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Channel: 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ
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すべての変化は寂しさをともなう。私たちが捨ててゆくものは私たちの一部なのだ(アナトール・フランス

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いみじくも行動経済学が示したように、われわれは得ることの喜びよりも失うことの痛みのほうが大きいのです。

自分が持っているものはゴミであったとしても、手放したくなく、大きなチャンスと小さなゴミを天秤にかけて、ついゴミを選んでしまったりします。

見知らぬ天使よりも、見知った悪魔を選ぶ、などとも言います。
ゴミや悪魔や不幸や痛みや無知を手放すのが何よりも辛いのです。

カーネマンたちはそれを損失回避性と呼びました。

ギャンブルをしようとするとき、賭けに負けると50万失うとしたら、賭けに勝つときに100万以上を手にしない限りはそのギャンブルそのものにトライしないのです。
まあ、ギャンブルは消毒された確率でしかなく、得られる上限がありますのでもちろん賭ける必要は無いのですが、人生を賭けようとするときは、それが良いブラック・スワンであれば、得られる価値は天井知らずです。




であれば、本来は損失回避性が頭を出す必要が無いのですが、多くの人は先が見通せず、ブラック・スワンを見るのに不自由なので、betする(賭ける)ことができません(少しの知識と抽象度があれば、先を見通せます。そして世界とはそのような構造であると知っていれば、挑戦を厭わなくなります)。

気功の世界に飛び込むというのも大きな痛みと喪失を覚えるものです。

熱心に学んでいる人は痛感していると思いますが(まさに痛いほどに感じて)、世の中の常識やいままで自分が信じてきたことがガラガラと音をたてて崩れ、これまでの努力が無駄であった理由が明確に分かります(それはそれで絶望的な気分になりますが、そのときに「サンク・コスト」という考え方を導入すれば、無駄であった努力を嘆いたり、そこからあさましくも何かを回収しようなどと思わなくなります。逆説的ですが、そう見切った方が、「無駄な努力」から大きなギフトを回収できたりします。ざっくりといえば無駄な努力や失敗の経験は人生の肥やしになるのです。わかりやすく言えば、抽象度が上がれば、自分の失敗が他人の経験値になるのです。ヒーラーが教師として自分の経験から失敗をきちんと語れば、それは次世代の転ばぬ先の杖となります)。

痛みを強く感じているときは、自分のゴールは一体何かを再度問いかけることです。
痛みを避けたいのがゴールではなく、何かを得るために積極的に「痛み」を引き受けるつもりであった初心を思い出すことです。

まあ、もちろん、それでも痛みはおさまりません。


そのときは、村上春樹さんが紹介しているこんなマントラはどうでしょう?

Pain is inevitable. Suffering is optional.(痛みは避けがたいが、苦しみはオプショナル(こちら次第))(村上春樹『走ることについて語るときの僕の語ること』)

「きつい」というのは避けようのない事実だが、「もう駄目」かどうかはあくまで本人の裁量に委ねられている、と春樹さんは解説しています。


そしてもう1つ。
AmyCuddyはこんな言葉を紹介しています。
痛みを感じたときは、これをつぶやくことで、心のざわめきが落ち着くかもしれません。


あ、ちなみにAmy Cuddyとはセミナーなどで何度か紹介しているかと思いますが、スーパーマンのような格好をすることで、スーパーマンのようなパワフルになる!という人です。いや、スーパーウーマンですねw
(とは言え、最近のスーパーマンは個人的な心の闇を抱えているようですが...。スーパーマンもスーパーマンである振りをすることで、スーパーマンになるのです)
(「スーパーマンのようにとは?」と思うかもしれませんが、彼女はポーズを取る前後に唾液を調べることで、コルチゾールが下がり、テストステロンが上がっていることを示しました。面白いです)




ちなみにエイミーカディはハーバード、ケリー マクゴニガルはスタンフォードです。
容姿や性別、美貌について語るのは政治的には正しくないのでしょうが、語りたくなりますw


