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Channel: 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ
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クリプキのご両親がつけた名前が様々な会話を通じて広がったその末端に我々はいる

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寺子屋「はじめてのクリプキ」の終了後の質疑応答でこんな質問がありました、クリプキの言う「結節点」とは何ですか?と。

赤ん坊が生まれ、その赤ん坊を両親はある特定の名前で呼びます。たとえば太郎なら太郎と。そして「うちの子は太郎と言うんですよ」と親戚や近所の人や、知人、そしてSNSで広めます。ツイッターにせよフェイスブックにせよ、お手紙にせよ様々種類の会話を通じてその名前が広がっていきます。
すなわち、誰かが「太郎くん」のことを口にしたということは、その赤ん坊の名前の広がりの中にいるということです。ですから、太郎くんが3600gで生まれたのか、何月何日に生まれたのかなどをよく知らなくても、太郎くんと名指す時点で、その太郎くんを指していることになるという話です。

まあ僕が言っても舌っ足らずなので、クリプキ様ご本人の説明を。

(引用開始)

誰か、例えば一人の赤ん坊が生まれたとしよう。その両親は彼をある特定の名前で呼ぶ。両親は、彼のことを友人たちに話す。他の人々が彼に会う。様々な種類の会話を通じて、その名前は結節点から結節点へとあたかも鎖のように広がっていく。この連鎖の末端にいて、市場かどこかでたとえばリチャード・ファインマンにことを聞いた話し手は、たとえ最初に誰からファインマンのことを聞いたのか、あるいはいったい誰からファインマンのことを聞いたのかさえ思い出せないとしても、リチャード・ファインマンを指示することができるだろう。(クリプキ 名指しと必然性 pp.108-109)

(引用終了)

で、講座で聞かれた質問は「ここでの結節点とは何ですか」というものでした。
ポイントはこの結節点とは「人」ですか、「場」ですかということです。

僕は会話なり出会いという場だと思ったのですが、結節点というと「人」というイメージもあります。

ちなみに原典を見てみるとこの結節点は「link」です。

点と線の数学をグラフ理論といいますが、グラフのノード(node)が点で、エッジ(edge)が線です(edgeというと端っこというイメージが僕にはあるので、少し混乱します)。またエッジのことをリンクと言ったりします。ですからリンクというと線のイメージがあります。しかしそもそものlinkという語彙は何かと何かをつなぐところというイメージなので、「結節点」という訳語がふさわしいと言えばふさわしいとも言えます。

ちなみに原典を見てましょう。

(引用開始)

Someone, let's say, baby, is born ; his parents call him by a certain name. They talk about him to their friends. Other people meet him. Through various sorts of talk the name is spread from link to link as if by chain.
(Saul Kripke Naming and Necessity p.91)

(誰か、例えば一人の赤ん坊が生まれたとしよう。その両親は彼をある特定の名前で呼ぶ。両親は、彼のことを友人たちに話す。他の人々が彼に会う。様々な種類の会話を通じて、その名前は結節点から結節点へとあたかも鎖のように広がっていく。)(同上)


(引用終了)

僕自身の解釈としては、このlinkはむしろchainのlinkすなわち鎖の輪のようなものと考え、この結節点は「会話」で良いのではないかと思います。

人を副次的な存在として無視して、会話の連鎖による広がり(口コミの広がりのような)だけを見ていくと、最初に親が子供に名付けて名指す(名前を呼ぶ)鎖がスタートラインであり、そしてそれを耳にして、それを口にする我々がその鎖の末端であるということです。

我々がクリプキ様と名を口にするときは、クリプキ様のご両親が名付けて、その名で呼び(いやファーストネームで呼ぶでしょうというようなツッコミはさておき)、その名がコミュニティの中で連鎖して(まさに鎖が連なって)広がり、そのコミュニティの末席に我々がいて、その鎖を持っているということです。その鎖をたどればクリプキ様ご本人にたどりつけるのです。ですから、我々がクリプキ様の「様相論理の完全性」の証明を知らなくても、その可能世界論を良く知らなくても、クリプキ様を名指すことができるということです。そのことで一意的に固定することができるということです。

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