いろいろとここに書きたいことが溜まりすぎてしまって、頭の中が交通渋滞しています。
なるべく新鮮なうちに書かなければ、熟れた果実も腐ってしまいます。
何事もタイミングです。そのタイミングを逃したまま、悪い連鎖反応に陥っている気がします。
というわけで、無理矢理に書いていきます!!!
まずは映画『ゲディ家の身代金』!
めっちゃ良い映画なのに、寡聞にしてまったく評判を聞かない気がしますが、リドリー・スコットの最新作で、面白い映画でした。
世界一の金持ちであり、歴史上最も金持ち(当時)であるゲディの孫が誘拐されます。
それも最も可愛がっていた孫が。
しかし、彼は身代金の支払を拒否します。「テロリストとは交渉しない!」わけではなく、単にケチだったからという興味深すぎますが、実話です。
ただ「自分には14人の孫がいる。一人に身代金を払えば他の13人が誘拐される」という論理はそのとおりです。そして当時のイタリアでは誘拐犯に身代金を支払うことは違法でした。
*主演のゲディ役のケヴィン・スペイシーがセクハラ騒動で降板したのが、全米公開の2ヶ月前。そこからクリストファー・ブラマーに依頼して、再撮影(それも9日間で!)からの編集して公開に間に合わせたそうで(もっと驚いたのは、マーク・ウォールバーグは5日しか取れなかったということです)。
非常に面白い映画なのですが、その中でゲディがこんなことを言っています。
私がHow to be richという本を書いたときに、編集者がHow to get richと書き換えた、と。
でも金儲け(To get rich)は簡単なんだ、Richになる(Being rich)のが難しいのだ、と。
Richと金持ちをルータイスも分けて議論していました。
味わい深いです。
哲学を学ぶのは「失業に向かってまっしぐらに進み、地球上でもっとも高い教養でもっとも低い収入を得る方法」だとピーター・ティールの親友は言います(しかしこの親友はティールの最も新しい会社の創業メンバーでCEOです。その顧客は国家です)。
たしかに哲学によって社会を革命しようとしたユダヤ系ドイツ人は貧困の中、亡命先で死にました。
彼はこんな風に言いました。
「哲学者は世界を解釈するが、肝心なのは世界を変えることだ」(カール・マルクス『フォイエルバッハに関するテーゼ)
*マルクスの墓です。そこに有名な「万国の労働者よ、団結せよ」と「哲学者たちはこれまで世界をさまざまに解釈してきただけである。問題は世界を変革することである」という言葉が刻まれている
「哲学は解釈しかしない」という批判はそのとおりで、若きマルクスが学び(そして決別した)ヘーゲルはこんな風に言っています(マルクスが学んでいる時代に、まだヘーゲルは生きています)。
ミネルヴァのふくろうは、黄昏時に飛び立つ、と。
哲学は来るのが遅いとヘーゲルは明確に言っています。
(引用開始)世界がいかにあるべきかを教えることにかんしてなお一言つけくわえるなら、そのためには哲学はもともといつも来方がおそすぎるのである。哲学は世界の思想である以上、現実がその形成過程を完了しておのれを仕上げたあとではじめて、哲学は時間のなかに現れる。(略)
哲学がその理論の灰色に灰色をかさねてえがくとき、生の一つのすがたはすでに老いたものになっているのであって、灰色に灰色ではその生のすがたは若返らされはせず、ただ認識されるだけである。ミネルヴァのふくろうは、たそがれがやってくるとはじめて飛びはじめる。(引用終了)(法の哲学)
マルクスは「世界がいかにあるべきかを教えることにかんして」「現実がその形成過程を完了」するどころか、その前に構築しました。
この映画はマルクスを知る上では良い映画だと思います!
