バレエだけではなく、ヨガでも同様ですが、身体がゆるむと古傷が浮かび上がってきます。
古傷が痛むとき、きちんと引き上げをすると、身体の負担が激減し、そして痛みもまた少し楽になります。気を抜くと、痛みが悪化し、きちんと引き上げると、また痛みが消えるという繰り返しによって、「ああ、引き上げとは本当に大切なのだな」ということが文字通り身を持って知ることができます。
ちなみに、「引き上げ」とはバレエで慣用的に使われる用語です。解剖学を学ばれた方はしばしばこの「引き上げ」という概念を嫌いますが、それも当然です。解剖学の1つ上の系に「引き上げ」という概念はあります。筋骨格のすべてを用いるので、要素にしか興味が無いと「引き上げ」は見えてきません。音符1つ1つをいくら分析しても、音楽が分からないのと同じです。基本的には、引き上げとは、すべての関節を引き伸ばすイメージです。それだけのことです。誤解されがちですが、関節を曲げていても、伸ばしていても関係ありません。関節の間を広げるイメージです。特に脊椎などは重力に拮抗して引き伸ばすので、グニャグニャと曲がっている状態から、真っ直ぐな状態に近くなります。これが「引き上げ」です。
「古傷」に話を戻します。
「古傷が浮かび上がる」というのは、慣用的な表現でしかなく、実際はずっと傷めている状態が継続しているものの、その痛みなどのメッセージがマスキングされて長年あったのが、そのマスクが取れたということです。もちろん古い傷が治癒せず残るわけもなく、これも慣用的な表現で、実際は傷やケガが問題なのではなく、そのようなケガをしてしまうような身体の使い方が問題です。
ヒーラーから見て、その身体の使い方は痛くありませんか?というような無茶な(強いて言えば関節を逆方向に使うに近い)使い方をされていて、そしてきちんとケガされていて、そして慣れすぎていてそのケガがマスキングされている方は多くいらっしゃいます。
すなわち古傷とは、古い傷ではなく、長年の悪い身体の使い方の癖によって、毎回ケガをしては、身体は健気にそれを一生懸命治し、そしてまた身体の悪い使い方によって壊すという繰り返しがホメオスタシス化しているものと言えます。ホメオスタシス化というのは、それが通常になっており、癖になっているということです。身体のダメージは大きいのですが、その問題が意識に上らないので、意識にとっては、問題が無いと見做されてしまいます。だから対応が遅れます。
身体を正しく鍛えたり、きちんとケアしだすと、そのマスキングが外れます。身体がきちんとゆるんでくると、古傷が浮いてくるように、薄皮をはがすように懐かしい痛みがぶり返してくるのを感じます。このような痛みが出てきたときは、どうすれば良いかと言えばシンプルです。
痛みを正しく見つめながら、どう動けば(どう動かせば)この痛みは変化するだろうかとアプローチします。「正しく見つめる」というのは、変なバイアスや思い込みを入れないということです。痛みは痛みとして単なる情報として見るということです。そして「変化」というのは、大きくなっても、小さくなってもどちらでも良いということです。痛みが動けば良いのです。
この作業を細かく繰り返していくと、見えてくるのは、シンプルな身体の使い方です。
Yogaではないですが、「身体は車」なのです。身体はタンパク質と脂肪と水と糖と微量元素で作られている有機的な機械(マシン)です(有機、無機の違いはありませんが)。とすると、ただしい機械の使い方はかなり一意的にしぼりきれるのではないかと思います。
それは、昔からの智慧でしかなく、「引き上げましょう(背筋を伸ばしましょう)」「手先、足先を伸ばしましょう」「ゴールだけを見て、無意識で動きましょう」「脱力して自然体でいましょう」「よく見てから、ギリギリで動きましょう」などのシンプルなことになるのではないかと思います。
ハタという爆発的な力の運用も昔ながらの智慧の1つです。
爆発的な力の発揮の記憶を情報として、うまく運用することで、身体を大きく書き換えていくことができます。脳の発火が神経線維を通じて筋肉に伝えられ、それが化学的なエネルギーに変えられ、それが筋肉の収縮という運動エネルギーに変換されます。情報が物理になる場が筋肉ということです。
(ちなみに余談ながら、ハタに慣れてきたら、ハタが強烈な引き上げを生じさせることが分かります)
ちなみにもっと余談ながら、「なぜ身体を鍛える必要があるのですか?」と先日のセミナーでふと聞かれましたが、「心」「脳」「身体」が視点の違いだけで、同じものであるということを知っているのであれば、「なぜ脳を鍛える必要があるのですか?」という質問と同義です。別に必要はありません。希望があるだけです。
バレエだけではなく、Yogaでも圧倒的な身体を創りあげていきましょう!!2月に1期追加スクールを緊急開催!
↧
ケガをしたときこそ、引き上げの重要性が分かる
↧