僕が子供の頃に一番初めに知った哲学者の名前はデモクリトスであったように思います。
当時は原子物理学に夢中で(そういう時代でしたし)、アトムという言葉が「ア・トム(分割できない)」というギリシャ語から来ており(「トム」が分割で「ア」が否定辞)、それを提唱したのがデモクリトスという古代ギリシャの哲学者であったと記されていました。
鉄腕アトムの名の由来となったアトム(原子)がデモクリトスから来ているというわけです。
高名な物理学者(ループ量子重力理論)のカルロ・ロヴェッリは「デモクリトスの全著作の散逸は、古代文明の崩壊のあとに起こった、人類の知をめぐるもっとも大きな悲劇ではないだろうか」と言います。
その上で、
残念ながら、わたしたちに残されたのはアリストテレスばかりである。
と嘆きます。
続けてこう言います。
西欧の思想はアリストテレスを基礎にして再建された。そこにデモクリトスの居場所はない。おそらくデモクリトスの著作がすべて残り、アリストテレスの著作がすべて散逸した方が、わたしたちの文明はより良い知の歴史を築けただろう。
とまで言い募ります。
ちなみにカルロ・ロヴェッリも指摘しており、寺子屋でも(ファインマン講座で)言及したように、ファインマンはこんな風に言っています。
すべての物理学の知識がなくなったあとに、漫画のストーンエイジのようにゼロから現代の物理学の知識を得るためにたったひとつだけ知識を残して良いとしたらという問に対して、ファインマンは原子仮説だと言います。
すべては最小単位のある粒(原子)でできているという知識だそうです。
そこから十分な知性があれば、復元できると。
そのデモクリトスの写像の写像、伝言ゲームによるぼんやりとした像がルクレティウスによる「事物の本質について」です。
そう、ナシーム・ニコラス・タレブが重視するあのローマの詩人のルクレティウスです。
ルクレティウスはデモクリトスの弟子の弟子にあたるエピクロスの哲学を信奉し、エピクロスのベースはデモクリトスの原子論です。
ですので、伝言ゲームとしては、こうです。
デモクリトス → エピクロス → ルクレティウス
そしてルクレティウスはニュートンのようにこう書いています。
わたしはこれから、自然がいかなる力をもって、太陽の運行や月の漂泊を司っているかを説明しよう。空と大地のあいだに伸びる自らの行路を、太陽や月が自らの意思で移動しているなどと考えないで済むように。または、太陽や月が、なんらかの神慮によって回転しているなどと考えないで済むように。(ルクレティウス「物の本質について』)
「太陽や月が自らの意思で移動しているなどと考えないで済むように」、ニュートンは万有引力の法則を発見しました。
ちなみにルクレティウスは紀元前1世紀の人(紀元前99年頃〜紀元前55年)。
エピクロスは紀元前4世紀の人。そしてデモクリトスは紀元前5世紀の人(アリストテレスは紀元前4世紀)。
そのルクレティウスも真っ直ぐに伝わったのではなく、タイムカプセルによって、15世紀にドイツで写本が発見されます。
それが「物の本質について」(ルクレティウス)です。
これは「ブラック・スワン」のナシーム・ニコラス・タレブでもおなじみです。
我々はいつも車輪の再発明をしていて、優秀な人の優秀な考え方というのは、なかなか伝わらず、何度もストーンエイジ(石器時代)に逆戻りします。
オルテガが言ったように、ほんのわずかな人々が消滅するだけでも、数千年にわたり積み上げてきたものが消えます。
ダ・ヴィンチやミケランジェロは解剖学に基づいて、彫刻や絵画を描きましたが、それは古代ギリシャにとっては当然のことでした。それを復興したのがまさに文芸復興であるところのルネッサンスです(逆にロダンはあえて解剖学を無視したりします。解剖学を知りつつも、芸術性を優先して無視します)。
という話をしたかったのではなく、、、、(@_@;)
いや、それもしたいのですが、長くなります。
今月の「まといのば」講座は整体系で開催する予定でしたが、大きく転換します!
内容としては、時間は存在しないという議論を熱力学と情報理論双方のエントロピーから整合的に考え、そこから「世界は存在しない、しかしユニコーンは存在する」を物理学的に読み解きたいと思っています。
すなわち、「世界は存在しない」「時間は存在しない」ついでに「空間も我々が考えるような形では存在しない」ということを、現代哲学と現代物理学の両方から考えます!
テーマというか、タイトルはかなり悩んだのですが、、、、
たとえば
「世界は存在せず、時間も流れない、しかしユニコーンは存在する」講座
とか、
「熱力学とエントロピーから考える時間の矢とその非存在性」講座
みたいに無駄に長いタイトルになってしまい、あまりキャッチーではないので、初心に返って、講座のゴールを丁寧に考えてみました!
講座のゴールは、時間を自在に操ることです。
というのも、存在しない時間ではあっても、過去の痕跡はあり、時間が流れているという体感は存在する。我々の生は有限であり、時間と呼ばれる現象が希少であることには変わりはないわけです。
ですので、我々は自分に流れる時間を稠密にしたいのです。
自分だけの「精神と時の部屋」(ドラゴンボール)を持ちたいのです。
というわけで(どういうわけだw)、
時を操ると言えば、
アベンジャーズのDr.ストレンジでしょう!!
ということで、
Dr.ストレンジ講座としました!!
【まといのば講座『Dr.ストレンジ講座 〜時間を自在に操るための哲学と物理学〜】
【日時】 11月28日(木)19:00~22:00
【場所】 四ツ谷のセミナールーム(丸ノ内線四谷三丁目駅、都営新宿線曙橋駅が最寄り)
【受講料】 30,000円(PayPal決済可能です。請求先アドレスを記載してください)
【受講資格】 「まといのば」セミナー受講生(もしくはそれに準ずる方、他で「まといのば」の主宰のセミナーを受けている方もOKです)
【持ち物】 情熱とゴールと筆記用具
【お申し込み】おお申し込みはこちらから!!
【書籍紹介】
引用はこちらから!
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文庫版だそうです!
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カルロ・ロヴェッリの他の著作も!(一冊読めば同工異曲ですので、読みやすいかと!)
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そしてルクレティウスですね
アリストテレスもデモクリトスも残ってほしかったです。
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タレブの本もすべて読んでおきたいですが、一応、ブラック・スワンを押しておきます!
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