そう考えると映画は最高です。
ここで紹介したもののも少し思い出すだけで、フロイト(『危険なメソッド』)、チューリング(『イミテーション・ゲーム』)、ラマヌジャン(『奇跡がくれた数式』)、ルノワール(『ルノワール 陽だまりの裸婦』)、ホーキング(『博士と彼女のセオリー』)、ハンナ・アーレント(
『ハンナ・アーレント』)、トルストイ(『終着駅』)、モーツアルト(『アマデウス』)、パガニーニ(『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』)、マーガレット・サッチャー(『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』)、ロダン(『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』)リンカーン(『リンカーン』)、安倍晴明??(『陰陽師』)、イギリス王ジョージ六世(『英国王のスピーチ』)、マーク・ザッカーバーグ(『ソーシャルネットワーク』)と目白押しです。
映画の中で、若きマルクスが無政府主義者の父と呼ばれたジョゼフ・ブルードンを批判するシーンが印象的です。ブルードンが「所有とは盗みである」と定義するのに対して、では所有物の窃盗とは何かと問います。誰かの所有物を盗むということは、どういうことなのか、と。ブルードンの定義を使うならば、窃盗とは盗みの盗みか、と。
見事な反論です。
言葉が抽象的であり、現実と切り結んでいないという批判なのです。返す刀でバッサバッサと切っていきます。痛快というよりは、切ないほどです。
そしてマルクスは言います。
「我々には”非所有”は抽象論ではなく、絶望的なほどの現実なのです」と。
お前たちは空理空論を弄んでいるだけだ、とマルクスは痛烈に批判します。
と、ここでデッドプール2の話に変わりますw
デッドプール2は本国での日本でも好調のようですが、実際に繰り返し観たくなります。
広大な宇宙を舞台にしたアベンジャーズインフィニティ・ウォーも相当に面白かったのですが、僕にはデッドプール2のほうが広がりを感じました。いや、アベンジャーズインフィニティ・ウォーも必見だとは思いますが(でも先に過去作品はなるべく観ておきたいかもです)。
デッドプール2の制作・脚本・主演をつとめるライアン・レイノルズ自身がインタビューに答えてこう語っています。
一作目をつくることによって得た教訓で、第2作の役に立ったものがありましたか?という質問に対して、
結局、本物でいることだね。
と答えています。
本当にそのとおりです。
あれほど荒唐無稽なようでいて、リアルなのです。本物でいるのです。
マーベルの重役がインタビューでこんな風に答えています。
マーベルがなぜこれほど長い間、支持されるのかということに答えて、
これはヒーローの物語ではない。普通の人が異常な事態に巻き込まれる物語なんだ
と。
*マーベル展。今日で終了でした(T_T)
デッドプールも同様です。
普通の特殊部隊の戦士が運命の人に出会ったばかりなのに、末期癌に陥るという悲劇から物語がスタートします。
おふざけムービーのようで、通奏低音にはガチなテーマが流れています。そこにリアルで等身大の人間の苦悩と葛藤があるからこそ、観客が共感するのです。
それはアイアンマンやスパイダーマンも同じです。
マーベルの重役が言うように、ヒーローの物語ではなく、普通の人が異常な事態に巻き込まれ、それをなんとか乗り越えていく物語だからこそ、自分たちの物語として共感できるのです。
(逆に言えば、我々も同じなのです。普通の人だと思っているかもしれませんが、異常な事態に巻き込まれれば、そして生き残れればヒーローになるのです。かつてはその「異常な事態」のことを冒険と呼んでいましたねー)。
哲学を学ぶことは「失業に向かってまっしぐらに進み、地球上でもっとも高い教養でもっとも低い収入を得る方法」と認識されているとは言え、ペイパルマフィアの親玉であるピーター・ティールが哲学専攻であることはあまり知られていません(マルクスも哲学博士です)。
そしてその哲学をフルに活かしてビジネスを行っています。
あまり結論を急ぐ気は無いのですが、AIによるシンギュラリティーが実現した世界では、哲学こそが必要な気がします(ティールもフリードマンと同じく、人とAIの共同作業が可能であり、それが未来だと考えています)。
という感じのことを、ひとつひとつ丁寧に記事にするつもりが、交通渋滞のまま腐っていきそうなので、とりあえず放出します!!
何かの参考になれば幸いです!!
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ティールは自分に最も強く影響を与えたのはスタンフォード大学で学んだフランス人哲学者のルネ・ジラールだと言います。
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「ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望」から引用しながら、そのルネ・ジラールの思想を紹介します!
ジラール思想の中心は模倣(ミメーシス)理論と競争だそうです。
人の行動は模倣に基づいている。
誰かが何かを欲しがると、それを模倣して、他人が欲しがるものを欲しがるようになる。
他人が欲しがるものを欲しがる傾向が連鎖反応を起こせば、そこに競争が必然的に生まれます。
そしてその競争がまた模倣を生みます。
ティールはこう言います。
「模倣こそ、僕らが同じ学校、同じ仕事、同じ市場をめぐって争う理由なんです。経済学者たちは競争は利益を置き去りにすると言いますが、これは非常に重要な指摘です。ジラールはさらに、競争者は自分の本来の目標を犠牲にして、ライバルを打ち負かすことだけに夢中になってしまう傾向があると言っています。競争が激しいのは、相手の価値が高いからではありません。人間は何の意味もないものをめぐって必死に戦い、時間との戦いはさらに熾烈になるんです。」
「人は完全に模倣から逃れることはできません。でも細やかな神経があれば、それだけでその他大勢の人間を大きくリードできます」
(ちなみにこの発言だけを取り上げて、「大きくリード」するとは競争に勝つことだなとどミスリードしてはいけません。彼が観ているのは文字通りの独占です。競争相手がいない世界です)。
そして、フリードマンの新刊です!
ティール本とセットで読むと、なかなかに味わい深いです。
どちらも多様性を重視しながら、その実現がいかに難しいか分かります。
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