オンラインメンターも大所帯になってきたので、質問も多岐にわたってきました。
非常に幅広くて、回答する側としては非常に楽しいです。
もちろん何でもいつでも質問していただいてOKです。
答えられるものは答えますし、答えられないものは答えられませんので(*^^*)
で、回答にあたって意識していることはシンプルです。
出来る限り、質問者ご本人の利益を最大化したいということです。
(後述しますが、利益の最大化のためには、解答をすぐに渡さない方が良い場合ももちろんあります。問題の「分かりやすい解答と解説」が利益の最大化につながらないことは往々にしてあります)
そのために2つのことを意識しています。
ひとつはいわゆる「啐啄同時(そったくどうじ)」です。
鳥の雛が卵から産まれようとするときに、雛は卵の中から殻をつつき(啐)、親鳥は外から卵の殻をつつきます。この息があっていると、無事に生まれるという禅の用語です。
雛だけががんばっても疲れ果ててしまい、親鳥が先行しても雛の準備ができておらず殺してしまう、、、。
2人(二羽)の息があって、はじめて孵化するというのがこの禅の用語の卒啄同時です。
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*とは言え、現実には、これは麗しきメタファーというか嘘でしかありません。雛は殻を自分で割るものです。自力で卵を割れない雛は、親鳥から手伝ってもらったとしても、外の世界で生きていくことはできないので。まあ、禅らしい頭でっかちな物言いなのかもしれません。
とは言え、この概念は使いやすいので、鳥たちの冷ややかな視線を尻目に、用いるとします。
で、メンターなどでの質問においては、この卒啄同時はかなり意識しています。
いまのタイミングとチャンスを最大化するにはどうすべきか、と。
何かを知りたいというWant toの瞬間は飛躍のチャンスです。
そのときに適切なアドバイスや情報や知識を入れれば、孵化だけではなく、羽ばたくことができます。
一方で、ソクラテス主義とでも言うものも意識しています(ソクラテス主義とはいま勝手につくりました)。以前、こんな言葉を紹介しました。
学ぶことの最大の障害は答えを教えることではないか?
答えを教えることが「学ぶことの最大の障害」となるというのは、経験的にもそうだと思います。
*ソクラテスはひたすらに問い続けることで、真理に至らせようとしました。
*答えを外から与えるのではなく、答えを内から引き出させる産婆術です。Educationの語源がラテン語のeducatioであり、資質を引き出すというところから来ています。ソクラテスも引き出したのです。その発想が明瞭なのは、我々がイデア論として記憶している洞窟の比喩です。あの議論の中心概念は本来は教育についてでした。
(引用開始)学ぶことの最大の障害は答えを教えることではないか?それは、自分で答えを見つける機会を永久に奪ってしまうからである。自分で論理的に考えて、答えを見つけ出すのが、人が学ぶための唯一の方法だと私は信じている。(引用終了)
*ちなみに、こちらの記事で紹介しました。
「でも、あなた、気をつけて。ソクラテスが最後にどうなったかを知っている? 毒を飲まされたのよ」
2017-01-23
どうしても答えを知りたい問いを1分考え、解答編を見たい誘惑にかられながら(もしあるなら)、5分考え、、、、1時間考え、寝ても覚めても考え続け、数ヶ月後に回答を見出したときの感動はたまりません。そんな経験は誰もがしているものです。
それが詰将棋であっても、なぞなぞでも、Z会の数学の問題でも同じです。
*脳が煮立つくらいに、爆発するくらいに考え続けましょう!!寝ても覚めてもその問題が離れないくらいに。
逆に、オンラインメンターで、僕がすぐに答えを与え、すぐに方法論を教え、すぐに考え方を教え、すぐに参考文献を教えることが、果たして教育的なのかはいつも悩みます。
資源が潤沢であること、無駄な回り道をしないで済むことが、加速学習に最適だと僕自身は信じていますので、全技術を最初の最初に伝授してしまい(一年のカリキュラム修了時でも良かったわけで)、そして質問も無制限で受け付けています。
しかし、それが考え続ける機会を奪っているのであれば問題だと思っています。
良い方法は強烈なゴールを見つけることです。
その強烈なゴールは膨大な質問を自分に突きつけ続けます。
それはオンラインメンターで質問できる量をはるかに凌駕しています。
そうであれば、何日も何ヶ月も考え続けられる質問を自分に内に持つことができますので、安心してガンガン質問できますし、僕も安心してガンガン答えられます。
先日のセミナー「天才の作り方」の天才つながりで言えば、天才アインシュタインは自分のことをこう言っています。
「私はそれほど賢くはありません。ただすこしだけ長く問題と共にいただけです。」(It's not that I'm so smart, it's just that I stay with problems longer.)Wikiquote
言い換えるならば、「重要なことは問い続けること。好奇心はそれ自身が存在する理由がある」と
(The important thing is not to stop questioning; curiosity has its own reason for existing.
