
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ちなみにジム・ロジャーズがどれほどの冒険家かと言えば、たとえば、客観的な指標として面白いところで言えば、彼は2つのギネス記録を冒険で持っています。
1つはオートバイで世界6大陸を渡り走破によって、もう1つはベンツで116カ国を走破です。ジム・ロジャーズらしいスケールのでかいギネス記録です。
冒険に関してもいろいろと面白い話しがあるのですが、是非ジム・ロジャーズの書籍を読んでみてください。
投資家としても大成功しています。
3大投資家の残り二人はおなじみウォーレン・バフェットとジョージ・ソロスです。怪物ばかりですね。
投資家としても成功し、冒険家としても広く世界を見て(その知見を投資にもフィードバックして、また大成功し)、両方の世界があるジム・ロジャーズに対して、村上龍さんが聞きました。
再掲します(^o^)
「壮大な旅と投資、あなたにとってはどちらがプライオリティがあるのですか?」
それに対して、ジム・ロジャーズは即答します。
ちなみにこの即答がジム・ロジャーズの特長です。
即答はきわめて大事です。
(メンタリストのDaigoさんが、カリスマ性とは「質問の返しの速さ」であるというようなことをおっしゃっていました。海外の研究を元に。IQや性格ではなく、質問の返しの速さだそうで、面白いです)。
ちなみに「セミナーの作り方」講座などでは、この即答力の鍛え方を教えています。
すなわち質疑応答などで、受講生からの質問に対して、当意即妙に即座に回答する方法について語っています。
詳しくは「セミナーの作り方」講座などで学んで欲しいのですが、ポイントはシンプルです。
事前にQ&Aを大量に想定しておくことです。
多くの人はIQゆえに問題解決能力が高いと思いがちですが、実際はアンチョコがあり、それを即座に回答しているだけです。思い出しているだけなので、素早いのです。
逆にどんな質問にも即答できるという状態までに事前に準備しておくことが重要です。
そうすると質問に対してなめらかに即答できます。
多くの教師が質疑応答を嫌うのは、その場で考えなくてはいけないからです。
ですので、「質問はあとでまとめて受け付けます!」となってしまったりします(それはそれで1つのスタイルとして有りだと思いますが)。
まあ、それはともかくとして、村上龍さんはジム・ロジャーズがどんな質問にも即答すると言っています。
(引用開始)
ジム・ロジャーズはその人柄も会話の受け答えも非常に明快である。質問に対してはまるで答えを用意していたかのように、必ず即答する。
(略)もちろんジム・ロジャーズは回答を前もって準備しているわけではない。日常的に考え抜いているので、そのような正確な回答が可能なのだ(p.415)(引用終了)(村上龍解説)
で、「壮大な旅と投資、あなたにとってはどちらがプライオリティがあるのですか?」という質問に対して、彼は即答して、こう答えます。
プライオリティというのはそういった比較では語れない
と。
これは非常に重要だと思います。
プライオリティというと、全てのものに優先順位をつけることのような気がします。
しかし、ジム・ロジャーズは「プライオリティ」をそのように考えていないのです。
「プライオリティ」の定義がそもそも違うのです。
この言葉に対する繊細さが大きな違いを生みます。
またまた余談ながら、ジム・ロジャーズが面白いことを言っていました。
多くの人がウォーレン・バフェットがビットコインがチューリップ・バブルだと言ったことに対して批判するが、ウォーレン・バフェットほどの人が発言したことを軽視してはいけない、と言っていました。
僕自身も批判しました。
ジム・ロジャーズに言わせると、暗号通貨とブロックチェーンは別なものとして観るのがポイントだそうです。そしてブロックチェーンは残る、と。
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ここでも暗号通貨のベースがブロックチェーンだと考えて、両者を一体に結合させてはいけない、ということです(これはジム・ロジャーズの分析です)。
言葉に対して繊細なのです。
(ティールが「丁寧さ」というところですね)
話を戻します。
で、龍さんの「壮大な旅と投資、あなたにとってはどちらがプライオリティがあるのですか?」という質問に対して、「プライオリティというのはそういった比較では語れない」と即答したのです。
(引用開始)
ジム・ロジャーズは、プライオリティというのはそういった比較では語れない、と即答した。
「まずもっとも大事なのは、殺されないようにすること、二番目が人生を楽しむこと、三番目が世界を知ること。それがわたしのプライオリティです」(pp.416-417)(引用終了)
その時々に投資をするのか、旅をするのかはどうでもよく、どちらでもよく、まずは本当のプライオリティが優先されるのでしょう。
龍さんはそれを受けて、
「人生は本当はシンプルなものでむずかしくしているのはわたしたち自身なのだ」とおっしゃっています。
それにしても「殺されないようにすること」が第一というのは良いですね。
同様にバフェットも「まずは生き残ること」と言います。