*Youtubeは英語字幕ですが、TEDでは日本語字幕があります。


エイミーカディはこのTEDレクチャーによって、一気にスターダムに駆け上がり、そして本を書きました(このTEDレクチャーは非常に感動的です。個人的で深い自己開示こそが世界を動かすというのが良く分かります。人は抽象度だけでは動かないのですw)。

その本の中で、アナトール・フランスを引いています。


すべての変化は寂(さび)しさをともなう。私たち捨てゆくものは私たちの一部なのだ。新しい生活に入るためには、それまでの生活に対して死ななければならない




ちなみにエイミーカディの一連の主張は我々に引き寄せて考えるならば、

Assume a virtue if you have it not.
(もっていないのなら、せめて持っている振りを)(シェイクスピア『ハムレット』)

であり、

イエス・キリストを着なさい(ロマ書)

です。

彼女は、

Fake it 'till you become it.

と言います。
そしてその具体的な方法として、パワー・ポーズを取ることを進めます。
ボディ・ランゲージはランゲージよりも雄弁なのです。
(我々の言い方であれば、姿勢であり所作です)




そしてそのプリンシプルはプレゼンスです。
しかしプレゼンスとはスピリチュアルな概念であり、途方も無いものです。
だからこそ我々は「イエス・キリストを着て」持たないVirtueを持っているように装うのです。

ウィリアム・ジェイムズは「幸せだから歌うのではない。歌うから幸せなのだ」と言いました。
(そう、アランは「しあわせだから笑っているのではない。むしろぼくは、笑うからしあわせなのだ、と言いたい」と幸福論で書いていますw)



そして、まさにこの"fake it"が肝です。
Fakeで良いのです。
というか、Fakeが良いのです。
最初は誰もがFakeです。

しかし逆にFakeであることに悩まされる人も多くいます。
自分が詐欺師(impostor)のように感じる、と。
それも圧倒的に能力があり、成功している人に多くいます。

自分にはいまの地位にふさわしい能力はなく、賞賛される言われもなく、そしていつかその化けの皮が剥がされるのではないかと思っている、、、そんな人が多いということです。特に成功している人にです。

エイミーも書籍の中で紹介していますが、ハーバード出身の女優であるナタリー・ポートマンは、2015年の卒業生に対する祝辞でこう述べています(ポートマンもまた心理学専攻です)。自分がここハーバードにいるのにふさわしい人間ではないと繰り返し思った、と。

"Today I feel much like I did when I came to Harvard Yard as a freshman in 1999, I felt like there had been some mistake, that I wasn’t smart enough to be in this company, and that every time I opened my mouth I would have to prove that I wasn’t just a dumb actress."
ログミーが全文翻訳してくれています!


我々も同じです。

成長しようとすると、様々な障害にぶち当たります。
その最大のものは、内なる自分の声が「お前はそれをできない」「お前にはふさわしくない」とささやくことです。
そしてたとえ成功したとしても、運が良かっただけで実力ではないとささやきます。

それに対しては、
Assume a virtue if you have it not.(もっていないのなら、せめて持っている振りを)(シェイクスピア『ハムレット』)
とうそぶき、そして、

Fake it 'till you become it.

とパワー・ポーズを取りながら、大きな声で叫びましょう。



そしてそれでも残る一抹の寂しさに対しては、


すべての変化は寂(さび)しさをともなう。私たち捨てゆくものは私たちの一部なのだ。新しい生活に入るためには、それまでの生活に対して死ななければならない
(アナトール・フランス)


とつぶやき、捨てゆくものを愛おしみながら手放しましょう。



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マクゴナガルについてはこちらのTEDレクチャーを以前にも紹介しました。意志力のときですね。


僕が考えるポイントは「過負荷の原理」であり、ニーチェの「私を殺さないものが私をいっそう強くする」です。


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蛇足ながらケリー・マクゴニガルの姉妹であるジェーン・マクゴナガルの著書です。
TEDレクチャーから入るとより共感できるかと思います。
僕はこのマクゴナガル姉妹をそれぞれバラバラには知っていたのですが、お恥ずかしいことに今回はじめて姉妹って認識しました(・_・;)

スーパーベターになろう!──ゲームの科学で作る「強く勇敢な自分」 (早川書房)/早川書房

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