(Albert Einstein))
考え続けることです。
重要なことは考え続けることです。
ケインズがニュートンを評してこう言いました。
「ニュートンは一つの問題を数時間も、数日も、数週間も、ついにそれが彼に秘密を打ち明けるまで、心の中に持ち続けることのできる人であったかとおもう。」
*考え続けているからこそ、リンゴが落ちたことが大問題であると見えるのです(これがニュートン自身がつくりだした逸話であることは重々承知としても)。
「一つの問題」とは我々のコンテキストに引き寄せて言えばGoalです。
どうやってそのどうしても叶えたいでも不可能としか思えないゴールを叶えられるのかをありとあらゆる角度から、ありとあらゆる方法で考え続けることです。
その過程は「何カ月ものあいだ闇の中で躓きながらさまよ」うことです(おなじみのアンドリュー・ワイルズの言葉です。フェルマーの最終定理を解きました)。
何ヶ月も、何年も、何十年も、です。
*ワイルズが最初にケンブリッジで「フェルマーの最終定理」の証明を発表した瞬間。
光が見える保証は無い中で、長いこと闇の中に埋もれる覚悟があり、闇の中で死んでも悔いはないというゴールを見つけましょう。
そしてその闇の中での過程こそが、本来の喜びなのです。
旅は目的地に着くことだけではなく、その過程もまた喜びなのです。
というわけで、強烈なゴールを設定し、そしてガツガツ質問して、ガツガツ進化していってください!!!
【書籍紹介】
学ぶことの最大の障害は、、という引用はこちらから。
ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か/ダイヤモンド社
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コミック版もあります。
ザ・ゴール コミック版/ダイヤモンド社
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ケインズのニュートン評はおなじみですが、こちらからの引用です。
ケインズ全集 第10巻 人物評伝/東洋経済新報社
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人物評伝 (岩波現代叢書)/岩波書店
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「何カ月ものあいだ闇の中で躓きながらさまよった」というアンドリュー・ワイルズの言葉はこちらのサイモン・シンの「フェルマーの最終定理」からの孫引きです。
こちらの記事でも紹介しました。
どうやったらIQは上がりますか?「誰もが天才だ。 しかし、魚は...」 2013-07-31
フェルマーの最終定理 (新潮文庫)/新潮社
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問いそのものが重要であり、明確な解答を得ることに価値はない、ということで言えばラッセルを思い出します。「問いに対して明確な解答を得るために哲学を学ぶのではない。なぜなら、明確な解答は概して、それが正しいということを知りえないようなものだからである。」と述べています。
哲学入門 (ちくま学芸文庫)/筑摩書房
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それゆえ、哲学の価値に関する議論は次のようにまとめてよいだろう。問いに対して明確な解答を得るために哲学を学ぶのではない。なぜなら、明確な解答は概して、それが正しいということを知りえないようなものだからである。だから問いそのものを目的として哲学を学ぶのである。なぜならその問いは、「何がありうるか」に関する考えを押し広げ、知的想像力を豊かにし、多面的な考察から心 を閉ざしてしまう独断的な確信を減らすからだ。
ラッセル先生が気になったら、西洋哲学史をゆっくりゆっくり10年くらいかけるつもりで読むと面白いと思います!!
哲学の本を一冊だけ選ぶとしたら、、、こちらのシリーズでしょう(一冊ではなく3分冊ですがw)。
西洋哲学史 1―古代より現代に至る政治的・社会的諸条件との関連における哲学史 (1)/みすず書房
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西洋哲学史 2―古代より現代に至る政治的・社会的諸条件との関連における哲学史 (2)中世哲学/みすず書房
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西洋哲学史 3―古代より現代に至る政治的・社会的諸条件との関連にお 近代哲学/みすず書房
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啐啄同時(そったくどうじ)と「答えを教えることが学ぶことの最大の障害」というジレンマ
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