(「破産」と「命を奪われること(死ぬこと)」は違うという主張される人は多いかもしれません。
その意味でバフェットとジム・ロジャーズが言っていることは異なる、と。
その主張は良く分かります。
ただ、情報は物理を残酷なまでに書き換えます。アメリカの人口動態で奇妙なほど白人の40、50代が減っているという話をよく橘玲さんはされますが、これは破産が死を意味するからです。もちろん論理的には破産はただのゲームの失敗であり、死ぬ必要はありません。しかし、それで自殺する人が多いのも事実なのです)
で、何が言いたいかと言うと、「殺されないようにすること」です。
バフェットの言うように「まずは生き残ること」が大切だと思います。
わかりにくいですが、ソクラテスは丁寧に忠告しています。
(引用開始)
諸君に対し、または他の民衆に対し敢然抗争して、国家に行われる多くの不正と不法とを阻止せんとする者は、何人といえどもその生命を全くすることができないであろう。むしろ本当に正義のために戦わんと欲する者は、もし彼がたとえしばらくの間でも生きていようと思うならば、かならず私人として生活すべきであって、公人として活動すべきではないのである。(引用終了)(『ソクラテスの弁明』)
これはかなり味わい深いアドバイスだと感じます。
(とは言え、彼もまた殺されました。死刑を賜りました。セネカが自分の教え子のネロから死を賜ったように、ソクラテスは民衆から死刑の宣告を受けました)
たとえばゴールを設定して、そこから逆算して、いまの行動を決めたとします。
そのときに「いや、それは危険だよ」ということは良くあります。
死ぬ可能性が高いよ、ということです。
だからこそ、「まずは生き残り戦略を考えよう」というケースは良くあります。
論理的に考えれば、いまやっていることを放り出して、ゴールに専心するのが良さそうに思えたりするのですが、それは破滅への道なのです。
会社をやめたり、離婚したり、恋人を放り出したり、多額の借金をして勝負したり、、、でも、盛り上がる前にまずは生き残り戦略を考えましょう。
まずは殺されないようにすること、その次に、人生を楽しむことですw
戦略的に考えること、そして長期的に「戦略」を考えることです。
いまの自分を過大評価せず、限りなく過小評価すべきです。しかしそんなちっぽけな自分でも積み上げていけば複利効果によって未来は期待できるのです。
現在の自分や少し先の自分への期待は最小値に設定して、未来の自分は最大限の期待をします。
(いまの自分を過小評価すると言うと、「エフィカシーが下がる」という人もいますが、そもそものエフィカシーの定義が「ゴール達成に対する自己評価」ですので、大丈夫です。エフィカシーは下がりません)
もちろん、退社や離婚が悪いというわけではありません。十分に冷静に考えて、長期的な戦略をもとにして考えて、その上で退社したり離婚したりは全く問題ありません。借金も同様です(事業戦略が明確にあって、銀行なりスポンサーを説得できたのであれば)。
ともかく生き延びることを考えましょう。
エッジ(勝算)が明確に見えていても、でも十分な資金と余力とエネルギーがなければ、破産して終わりなのです(ファインマンが胴元をやったときのように)。
「ヒーラーになりたいけど、生活が、、、」という人は自分の生活を見直してみると良いと思います。削るべきところを削り、長期的に習慣を構築しなおして、数年計画でヒーラーになるべくデザインすれば、1日1時間の勉強でもどんどん環境は変わっていきます。
インターネットにせよ、ゲームにせよ、テレビや新聞・雑誌などのメディアにせよ、無料かそれに近い金額によって、結果的に我々の時間と資産とエネルギーを奪うものはたくさんあります。
樽から水が漏れているのです。
その漏れを一つ一つ埋めていくことで、歩留まりがよくなり、その分のお金や時間やエネルギーを他に割けるようになります。
大きくドラスティックな変化というのは非常に魅力的ですが、結局物を言うのは小さな変更と小さな修正の積み重ねです。
そのときも「ゴール」も大事ですが、まずは生き残ることを考えることも重要です。
「安全なところで生きろ!」ということではありません。
Living on the edgeで全然構わないのですが、でも「生き残ること」を第一に考えましょうということです。
どんなに無茶に見えても、無謀ではダメなのです。冷静な計算と戦略が必要です。
たとえば、、、、「まといのば」のメンバーはマッサージサロンでのセラピストから独立したがります。気持ちはよく分かるのですが、そして力も十分にあると思いますが、でもいま独立したら死ぬ確率がきわめて高いのです。
(その予想を覆したいと思ったり、絶対に自分はできると思うのであれば、サロン勤務と並行してガンガン起業して集客すれば良いことです。サロンの収入の3倍を目安にして、そこまで安定的に稼げたら独立しましょう)(サロン勤務の現在のほうが、独立起業したあとよりもはるかに時間があると思った方が正確です。「サロンが忙しいので時間がない」は言い訳にならないということです)
人生は農業のようなものですから、肥料を大量に投下したところですぐに果実は得られません(むしろ根腐れするかも)。じっくりと向き合いましょう!!
それが人生のプライオリティです。