あまり無いことなのですが、コメントでファインマンの言葉の出典を聞かれました。
（出典にあたる書籍の邦訳をアマゾンリンクでファインマンの著作は紹介はしていたのですが、たしかに出典として明示するのは失念しておりました）
速読に関する古い記事です。
記事の中ほどに以下のような一節にファインマンについての言及があります。
（引用開始）
アインシュタインがある記者からつまらない質問を受けたことがあります。科学の定数だか何かについて聞かれました。それに対してアインシュタインが「私の脳を、調べれば即座にわかることについて割くつもりはない」という趣旨のことを答えています。
また物理学者のファインマンだったと思いますが、同じことを言っていたように記憶します。猫の解剖学の詳細な名称を大学院生が全て暗記していることに、ファインマンは驚きました。ちゃんと記憶していることに驚いたのではありません。調べればわかることを暗記している無駄な作業に驚いたのです。
そしていわく「なるほど、そんなことを覚えているから、私が君達に即座に追いつけたのだ」、と。
クイズ王や雑学王を批判する気はありませんが、科挙を通過した官吏たちと同じで、自分を人間コンピューターにするなら、iPhoneを持ってGoogle検索したほうがはるかに良いと思います。
知識を習得するために、読書をするのはナンセンスです。むしろ著者の世界観にアクセスするつもりで読むことです。必要な知識は一緒に勝手にインストールされます。
（引用終了）
実際に文献にあたると以下のとおりです。
生物学に興味を持ち、細胞生理学の講座に誘われることになったファインマンさんの話です。
（引用開始）
このテーマ（引用者注：ネコの神経の電圧測定の実験を通して、神経インパルスの論文）で僕が話をする番がやってきた。僕はまず黒板にネコの輪郭を描き、諸筋肉の名をあげることからはじめた。全部まで言わないうちに、クラスの連中が、「そんなもの皆わかっているよ」と言いだした。
「ええ？ ほんとうか？」と僕は言い返した。「道理で四年間も生物学をやってきた君たちに僕がさっさと追いつけるはずだよ。」それこそネコの地図を一五分もみればわかることを、いちいち暗記なんかしているから時間がいくらあっても足りないのだ。
（R.P.ファインマン p.111『ご冗談でしょう！ ファインマンさん』岩波現代文庫）
（引用終了）
ネコの地図とはネコの動物解剖図解のことです。
今日のニュートン力学や次回の相対論もファインマン先生の物理学講義を思いっきり使っています。
非常に鮮やかで本質的な説明です。
たしかに「地図を一五分もみればわかることを、いちいち暗記なんかしているから時間がいくらあっても足りない」のです。
我々も地図を参照しながら、駆け足で知の世界を踏破しています。
前回はリーマン予想を「読む」ことができるようになり、オイラー積の導出をオイラーの方法論で行いました（様々な証明がありますがオイラーの証明方法を講座では採用したということです）。
今回はニュートン力学を流率法（微分・積分）から見ながら、相対論まで展望したいと思います。
もちろん数式を用い、原典を参照して（原典とは言え英訳版で、ラテン語は来月に）。
気功と同じでぼんやりした理解とぼんやりとした作業ではぼんやりとした結果しか出ません（それが必要なときもあります）。
寺子屋シリーズは大人になるための最低限の「読み書きソロバン」を鍛える場ですので、明晰判明であることを重視します。
本日もお楽しみに！
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ネコの地図に関してはこちらをご覧ください。
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道理で四年間も生物学をやってきた君たちに僕がさっさと追いつけるはずだよ
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